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💠幸せ時間💠

想像作話 自由の羽(10)

★画像は中央口論社 愛蔵版 キャンディキャンディ いがらしゆみこ先生 原作水木杏子先生より



駆け落ち当日。


昨夜、ローズマリーはエルロイに手紙を書いた。
ヴィンセントと結婚するためアードレーの名を捨てること、自分を探さないで欲しいこと、今までの感謝の気持ちと、黙って出て行くことの詫びの気持ちと、アルバートをくれぐれも頼む、という内容だった。
その手紙を自分の机に置いた。
その傍らには水色の包装紙で包んだ物を置いた。それはエルロイの来月の誕生日プレゼントに渡そうと用意していた黒水仙の香水だった。

早朝、アルバートの手をつなぎ、静まり返る屋敷内を音を立てぬよう外に向かって歩いた。長い廊下の灯りは間引きしながら点いているが明るい。
アルバートがスーツケースを持ちたがったので、持ってもらった。アルバートが持てるほどの重さの物しか入ってなかった。

スーツケースは1つ。中身はアンに買わせた洋服数枚、シンプルな帽子が1個、父の形見の万年筆、母から昔誕生日にもらった ピンク色の薔薇を刺繍してくれたハンカチ、象嵌細工の宝石箱、アルバートの描いた絵とアルバートの写真だった。

ローズマリーは白い二重のフレア袖のAラインのシフォンワンピースを着て、ヴィンセントからもらった小ぶりなパールが並んだパールチョーカーをつけている。
そしてサンディブロンドのゆるくウェーブのかかった美しい長い髪を下ろし、花の飾りのついた淡いピンク色の思い出の帽子をかぶっている。
アルバートは歩きながらローズマリーとふと目が合った。ローズマリーは優しい微笑みを向けた。
花の女神のようだとアルバートは思った。

ジョルジュは屋敷の入り口から少し離れた所で車を待機していた。その場所に二人は着いた。
ジョルジュはスーツケースを受け取り車のトランクに詰めこむと、後部座席のドアを開けた。乗車を促す言葉をかけようとしたが…止めた。離れ離れになる姉弟の気持ちを考え、別れを惜しむ二人の様子を見守った。この時ジョルジュは思った。
~ ローズマリー様を、ヴィンセント様がお待ちになられている避難先の宿に無事にお連れしなくては。 駆け落ちの手引きをしたとエルロイ様やご親戚の方々から厳しく叱責されるだろう。暇を出されるかもしれない。だが私は喜んでその責めを受ける。ローズマリー様のためなら・・・。 ”

屋敷の窓の灯りがちらほらつき、使用人達が起きて動き出したようだ。こちらに気付いたかはわからない。

ローズマリーはアルバートの頭をなでたり、抱きしめたり離れられずにいた。
アルバートはローズマリーのしたいようにさせていた。すると、使用人の男二人が外に出て来た。訝しげな様子でこちらを見ていることにアルバートは気が付いた。

「姉さん後ろ向いて」とアルバートが言った。ローズマリーを後ろに向かせた。そして背中をポンポンと叩いた。
「!!今何したの?」
「姉さんに羽をつけたんだよ。ヴィニーの所に飛べるように。」
「まあ!!」
「昔、姉さんが私が男の子だったら代わってあげたい、そうしたら僕に自由に飛べる羽をあげたいって言ってたことがあったでしょう? 僕が姉さんに羽をつけてあげるよ!僕は大丈夫。 自由に飛んでね 姉さん・・・。」
「・・・バート。」
「あっ そうだ。ヴィニーに、” 次会った時は兄さんって呼ぶからよろしく! ” と伝えておいて。」
「・・・わかったわ。ありがとう。」
「またね。姉さん。」
「またね。ちっちゃなバート。」
またいつの日か会えると二人は信じた。

アルバートは澄みきった青空のような瞳をきらめかせ、あふれんばかりの笑顔で見送った。
自由の羽をつけた花の女神は愛する人のもとに飛び立った。

~ 僕もいつか羽をつけて飛べたら・・~

蒼い空が曙色の陽光に染まっていく様をアルバートは見つめた。心の中の光が輝き出していた。





お読み下さりありがとうございました🎵
m(__)m
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