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💠幸せ時間💠

想像作話 自由の羽(9)

★画像は、愛蔵版「キャンディキャンディ」いがらしゆみこ先生 原作水木杏子先生より




駆け落ち前日。


午後、ローズマリーはアルバートとメイド達を10人ほど集めて小さな演奏会を開いた。
ノースリーブの、一番好きな色のローズピンクのドレスを着た。腰回りから足元にかけてスパンコールが散りばめられている。演奏の邪魔なのでネックレスはつけていない。髪はゆるくまとめアップしている。
小さな演奏会は時々行われていた。楽器はピアノかヴァイオリン。皆はローズマリーの奏でる音色や姿に心を癒され、楽しみにしていた。
これが最後だろうとローズマリーは思った。

フランツ・リスト作曲の”愛の夢第三番”を選曲した。自分の心情と合っているから。
この曲にはドイツの詩人フェルディナント・フライリヒラーが書いた詩がついている。
”” おお、愛しうる限り愛せ””

今回はこの曲をヴァイオリンで演奏した。
演奏が終わると、アルバートやメイド達が拍手した。ローズマリーは一礼し周りを見た。
~ バートが笑っているわ。ふふふ 皆も笑顔で。 アンったらまたうっとりした顔して!・・・あっ!!・・~
思いがけない人を見つけた。
アルバート達の後ろで、いつの間に来たのかエルロイが拍手していた。
その後、皆から何度もアンコールをせがまれ三曲弾いた。
今まで自分を愛してくれた皆に感謝の気持ちを込めながら。


夜、「眠くて早く寝るわ・・」と言って、メイド達を早々に下げてから、ローズマリーはスーツケースを出した。
入れる物を考えた時、象嵌細工の小ぶりの宝石とマザーオブパールで装飾された大きな宝石箱を手に取った。
この宝石箱はアードレー家当主の妻に代々受け継がれている物だったが、母が亡くなった後に、父から使うように言われ渡された。ローズマリーが譲り受けたが、将来アルバートの結婚相手に渡そう、それまでは使わせてもらおうと心に決めていた。

母を思い出した。おしとやかな優しい芯の強い人でコスモスの花のようだった。青い瞳が素敵だった。刺繍をよくしていた。赤ちゃんの誕生をとても楽しみにしていた。一緒にお世話しようと言っていたのに、、、それなのに、、、。悲しみが押し寄せ涙があふれる。
「ダメね。しっかりしないと。前を向かないとね。ヴィニーと結婚するのよ私。」
ローズマリーは独りごちた。涙を指で拭いた。

思いをめぐらせていた時、ノックの音がした。アルバートが入って来た。手には丸めた紙を持っている。真ん中辺りで赤いリボンが結ばれている。

「どうしたの?ロージー?」
「なんでもないわよ。あら。何かしら?」
「ロージーに。どうぞ。」
それを受け取り、リボンをほどき紙を広げた。森の中で動物達と笑っているローズマリーとアルバートが描かれた絵だった。昨日の光景だ。色鉛筆で背景や細部までよく再現し描かれていた。
「わあ!すごい。よく描けているわ。素敵なプレゼント ありがとう。」
ローズマリーは声を弾ませ喜んだ。
アルバートは優しく微笑んだ。

この絵は後にヴィンセントと暮らす家の居間に飾られることになる。




続く

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