ドールとしての仕事、移りゆく時代、ギルベルトへの思いとその行き着く先——まさにフィナーレにふさわしい作品で。映像もストーリーも構成も文句なし。心から見てよかったと思えました。テレビシリーズを前提としてつくられているので、ひととおり視聴してからのほうが楽しめます。
デイジーの曾祖母は娘への手紙だったけど(テレビシリーズ第10話)、ユリスは両親への手紙。幼い娘を遺していくというのもつらいけど、まだ子供なのに両親より先に亡くなるというのもやるせない。代筆を依頼するあたりはグッと胸が詰まるような感じがしたし、危篤のシーンあたりは涙が止まらなかった。電話を敵視していたはずのアイリスが、ドールとしての矜持より、ユリスのためにできることを優先させたのがよかった。
ギルベルトはどこかで生きてるんじゃないかとずっと疑っていたけど、テレビシリーズでは明らかにならないまま終わってしまってモヤモヤしてました。この劇場版でしっかりと決着をつけてくれたことが何よりもうれしい。
記憶喪失にでもなっているのかと思いきや普通に島で暮らしていて。ヴァイオレットのために会わないほうがいいという気持ちはわからないでもないし、連絡もせずにいたことは否定しない。ただ、ばれてしまったのなら会ってけじめをつけるべきだと。ヴァイオレットのためとか言いつつ、逃げているだけにしか見えなくてもどかしかった。
結局、会ってしまうと思いがあふれて止められなくなりそうだったから、そしてヴァイオレットを武器として利用してきた自分にそんな資格はないと思っていたから、頑なに会わなかったということかな。その頑なな心を融かしたのが手紙だというのがまたよかった。
ヴァイオレットが船から飛び降りてハッピーエンドっぽくなったけど、3か月予約で埋まってるはずなのにどうするんだろう…と心配してたら、ちゃんと受けた分の仕事はこなしたということで一安心。