料理人の哲平さんがピュイミロルという小さな村で活躍したお話を前回お伝えしましたが、私達日本人にとっては、その村って一体どこにあるのという感じですよね。それで、思い出したのが、以前お会いしたワイン商のフランソワ・デュマさんにその村のお話をした時のことでした。フランソワさんでもその村は御存じないのではないかと思って尋ねてみましたら、「あぁ、あの馬と牛しかいない村ね」と冗談っぽく答えて「ミッシェル・トラマさんのレストランは素晴らしいけど、とにかく閑疎で静かな村だよ。最寄り駅に着いてもバスもタクシーもないんじゃないかな~」とフランソワさんはにこにこ笑顔で語っておられました。
実は「牛馬の話」は私は忘れていたのですが、哲平さんの写真を見て、その時の楽しそうなフランソワさんの笑顔を思い出して、「馬の鼻スタンプ」とちょっとしょんぼりの牛の写真を掲載しました。
シェフのトラマさんはオリエンタルテイストの独創的な料理を作られるので、日本の食材にも興味津々で、哲平さんが日本から持っていったポン酢やゆずをさっそく料理に取り入れたそうです。ゆずの風味がわかるなんてさすがですね。でもフランス語では、レモン汁って書いてありました。それでも日本人の哲平さんの活躍がフランスの三ツ星レストランに刻まれたのは嬉しいです。
トラマさんのように貴族のお城を改築して、ホテル&レストランを運営しているフランス人は各地におられます。フランスのお城に泊って、お姫様気分で美味しいお食事を頂くのって極楽ですね。それも陰で懸命に働いて下さる人達がいるからこその幸せですから、その至福の時は貴重です。
厨房で忙しく働いていた哲平さんにも秘かな楽しみがあったようで、週末にはピュイミロル村から遠くないスペインのビーチリゾートに息抜きに遊びに行っていたそうです。車でスペインに入っていたそうですが、検問も何もなくて、ただ「スペイン」という標識があって、そっちに行けばスペインという実にスムースな旅だったそうです。「ほんとに気楽ですよ~。こっち岡山、こっち姫路みたいな感じで、こっちスペインってなってあるんですよ~」「ほんで、ひょいっと簡単にスペインに行けるんですよ~」という哲平さんの説明に、なるほど~と欧州連合の魅力を感じて嬉しい気持ちになりました。欧州各国の経済的差異はまだまだあるにせよ、欧州統一がもたらした良い面を実感出来るのは素晴らしいことです。
私達もいつの日か、アジアの近隣諸国にそんな風に自由に行き来できる時がやって来ますように。