□本日落語三席。
◆瀧川鯉昇「千早振る」(WOWOWライブ『日本最大の落語フェス『博多天神落語まつり』2022其の参)。
JR九州ホール、令和4(2022)年11月4日(第16回「博多天神落語まつり」※芸協まつり)。
◆古今亭右朝「ガーコン」(日本文化チャンネル桜『落語動画』)。
浅草木馬亭、平成6(1994)年10月8日(「川柳川柳祭り」※川柳ファンクラブ主催)。
あの古今亭右朝が「ガーコン」を？！というのが、ネットでこれを見つけたときの第一印象。右朝は、古今亭志ん朝の弟子で、古典落語を本寸法で演じる正統派の落語家だ。そして、「ガーコン」は、落語ファンなら知らぬ人とてない、川柳川柳の創作落語。もう川柳の後半生は「ガーコン」しか演らないと言っても過言ではないほどだった。はたして、川柳は「ガーコン」を何百回高座に掛けたものか。
ちなみに、今回聞いた右朝を除いて、「ガーコン」を川柳以外に演じた落語家が一人だけいる。それは五代目柳家小せん。ただし、これは「ガーコン」を上下で分けて、当の川柳とリレー落語で演じたものである。
2012年の11月に、BS11『柳家喬太郎のようこそ芸賓館』でそれは放送された。また、同じ番組で、2017年にもこのリレー「ガーコン」は演じられ放送された。
さて、いったい右朝が「ガーコン」を演じたという公演情報がわからないだろうかと、ネットで検索していると、意外とあっさりその情報は知れた。それは、Wikipediaの川柳川柳の項目に次のように記されていたからである。
「1994年10月8日、川柳に圓生ゆずりの古典落語『お祭り佐七』を演じさせるという目的のもと、古今亭右朝と川柳ファンクラブ（池袋秘密倶楽部）主催の落語会が木馬亭で開催された。当日の演目は、開口一番に登場した古今亭菊若が『首屋』、五街道雲助が『ジャズ息子』[注 4]、右朝が『ガーコン』。得意演目を先に演じられてしまって最後に登場した川柳は困り果て、結局小噺しかできなかった[54]」。
この落語会で、川柳が「お祭り佐七」を演る予定だということ、雲助が「ジャズ息子」を演ることなどは、右朝がこの音源のなかで語っていたマクラと符合する。また、菊若の話は出てきていないが、これは現古今亭駿菊。当時二ツ目だったようだ。
この音源では、右朝による、とても貴重な思い出話がマクラで語られている。右朝が前座見習いの二年間を終えて、初めて前座として寄席の楽屋入りをした日の逸話である。
右朝は、忘れもしない昭和50(1975)年2月21日のことと言ったが、これは昭和52(1977)の言い間違いだと思われる。右朝の入門が昭和50(1975)なので、それを二年後の昭和52(1977)と混同したようだ。それが証拠に、右朝自身、この話のなかで「今から十七年前になります」と言っている。その「今」は1994年になる。
初めて右朝が楽屋入りした初の日は池袋演芸場だと言った。当時右朝は古今亭志ん八。その日のトリが林家こん平、中トリが立川談志。また、立て前座が桂才賀(当時桂文太※注-上方の桂文太とは別人)。二番手が林家鉄平だったとのこと。また、そのころ前座の日給は100円だったと。
で、その日、トリで出演するはずのこん平が二日酔いで来られず、その代演に来たのが川柳川柳だったとのこと。昔は(というのは1977年当時)、落語家が寄席に出られなくなる場合、演者自身が代演をさがして寄席に派遣したらしい。今では(というのは右朝がこの高座にあがっていた時点)、寄席を休む場合、協会を通して代演をさがすことになっている由。
こん平の代演で、池袋演芸場に来た川柳川柳が、その日掛けたのが「ガーコン」だったと右朝は語った。しかし、二日酔いのこん平で代演に来た川柳も、もう泥酔状態で劇場に来たらしい。だから、右朝も、そのときの川柳を再現するべく、この日はもう楽屋で酒を飲んでから舞台にあがってきたのだと。さて、これは本当か。
自分自身の体験としても、川柳の「ガーコン」は生で聞けたという幸運に遭遇している。昔、仕事でしばしば東京に行った際、かならずどこかの寄席に顔を出した。で、2012年1月に、仕事のついでで浅草演芸ホールへ行ったとき、下席夜の部で川柳が登場した。嗚呼、生「ガーコン」が聞けるとよろこんだ記憶がある(他のネタはけっして演らないだろうと)。
また、この日、客席に酔っぱらいがいて、舞台に向ってやたらとつっこむので、怒った川柳が「出ていけ！……おい、前座、その客を追い出せ」と言ったというハプニングに遭遇したのも、オマケの良い思い出となった。
◆『笑点』大喜利：春風亭昇太(司会)/三遊亭小遊三・柳亭小痴楽(ゲスト)・林家たい平・林家木久扇・三遊亭好楽・桂宮治(日本テレビ『笑点』第2843回。
日本テレビ麹町スタジオ、令和5(2023)年1月15日OA。
◆瀧川鯉昇「千早振る」(WOWOWライブ『日本最大の落語フェス『博多天神落語まつり』2022其の参)。
JR九州ホール、令和4(2022)年11月4日(第16回「博多天神落語まつり」※芸協まつり)。
◆古今亭右朝「ガーコン」(日本文化チャンネル桜『落語動画』)。
浅草木馬亭、平成6(1994)年10月8日(「川柳川柳祭り」※川柳ファンクラブ主催)。
あの古今亭右朝が「ガーコン」を？！というのが、ネットでこれを見つけたときの第一印象。右朝は、古今亭志ん朝の弟子で、古典落語を本寸法で演じる正統派の落語家だ。そして、「ガーコン」は、落語ファンなら知らぬ人とてない、川柳川柳の創作落語。もう川柳の後半生は「ガーコン」しか演らないと言っても過言ではないほどだった。はたして、川柳は「ガーコン」を何百回高座に掛けたものか。
ちなみに、今回聞いた右朝を除いて、「ガーコン」を川柳以外に演じた落語家が一人だけいる。それは五代目柳家小せん。ただし、これは「ガーコン」を上下で分けて、当の川柳とリレー落語で演じたものである。
2012年の11月に、BS11『柳家喬太郎のようこそ芸賓館』でそれは放送された。また、同じ番組で、2017年にもこのリレー「ガーコン」は演じられ放送された。
さて、いったい右朝が「ガーコン」を演じたという公演情報がわからないだろうかと、ネットで検索していると、意外とあっさりその情報は知れた。それは、Wikipediaの川柳川柳の項目に次のように記されていたからである。
「1994年10月8日、川柳に圓生ゆずりの古典落語『お祭り佐七』を演じさせるという目的のもと、古今亭右朝と川柳ファンクラブ（池袋秘密倶楽部）主催の落語会が木馬亭で開催された。当日の演目は、開口一番に登場した古今亭菊若が『首屋』、五街道雲助が『ジャズ息子』[注 4]、右朝が『ガーコン』。得意演目を先に演じられてしまって最後に登場した川柳は困り果て、結局小噺しかできなかった[54]」。
この落語会で、川柳が「お祭り佐七」を演る予定だということ、雲助が「ジャズ息子」を演ることなどは、右朝がこの音源のなかで語っていたマクラと符合する。また、菊若の話は出てきていないが、これは現古今亭駿菊。当時二ツ目だったようだ。
この音源では、右朝による、とても貴重な思い出話がマクラで語られている。右朝が前座見習いの二年間を終えて、初めて前座として寄席の楽屋入りをした日の逸話である。
右朝は、忘れもしない昭和50(1975)年2月21日のことと言ったが、これは昭和52(1977)の言い間違いだと思われる。右朝の入門が昭和50(1975)なので、それを二年後の昭和52(1977)と混同したようだ。それが証拠に、右朝自身、この話のなかで「今から十七年前になります」と言っている。その「今」は1994年になる。
初めて右朝が楽屋入りした初の日は池袋演芸場だと言った。当時右朝は古今亭志ん八。その日のトリが林家こん平、中トリが立川談志。また、立て前座が桂才賀(当時桂文太※注-上方の桂文太とは別人)。二番手が林家鉄平だったとのこと。また、そのころ前座の日給は100円だったと。
で、その日、トリで出演するはずのこん平が二日酔いで来られず、その代演に来たのが川柳川柳だったとのこと。昔は(というのは1977年当時)、落語家が寄席に出られなくなる場合、演者自身が代演をさがして寄席に派遣したらしい。今では(というのは右朝がこの高座にあがっていた時点)、寄席を休む場合、協会を通して代演をさがすことになっている由。
こん平の代演で、池袋演芸場に来た川柳川柳が、その日掛けたのが「ガーコン」だったと右朝は語った。しかし、二日酔いのこん平で代演に来た川柳も、もう泥酔状態で劇場に来たらしい。だから、右朝も、そのときの川柳を再現するべく、この日はもう楽屋で酒を飲んでから舞台にあがってきたのだと。さて、これは本当か。
自分自身の体験としても、川柳の「ガーコン」は生で聞けたという幸運に遭遇している。昔、仕事でしばしば東京に行った際、かならずどこかの寄席に顔を出した。で、2012年1月に、仕事のついでで浅草演芸ホールへ行ったとき、下席夜の部で川柳が登場した。嗚呼、生「ガーコン」が聞けるとよろこんだ記憶がある(他のネタはけっして演らないだろうと)。
また、この日、客席に酔っぱらいがいて、舞台に向ってやたらとつっこむので、怒った川柳が「出ていけ！……おい、前座、その客を追い出せ」と言ったというハプニングに遭遇したのも、オマケの良い思い出となった。
◆『笑点』大喜利：春風亭昇太(司会)/三遊亭小遊三・柳亭小痴楽(ゲスト)・林家たい平・林家木久扇・三遊亭好楽・桂宮治(日本テレビ『笑点』第2843回。
日本テレビ麹町スタジオ、令和5(2023)年1月15日OA。
