Phantom Lady 「幻の女」
今日はちょっと懐かしい写真を見つけました。
かなり昔にLondonで撮影した絵です。
写真としてはなんていうこともない、
ありふれた絵なんですが、僕には意味があります。
ちょっぴり昔の事を思い出すのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕が20代の中頃、
行きつけのBarが東京・原宿にありました。
もっとも高級な店で、
若造がおいそれと入れるようなところではなく、
せいぜい月に一、二度顔を出していただけ・・・。
それでもその店に行くときには、きどって精一杯カッコつけていた。
いつだったか・・・
たしか今日のような雨降りで寒かった日、その店に入った。
いつものように混み合っていた。
僕が常に座るマスターの前の席は、
あいにく見知らぬ顔の男が座っていた。
通された席はL字型カウンターの一番奥から一つ手前で、
静かな席だがマスターと話は出来ない。
決まって最初に頼む酒は「ストラスコノン」。
4種の12年物シングルモルトを、
バッティングしたスコッチだが、
こいつをストレートで舐めながら、本を読むことにした。
当時は和洋にかかわらず、
ミステリーと名のつく本は殆ど読破して、
評論家になれるほど詳しかったと自惚れていた。
その日はディック・フランシスのプルーフ「証拠」を読み、
途中トイレに立って戻って来た時のことである。
真っ赤なドレスに身を包んだ、
素晴らしい美女が、私の隣の席に座っていた。
思わず眼を疑った。
でも少し冷静に考えると、
その席しか空いていなかった・・・そういうことか。
普通なら失礼しますと言って隣に座るだけだが、
これほどの美女の隣となると、どうも落ち着かない。
まして女性の横に座るだけで鼻血の出る年頃である。
多分誰かと待ち合わせだろう・・・そうも考え、
いつもならゆっくり飲まなければいけない、
バーボンのオールドグランダット114(57度もある)。
こいつを一気飲みして、「お会計お願いします!」
そう言うとマスターが、「えっもう帰るんですか?」
「飲ませたい酒があるから・・・もう少しいなさい・・・」そう言われた。
・・・う~ん言葉に詰まっていると、
「もしどなたかとお待ち合わせなら、私はこれで・・・。」
彼女が喋った!それがまた何とも美しい声だ!
「いえいえ彼には連れなんていませんから・・・。」
なんだよマスター、たしかにそうだけど、
もう少し言い方ってもんがあるだろうに・・・。
「さあ座ってもう一杯どうぞ。」
いつもならそう言われて、漫才の掛け合いのように、
「お隣の美人を肴に美味い酒をいただきますか!・・・」
とかなんとか軽口たたくところだが・・・。
この時初めて分かった。
中途半端な美人風味の女にはそう言えるが、
本物の極上宝石のような美女相手では、
そういう事は言えない。
少し大人になった自分がいた。
結局その後1時間ほど彼女と同じ空気を吸った。
何か話しかけられたはずなんだが殆ど覚えていない。
記憶力が良いと自負していたが、その日で封印した。
覚えているのは品の良い香水のほのかな香り。
けして強くない。
また普段はロンドンに住んでいて、
後一ヶ月だけ東京にいることと、
その間にもう一度ここに来たいと言った事。
それだけ・・・。
もちろん次の日から毎日僕はその店に通った。
一ヶ月毎日。
でも彼女は来なかった。
珠玉のミステリーで、ウィリアム・アイリッシュの
「Phantom Lady 幻の女」。
主人公はBarで赤い帽子の女と出会う。
その後訳あって捜すが会えない。
まさに彼女は僕にとって幻の女。
甘酸っぱい思い出深い経験と、
友人3人から多大な飲み代を借りるという、
厳しい現実だけが残った。
その後大人になってLondonに行くたびに、
必ずBarに立ち寄る。
そして・・・赤いドレスの女性を見つけると、
思わず胸がキュントなる。
恥ずかしい話だがホントだ・・・。
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今日はちょっと懐かしい写真を見つけました。
かなり昔にLondonで撮影した絵です。
写真としてはなんていうこともない、
ありふれた絵なんですが、僕には意味があります。
ちょっぴり昔の事を思い出すのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕が20代の中頃、
行きつけのBarが東京・原宿にありました。
もっとも高級な店で、
若造がおいそれと入れるようなところではなく、
せいぜい月に一、二度顔を出していただけ・・・。
それでもその店に行くときには、きどって精一杯カッコつけていた。
いつだったか・・・
たしか今日のような雨降りで寒かった日、その店に入った。
いつものように混み合っていた。
僕が常に座るマスターの前の席は、
あいにく見知らぬ顔の男が座っていた。
通された席はL字型カウンターの一番奥から一つ手前で、
静かな席だがマスターと話は出来ない。
決まって最初に頼む酒は「ストラスコノン」。
4種の12年物シングルモルトを、
バッティングしたスコッチだが、
こいつをストレートで舐めながら、本を読むことにした。
当時は和洋にかかわらず、
ミステリーと名のつく本は殆ど読破して、
評論家になれるほど詳しかったと自惚れていた。
その日はディック・フランシスのプルーフ「証拠」を読み、
途中トイレに立って戻って来た時のことである。
真っ赤なドレスに身を包んだ、
素晴らしい美女が、私の隣の席に座っていた。
思わず眼を疑った。
でも少し冷静に考えると、
その席しか空いていなかった・・・そういうことか。
普通なら失礼しますと言って隣に座るだけだが、
これほどの美女の隣となると、どうも落ち着かない。
まして女性の横に座るだけで鼻血の出る年頃である。
多分誰かと待ち合わせだろう・・・そうも考え、
いつもならゆっくり飲まなければいけない、
バーボンのオールドグランダット114(57度もある)。
こいつを一気飲みして、「お会計お願いします!」
そう言うとマスターが、「えっもう帰るんですか?」
「飲ませたい酒があるから・・・もう少しいなさい・・・」そう言われた。
・・・う~ん言葉に詰まっていると、
「もしどなたかとお待ち合わせなら、私はこれで・・・。」
彼女が喋った!それがまた何とも美しい声だ!
「いえいえ彼には連れなんていませんから・・・。」
なんだよマスター、たしかにそうだけど、
もう少し言い方ってもんがあるだろうに・・・。
「さあ座ってもう一杯どうぞ。」
いつもならそう言われて、漫才の掛け合いのように、
「お隣の美人を肴に美味い酒をいただきますか!・・・」
とかなんとか軽口たたくところだが・・・。
この時初めて分かった。
中途半端な美人風味の女にはそう言えるが、
本物の極上宝石のような美女相手では、
そういう事は言えない。
少し大人になった自分がいた。
結局その後1時間ほど彼女と同じ空気を吸った。
何か話しかけられたはずなんだが殆ど覚えていない。
記憶力が良いと自負していたが、その日で封印した。
覚えているのは品の良い香水のほのかな香り。
けして強くない。
また普段はロンドンに住んでいて、
後一ヶ月だけ東京にいることと、
その間にもう一度ここに来たいと言った事。
それだけ・・・。
もちろん次の日から毎日僕はその店に通った。
一ヶ月毎日。
でも彼女は来なかった。
珠玉のミステリーで、ウィリアム・アイリッシュの
「Phantom Lady 幻の女」。
主人公はBarで赤い帽子の女と出会う。
その後訳あって捜すが会えない。
まさに彼女は僕にとって幻の女。
甘酸っぱい思い出深い経験と、
友人3人から多大な飲み代を借りるという、
厳しい現実だけが残った。
その後大人になってLondonに行くたびに、
必ずBarに立ち寄る。
そして・・・赤いドレスの女性を見つけると、
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