夏の日差しの下、登別駅を発車するD51貨物列車である。当日は朝からこの駅で撮影していた。客車の発車シーンを撮影した後、この貨物列車を撮ったと記憶する。38年も前のことなので当日の記憶は曖昧である。
全国でも唯一の蒸気機関車運行路線として、1975年夏の北海道は当時のSLファンとして忘れられないエリアとなった。かく言う当方も、残された路線での撮影を求めて、初の北海道行きを決行した次第である。高校時代、筑豊本線・冷水峠での出会いから始まった蒸気機関車の撮影も、いよいよ佳境に差し掛かっていた。当時として、後が無い差し迫った気持ちが九州の博多から長駆、北海道へと駆り立てたかも知れない。
今思い返せば、バイトで稼いだ金を旅費とフィルム代につぎ込み、新幹線〜北陸本線〜青函連絡船を乗り継いで函館・室蘭本線までやって来たのだ。まる一昼夜を費やして訪れたこの地で、かなりハード・スケジュールを決行した様子だ。全ては20歳代のスタミナが後押しした結果であろう。
思い返すも、よくぞ決行したものだと当時の自分に感謝の想いだ。実際に行動し記録に残し、今になり当時を振り返ることが出来ることがその理由でもある。行動しなければ何も残らないし、下手ながら撮った写真も無かった訳で、記憶をたどる術も見いだせなかったであろう。当時の自分が為し得たことを今更ながら感心する。
若い青年期に、部屋に閉じこもること無く外に出て、後々残る出来事を思いながらと当時の自分が起こしたアクションではないにしても、それは結果として大変貴重なことだったのだと今だからこそ、その価値を見出すことが出来る。
38年前の自分を褒めてあげたい気持ちになった。
Minolta-STR101+135mm/F3.5 Neopan SS 1975年夏・北海道 室蘭本線登別駅