増田カイロプラクティック【読書三昧】

増田カイロプラクティックセンターのスタッフ全員による読書三昧。
ダントツで院長増田裕DCの読書量が多いです…。

剣客商売1-10

2008-03-04 15:56:03 | 増田裕 DC
剣客商売 (新潮文庫―剣客商売)
池波 正太郎
新潮社

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池波正太郎の「剣客商売」シリーズ(文庫本で16冊と番外編4冊、剣客商売読本1冊、合計21冊)を読んでいる。今のところ、10冊目の「春の嵐」まで読んだ。

徳川時代後期の十代将軍・徳川家治とその寵愛を受けた老中、田沼意次の執政している時代を背景にしている。<付録>の筒井ガンコ堂編「〔剣客商売〕年表」によると、安永6年(1777年)正月から天明5年(1785年)までのざっと9年間の物語である。主人公は老剣客の秋山小兵衛(アキヤマ・コヘイ)と40歳も年下の妻、「おはる」と、先妻との間にできた長男、秋山大治郎(アキヤマ・ダイジロウ)。それから、田沼意次の妾腹の佐々木三冬(ササキ・ミフユ)。この2人は後ほど結婚する。この4人のアキヤマファミリーを中心にした物語である。小兵衛が59歳から67歳まで、息子の大治郎が24歳から32歳まで、「おはる」と三冬がともに19歳から27歳までの話である。

小兵衛と大治郎は無外流の剣士である。おはるの実家の関屋村の両親(岩五郎と「おさき」)のところには大川(隅田川)を小舟で行き来する。おはるは舟をこぐのが得意である。江戸はベニスにも匹敵する水の都だった。1人で里帰りすることもあれば、2人で行くこともある。これに、四谷・伝馬町の御用聞き・弥七(ヤシチ)と女房の「おみね」(〔武蔵屋〕の女将)、弥七の手先である傘屋の徳次郎(通称、カサトク)と女房の「おせき」(女房が傘屋の商売をしている)、辻売りの鰻屋の又六、料亭〔不二楼〕の亭主・与兵衛と女房の「およし」、浅草駒形堂の小料理屋〔元長〕の長次と「おもと」、本所・亀沢町の町医者の小川宗哲(オガワ・ソウテツ)、奥山念流の道場主の牛堀九万乃助、それから、手裏剣の女名手、杉原秀(手裏剣のお秀)といった一群の人物が周縁を囲んでいる。老中、田沼意次もその1人である。大治郎は田沼屋敷の家来のために稽古をつけている。大治郎の開いた小さな道場にも弟子ができ始める。最初の弟子が飯田粂太郎(イイダ・クメタロウ)、2番弟子が笹野新五郎(ササノ・シンゴロウ)である。
このほかの主な登場人物は三冬の叔父の書物問屋の和泉屋吉右衛門と三冬が大治郎と結婚する前に仕えていた老僕の嘉助(カスケ)である。おはるの実家の長兄の乙吉。
小兵衛は弥七や傘徳などに用を頼むときには必ず付け届けを忘れない。この気持ちがうれしい。金離れがきれいなのだ。

小説はストーリーではなく、人物のキャラクターが第1に大事であるという。これは誰かがどこかで言っていた。目から鱗。剣客商売にはこうした多彩な人物が登場する。こうした人々を常連として、多様な事件が起きる。そこで、登場人物が生き生きと動き回るのである。
 
 この小説では、料理屋や蕎麦屋や菓子屋が目を引く。
 <料理屋・蕎麦屋>
 浅草・橋場の料亭〔不二楼〕 
浅草・並木町の料理屋〔巴屋勝蔵〕
 牛込・払方町の菜飯屋〔玉の尾〕
 中洲の料亭〔稲屋〕
 堀江六軒町の料亭〔桜屋〕(以上1冊目) 
 本所・横網町の居酒屋〔鬼熊〕
 芝神明前の料亭〔車屋〕
 浅草寺・門前の並木町の泥鰌鍋〔山城屋〕
 本所2ツ目の軍鶏鍋屋〔五鉄〕
 麻布一本松の茶店〔ふじ岡〕(以上2冊目)
 浜町堀の蕎麦屋〔十一屋〕
 浅草・元鳥越の蕎麦屋〔寿庵〕
 天王町の汁粉屋〔梅園〕(以上3冊目)

 <菓子屋など>
 両国米沢町・京枡屋の銘菓〔嵯峨落雁〕
 田原町1丁目の果子舗〔大和屋勘右衛門〕(以上1冊目)
 坂本三丁目の果子舗〔布袋屋〕(3冊目)
 
 池波正太郎の小説がなぜかくも人気があるのか? ひとつには日本の故郷の文化である江戸文化を伝えているからでないだろうか? 町人文化、商人文化、食文化を含めた文化の香りが濃厚である。政治権力を掌握した明治の元勲たち薩長の田舎侍は徹頭徹尾江戸文化を唾棄した。江戸文化否定の上に近代化=富国強兵を推し進めたのである。その否定された歴史と文化を再現しているのだ。
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