こんばんは、長江商学院の石川です。
本日で今年の授業も終わりました。
ただし、新年2日から授業があります。しかも、いきなりグループプレゼンなので元旦は、みんなで学校に集まってプレゼン準備です。中国人は正月を気にしないとは聞いていましたが、予想以上です。休もうよ。元旦くらい・・・・。
さて、写真ですが先日行われたクリスマスパーティでの一枚です。右が私、中央が妻、左が11歳になる長男です。人見知りする息子が、やや不機嫌そうですね。。。
と言いたいところですが、中央はcorporate financeの教授Jenniferです。パーティーでお気に入りのコとペア写真を撮るというイベントがあり、同伴者がいなかったので教授にお声掛けさせていただいた次第です。MITでドクターを取った美しき剛の者です。最近パーマをかけました。。。授業は数式が多くてついていくのが大変です。テキサス生まれの息子は、僕より数段流暢な英語を使います。
さて、そのJenniferのクラスで最近「Airbus」のケースを扱いました。
面白い内容だったので、紹介します。受験を検討されている方の参考になれば幸いです。
本ケースは例によってハーバードで書かれたものです。有名なので同じケースを扱った方もたくさんいらっしゃると思います。さて、そもそもケースって?という話なのですが、概ね20ページくらいで構成される、実在企業の資料です。前半半分はだいたいテキストのみ。冒頭で、企業または主人公(よく出てくるのがMBAホルダーの幹部や企業再生を引き受けた経営者)が直面する問題がストーリー形式で語られます。
「Benはボストンにある本社オフィスから眼下の並木道を呆然と眺めていた。2時間後には役員会に対して、プロジェクトの状況報告をしなければならない。遅延するスケジュール、超過する予算、取引先の倒産。何もかもが予定通りには進んでいない。いったい何をどこで間違ったのだろう。役員から更なる支援を仰ぐべきか、プロジェクトからの撤退を進言すべきか・・・・」
みたいな感じです。
Airbusケースでは、超大型機A380のプロジェクトがテーマになります。大型機を持たないAirbusはこの分野でBoeingの独占を許している。マーケットを取りに行きたい。一方、当初共同開発を検討していたBoeingは需要が伸びないと判断して撤退してしまった。単独でプロジェクトを進めていたAirbusは、見込顧客の獲得に成功する。決断の時期が迫る。さて、あなたならどうする?
みたいな感じです。
それから先は、当該企業、競合起業、マーケットトレンドに関する基本的な情報が説明されます。まぁ、有報の冒頭に書かれているような基本情報です。後半部分は、データです。過去数年分の財務諸表、マーケットシャアの変遷、組織図、幹部のキャリア等々です。Airbusケースではファイナンスにフォーカスしているので、受注残や将来需要の見積もりデータ等が示されます。
肝心なのは、ケースに解答は書かれていないことです。結局、AirbusはA380のプロジェクトにゴーサインを出したのかどうか、投資を回収できたのかどうかは書かれていない。ネットで探せば、「結果」は見つかるのですがが、クラスではそこはあまりフォーカスしていない。あくまで当事者の立場で、その時点で知り得る情報を元に「あなたならどうするか?そして、それはなぜか?」と考えることに価値を置いています。追体験することが肝心という考え方です。
さて、ケース分析の切り口は様々ですが、今回は明確、ずぱりNPVの計算です。ファイナンスのバックグラウンドをお持ちの方でしたら、ワケないタスクです。初期投資とその後のキャッシュインをEXCELにセット。「=NVP()」と打ったら、答えが出る。シンプルです。
シンプルなはずですが、クラスで各チームのNPVを発表してみたら、けっこう差がある。マイナスになったのは僕のチームだけでしたが、他チームの数値も、限りなくゼロに近いもののあれば大幅なプラスのものもある。なぜか?前提が異なるからですね。ケースの後半でマーケットデータは示されているのですが、完全ではない。もちろんです。完全なマーケットデータが存在するなら、そもそもAirbusとBoeingの見積もりがずれるはずがない。両社の見積もりでは、前提とする世界経済のGDP成長率も異なる。長距離大型便の需要予測も異なる。そして、ケースにはどちらが正しいとは書いていない。足りない情報もある。工場の稼働率や値引き率に関するデータはないので、自分たちで仮説を立てる必要がある。
フタを開けてみると、会計的な処理には差が出ません。減価償却や税効果については計算方法が示されているので答えは一つ。それ以外の、前提をどう立てるかによって全然結果が変わってきます。そこに議論が発生します。さらに、そもそもNPVがマイナスだったらNO GO、プラスだったらGOでいいのか、という意見もあります。航空機産業は、軍事産業と密接に結びついていますから、プロジェクトファイナンスの観点からリスクがあるとしても、安全保障上GOすべきだという意見を言う人もいます。その手の定性的な話になってくると答えがありませんが、だからこそ面白いのかも知れません。
長くなりましたが、ケーススタディの流れは上記のような感じです。
結局、答えはないのです。現実をみればAirbusはA380をローンチさせました。今でも、Boeingと熾烈な競争を繰り広げている。株価をみると、Boeingと比べるとパッとしない。A380が成功だったのか、失敗だったのか結論らしきものが出るのは、まだ先な気がします。
我々はこのケースから何を学んだのか?無論、航空機事業について詳しくなることが目的ではありません。EXCELの使い方?NPVの計算方法?それも違うと思います。私見ですが、前提の置き方、そしてそれぞれの前提要素が収益にどの程度影響を与えるのかという感度分析、最後に、そのモデルをいかに素敵なロジックで説明するかというスキル、それが肝心なのだと思います。各企業のケースから、普遍的な要素を抽出して自分のものにすること、それがケーススタディの醍醐味ではないでしょうか、、、、、、と書いてて気が付きました。
スケジュール感で言うと、ケースの読み込みから、モデル作成まで他の科目の宿題等と並行しながら2、3日でやります。ちょっと余裕がないですね。ちょっとどころか、まったく余裕がないです。1年制MBAならではの、激しさです。
ということで、今回が年内最後の投稿になります。
入学して早4か月が立ちましたが、授業のクオリティには総じて満足しています。
今更ですが、勉強って楽しいな、と単純に思います。
それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。
来年の秋、これを読んで下さっている方のどなたかと北京でお会いできる日を楽しみにしています。
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