COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

限りある地球に住む一地球市民として、微力ながら持続可能な世界実現に向けて情報や意見の発信を試みています。

学生達が描いた持続可能な世界

2006-09-25 16:28:12 | Weblog
 大学では後期の講義が始まり、学生達は前期の定期試験の採点をどう受取ってくれただろう。講義では、安全や地球の環境容量への配慮を欠いた豊かさの追求が、持続不可能な形で進められたことで、様々な環境破壊や貧富の格差拡大を内包した地球環境問題が生じたことを話した。多くの学生達が科学と技術の効用を認めながら、扱う人の心の大切さを学んでくれた。試験問題は、「私の描く持続可能な世界」と題した論説の記述だった。問題意識に溢れた現状批判の記述が大部分の答案が多数あった。これ自体は好ましいことだが、論旨の展開が出題の主旨から脱線していた。大勢の学生達は出題に面食らって批判精神が空転し、持続可能な世界の描写が付けたしみたいになってしまったらしい。
「持続可能な世界」とはどんな世界かを冒頭から提示した答案の中で、最も多かったのは表現の仕方に多少の差はあれ、「自然との共存」を唱えたものであった。その為の太陽光、風力、バイオマスなど自然エネルギー開発や、破壊された環境の修復のための技術革新への期待感が強く感じられた。「自然との共存」は至って健全な目標といえよう。
 「世界の人々が幸せである為に、全ての人々へ生活の質が行き届く必要がある」で代表されるような、貧富の格差や次世代を強く意識した答案を書いてくれた学生達も少なくなかった。潮位が上がると湧き出る海水で翻弄されるツバルの人々、黄砂多発地域で乏しい水での生活を強いられる人々、先進国へ輸出される切り身を取った後で、捨てられたナイルパーチ(日本ではシロスズキとも呼ばれている白身魚)のアラを食べるアフリカの人々等、日本で普通に生活していると思いも寄らぬような場面のVTRは、学生達に強いインパクトを与えた。また、冒頭から「なるべく自分達の国で作ったものを利用し、他国からの貿易に頼らないことだ」と、国内でのエネルギーと食料の地産地消を目標に掲げた答案もあった。目標として明言されていなくても、食料と水の問題に言及した答案が多く見られた。
 文系と理系の壁について付記したい。講義から多くを学んでくれた文系の学生が、「最先端の科学研究者目指す人も文系を学ぶことで、一つの学問分野に偏らない考えを持つことが必要」と書いてくれた。この学生のように、文系の学生達も自然科学を学んで、地球環境問題という今世紀最大の課題にどう対処して行くべきかを考えて欲しい。大学入学以前の教育にも問題があるが、文系に進めば理系は学ばなくてもよいという風潮に流されて欲しくない。学生達が単位取得だけで満足せず、自分達が地球上の全ての人々とつながっていることを自覚した、地球市民らしい生き方を実践して欲しいと願っている。

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4 コメント

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ka_gaさんへ (coccolith)
2006-10-04 00:59:19
久し振りのコメントを有難う。3日ほど留守にしていたので、返事が遅れました。2年前にはなかったいろいろなVTRを使うようになって、今年はモロッコのタコのVTRは割愛しました。若し来年も講義することになったら、試験問題の傾向をがらりと変えましょうか。

理系白書は毎日新聞を購読しているので、ある程度は見ていると思いますが、ご推奨の本にも目を通すようにします。
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ごぶさたしております。 (ka_ga)
2006-09-30 00:54:02
先生、お元気でしょうか??

試験の記事が出てるのを見てコメントさせていただきました。

私が先生の講義を拝聴した2年前も似たような試験問題だった記憶があります。

モロッコのタコや、足尾の山などの事例を踏まえて記述したような。。。

確かに私のような文系人間が科学のことを理解するのは結構大変なことですが、実際、地球で何が起きてるのか、という認識・視点は持つべきだと思います。「知らない」ではすまされないですから…

文系と理系の問題について、「理系白書」という文庫本が講談社から出版されているので、お読みになってなければぜひ読んでみてください。
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imacocoさんへ返礼 (coccolith)
2006-09-26 00:41:00
コメントを有難うございます。人間は地球生命圏に寄生した害虫だとの見方もあります。科学は地球生命圏が微生物をはじめとした多様な生命体の働きで維持されていることを明らかにしてきました。科学が人間のエゴイズムで悪用された例に事欠きませんが、本来は人間同士及び人間と自然の共存を如何に実現させて行くかに生かされるべきものでしょう。要は扱う人の心の問題、奈良の神主さんの著書も、これに沿ったものと見受けました。なお、放射性同位元素の壊変速度は種類により異なり、ウラニウム238のように地球40数億年かけてやっと半分にしかならないものもあります。
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はじめまして (imacoco)
2006-09-25 16:45:47
イマココと云います。



処で、自然環境自体はそのまま放っておけば、何千 何万 或いは億単位の年月で放射能\すら無毒化する機能\がある分けですね。 …と云うより、それが自然です。 しかしながら、命ある人間が生きる為に、破壊された環境を人間が生存可能\な範囲迄、回復させなければならない。

詰まり、全ては人間中心の考え方ですね。

このような 言ってみればエゴイズムが学問の核に在るとすれば、その辺りをシフトして行く事が、社会の在り方を転換させるポイントとなるかも知れません。 (余談ではありますが、葉室頼昭、と云う奈良の神主さんの書かれた著者、興味深いです。春秋社から出ています。もし宜ししければ)

長くなり申\し訳ありません。
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