COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

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深刻化する中国の水問題を28日の未来への提言で放送

2010-03-27 22:01:51 | Weblog
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はじめに
  “世界の工場”として急速な経済成長を続ける中国は、世界各所に様々な影響を及ぼしています。しかしつい先日日本列島に飛来した大量の黄砂からも明らかのように、中国内陸部では砂漠化が進み、13億の人口を支える中国の水資源が憂慮すべき状況にあります。折しも、3月28日(日)20:10-21:00にBS1で放送の未来への提言<終>で、「環境保護活動家 楊勇~中国13億人の水危機に挑む~」が放送されます。この番組は3月4日のきょうの世界の特集で放送予告されたもので、昨年6月から4ヶ月かけて、楊勇さんを団長とする中国の専門家達のチームが、政府の協力を得て大規模調査を行った中国の二大河川、黄河と長江の源流付近の深刻な状況を描いたものでした。楊さんは、農工業製品の生産による大量の水を使用に加えて、深刻な水質汚染や地球温暖化の影響も相まって、中国は国家の命運を左右するほどの水資源不足に陥っていると受け止め、「現在の中国はブレーキの効かない特急列車のようなものです。しかしブレーキをかけ、立ち止まって考えなければなりません」と語っていました。本番組の紹介を兼ねて、3月4日の放送内容のあらましを紹介します。

3月4日きょうの世界 特集「グリーンアース:中国13億人の水危機に挑む」の概要
  中国の研究機関によると、毎年最大6万平方キロ、九州と四国を合わせた面積の土地が砂漠化している。既に中国の国土の27%が砂漠に変わっている。深刻化する水不足の原因と実態を調べるため、専門家チームが中国の二大河川、黄河と長江を中心に、河川の水源の状況等の調査を行った

  黄河は流域で暮らす1億7千万の人口を支えている。しかし全長5400キロの流れが途中で途絶える断流という現象が度々発生している。調査隊は黄河の源流を目指した。黄河上流は内陸部を代表する穀倉地帯であるが、水不足が住民の生活に影を落としていた。トウモロコシには少ししか実が入っておらず、農民はこれが3年も続いたら、出稼ぎに行くしかないと語っていた。もう20日間も水道が出ないので、洗濯も食事も体を洗うのも買った水を使うしかない。更に上流の標高4000メートルの、かつては大小300の湖があった星星海では、楊さんが訪れた去年6月には、多くの湖が干上がっていた。10年以上前に源流があった場所に立てられた石碑の辺りには水がなく、今の水源はずっと低い場所に移動しており、15年で30メートルも高度が下がっていた。これは、地下水位が著しく下がったためである。楊さんは遊牧民の増加や鉱物資源採掘、狩猟、薬草採集、環境を売り物にした観光ツアーなどで、以前は全く無人であったか現地の人しかいなかった地域で、人間の活動が増えたため、大量の水が使われるようになったことが、黄河上流で起きている異変の原因ではないかと見ている。

  次に調査隊は、中国政府が1500億円をかけて蘇らせというタイテマ湖を訪れた。2年前に湖畔に建てられた石碑には、「ここに200平方キロの湖があり、野生動物の楽園となった」と書かれてある。しかし湖は今干上がり、僅かな水溜りが残されているだけで、湖に通じる水路も涸れていた。水路上流の地域では輸出用のトマトの栽培が盛んに行われ、農地は年々拡大していた。漢方薬の原料となる作物なども大量に栽培されており、拡大した農地で水が使い尽くされ、下流の湖まで水が行き渡らなくなったのである。楊さんは、「現在中国では農業が最大の産業で、水資源の7割から9割を消費しています。これは正に、人為的な水不足なのです」と語っていた。

  中国の水不足を更に悪化させているのが、地球温暖化で、長江の源流の調査でその影響がはっきりと現れていた。調査隊が訪れたのは7月、長江の源流の一つジャンクティール氷河では急速に氷が融けていた。この20年で100メートル以上小さくなった氷河もあり、これまで何度もこの氷河を調査してきた楊さんは、地球温暖化によって氷河が溶けるペースが早まっていると見ている。楊さんは、「地球温暖化が注目されていますが、多くの人が関心を寄せるのは南極や北極の氷がどうなるかということです。チベット高原の氷河はあまり注目されていませんが、大河の水源としてとても貴重な存在なのです」と語っていた。

  昨年11月、4カ月に亘る調査の報告会が行われた。出席したのは中国政府の科学技術を統括する官僚や、環境問題を扱う専門機関のメンバーであった。楊さんは中央政府の目がなかなか届かない内陸部の水問題の現状を説明し、早急の対策を訴えた。しかし政府担当者は、環境保護団体は感情的過ぎでもっと理性的になるべきと論評し、楊さんに満足の行く反応は得られなかった。楊さんは、問題は政府が情報を公開しないことにあると反論したが、政府担当者そんなことはないと否定した。

  楊さんは次のように総括した。「水問題は中国十数億人の死活問題だと言っても過言ではありません。この問題を解決しないまま、中国がこれ以上発展を続けることは不可能です。中国は何を目標にして発展してゆけばよいのでしょうか。私たちが優先すべきものは何でしょうか。それは今の状況から見ればGDPなどの経済的指標ではありません。人々の生活の質の向上こそ指標となるでしょう。」

おわりに
  GDPなどの経済指標でなく、人々の生活の質の向上こそ優先すべきという楊さんの主張は、中国に限らず世界の全ての国々に当てはまることです。28日の本番組では、楊さんの考えをより詳しく聞けるのではないかと期待しています。なお、NHK番組表によると、これまで何度かこのブログでも紹介してきた「未来への提言」が、今回で最終回になってしまうのかも知れません。大変良質な情報を提供してきた番組なので、表紙は変わっても新たな良質な番組が編成されることを期待しています。

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