と言うことで、おそらく北東北唯一の名画座と思われる、秋田県大館市の御成座へ。そこで水俣病問題のドキュメンタリー映画を観る。3時間近い大作である(花輪線の乗車時間もほぼ3時間なのだが:-))、思わず受付の人に途中休憩ありますか、と尋ねたほど(ありません)。たぶん上映中ちょっと寝てしまうかもしれない(汗)。ジョニーデップの「MINAMATA」公開記念で、当時の記録映画の再上映。
さすが名画座、待合室の広告絵画が味わい深い。「千と千尋の神隠し」の広告画は見る価値あり。喫茶コーナーもいい感じ。
思ったより劇場が大きくてびっくり。100人足らずのキャパを予想していたら、300人くらい入りそうな劇場。天井も高い。音響スペースにはDJ用ターンテーブルもある、ワクワク。観客も10人以上はいる。この手のシリアスなドキュメンタリー映画にこの人数なら、地方の劇場としてはなかなかの集客ではないか。東京も岩波ホールと言う名画座の雄が7/29に閉館すると言う悲報があり、いよいよこの御成座にも頑張ってもらいたいと思う。
しかし、その広さの一方で、なんと暖房がなく、ストーブが3台あるだけ。これは参ったな、今日は室内でぬくぬくと映画鑑賞だと思っていたのであまり厚着をしてこなかった。3時間、寒さとの戦い。
さて本題、上映開始。昭和45年の作品でモノクロ。まだ蒸気機関車が走っていたり、国鉄時代のJNRの特急だったり、懐かしい。
必ずしも、水俣病が日本初の公害問題と言う訳ではない。それ以前にも、足尾銅山の河川汚染などはあった。しかし、全国区で連日のようにニュース報道され、こうして記録映画も残されている公害は、間違いなく水俣病が日本の歴史上、初めてであろう。九州の片隅で起きた事件が、日本の公害問題を提起する発端であった。
タイトルにある通り、徹底的に水俣病患者の姿に寄り添った記録映画である。もちろん、チッソ化学工業の役員との株主総会での丁々発止、裁判のための弁護士とのやり取りなどもあるが、基本は水俣病患者の日常である。軽症で自ら被害を語る人。重症の子どものことを語る親御さん。
ぶっちゃけ、熊本弁は難解だし、加えて患者の多くは呂律が回らない、たまに家族が通訳してくれる場面もあるが、字幕があつたら、と思うところもある。しかし、やはり映像が雄弁なのだ。まさに、あるがままを記録している。
被害者の生の訴えは本当にリアルで泣かせられる。近代では戦争でも戦闘員以外の罪のない市民が巻き込まれることも日常的になったが(だから戦争は勝とうと負けようと絶対反対)、公害は最初から罪のない市民がターゲットである。そして、自然災害なら生き残りさえすれば、人生をサイスタートすることも可能だが、水俣病は治ることのない病。被害者は生き長らえても一生の障害、そして差別されるような烙印を押される。そう言う実態を、この映画は日本全国、そして世界中に知らしめた。
この時代は、まだ公害訴訟も前例がなかったし、ましてや九州の片田舎の出来事で、日本全国の世論を動かすことなど至難の業であっただろう。この記録映画は、被害者が全国行脚を努め、国とチッソを相手取った裁判。そして株主総会でのラストシーンによって、この事件が日本の公害問題の原点となるまでになった被害者遺族の圧倒的な熱意に震えるような感動を覚える。食い入るようにスクリーンに引き込まれ、3時間はあっという間であった。
現代では、公害は1地域、1責任企業に留まらず、プラスチックゴミ問題、温暖化問題のように、世界中、生産者も消費者も問わず解決に向けたアクションを起こさなければ、絶望的な未来に突入しかねない時代になった。もう一度、原点から公害と言うものを見直し、我々一人ひとりがどう行動すべきか、と言う議論が急務の時代に、セビ観るべき映画。
ちょうど終映30分後には、大館から盛岡までの高速バス、こちらに乗って帰宅。
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