一度引退を表明した、フィンランドの名匠、アキ・カウリスマキ監督の新作映画を観に行く。昨年暮れに渋谷ユーロスペースでカウリスマキ監督の過去作品もまとめて上映してたんだけど、予定が噛み合わず見れなかった。
昨日から上映開始もあり、結構混んでる。中高年だけでなく、若者も。
いつものカウリスマキ節、まさに小津安二郎の継承者。役者は見事なくらい無表情、でもこの哀愁にはこのくらいがいい。アニメやテレビドラマの誇張された表現(こちらはこちらで、歌舞伎のような表現を継承しているのだと思うが)とは真逆。私はこっちの方が好きだ。
と言うか、アニメやテレビドラマが扱うファンタジックなテーマ自体が苦手。厳しい試練を通じててっぺんを取るストーリーは見事に今日的な右翼保守。そういう物語を理想としない人生を選んだ自分には、見ていて辛くなることさえある。小さな幸せを求める小さな物語は、今の生きづらさの時代に必要なはずなのだが。
フィンランドはロシアと国境を接する国、ラジオでは頻繁にウクライナ侵攻の情勢が流れる。そんな時代のラブストーリー。まだ戦争はそこまで近くないのに、小さな幸せをを諦め、大きな物語を夢見なければならない日本は不幸だ。
映画の背景に流れる数々のフィンランドムード歌謡。昭和歌謡の手垢を感じることなく(昭和歌謡は中高年がカラオケで盛り上がるような手垢が苦手)、純粋に哀愁の情緒が感じられる佳曲が揃う。サウンドトラックも素晴らしい。
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