監督:三宅喜重
主演:中谷美紀、戸田恵梨香、宮本信子ほか
「この世の中にはこんなに多くの人が住んでいるのに、誰も私のことを気に留めもしない…」。劇中に出てくるこのセリフは、電車に乗っている時に最も強く実感される感覚なのではないだろうか。しかし、そんな無関心に支配された空間で展開されるお話であるからこそ、本作は多くの人の心をとらえるのである。
本作は有村浩のベストセラー小説が原作になっているが、言葉の力が際立っている。冒頭のセリフの他にも「現代を生きる人たちは皆、何かしらのやりきれなさを抱えて生きている」といった言葉は多くの人に通底する鬱屈した思いを見事に、鋭く、一言でえぐりとっており、見るものを言葉だけで物語世界に引き込むのには十分な力を備えている。物語は電車の中で起こる短い時間の出会いが、登場人物の人生の転機となって行く様を描き続ける。ひとつひとつのエピソードが長過ぎず短すぎないために、飽きることなくテンポよく物語に浸ることができるはずだ。
演技の面では関西弁に注目したい。本作は主要キャストは多くが関西出身者であるために無理のある関西弁をきかされることもない。中谷美紀は薄幸の美女というはまり役をきっちりと演じているし、戸田恵梨香、宮本信子らの演技も存在感満点だ。
必見の映画と行って良いだろう!!
(エンドロールで流れるaikoの「ホーム」:★★★★★)