はじめに
べスリー√最高でした。このルートとにかくCGが良かったり演出が良かったりで何ていうかとてもセンチメンタルな感情にさせられる場面がけっこうあります。一言でいうとエモいです。そういうわけで雰囲気がよくて個人的に『銀色、遥か』の中で一番気に入っております。べスリー√が評価が高いことを知っていたので、この作品のおおとりとして最後にプレイしてみたのですが大正解でした。最後に一番いいのをもって来たおかげですっきりこのエロゲを終えることができました。本当は少し名残惜しいですが…。
べスリーについて
声を上げて喜ぶというよりは、微笑み返してくれるような優しい印象です。そして普段大人しいですが、時折大胆だったり、突拍子もないことをしたりします。絵が上手でユーモアのある一面もあります。何ていうか芸術家っぽいです。一言で言うとマイペースっていうのかもしれません。おっとりしている性格や喋り方のおかげなのか、一緒にいるとほっとします。そして心が暖まります。そういう存在がべスリーなのです。
最初は色々あって素っ気ないのですが、徐々に仲良くなって話してくれるようになっていくのでその過程を楽しむのもポイントの一つだと思います。
※以下ネタバレ含むよ
ストーリーについて
・中学生編
入学当初のべスリーはどこか寂しそうでふさぎ込んでいました。春になって母親が亡くなったからです。そんな状態のままカナダから日本に引っ越ししてきて馴染みのない生活を始めます。慣れない場所で知らない言葉で生活しなきゃならないなんて相当ストレスを感じたでしょう。放課後は一目散に帰ったりしてました。ワンルームメンバーで山に登るときも直前までためらってたりしました。けっきょく現地集合しました。
最初こそはふさぎ込んでいましたが、雪兎と遊んだり、他のワンルームメンバーと一緒にいるうちに幌路での生活にも慣れていきます。そしてワンルームメンバーでしばれ町という日本一寒い町に行きます。べスリーと雪兎は二人夜中に抜け出して一緒にオーロラを見ます。このときべスリーは雪兎にあと一年でカナダに帰ることを打ち明けます。雪兎はべスリーがいなくなることに動揺していました。その後カナダに留学できるように英語を必死になって勉強し始めます。ここのシーンがただただ美しかったです。
この当時、べスリーにとって雪兎は親友といった立ち位置にあったのだと思います。それが新鮮で心動かされるものがありました。あと雪兎をまだ恋愛対象として認識していないべスリーは、一緒にいった瞰望山でのスケッチに雪兎を書き込もうとするのですが、恥ずかしくなってやめてしまいます。こんなところが初々しくてよかったです。
自分の気持に気づいた雪兎はべスリーに告白するのですが、カナダに帰らなければならないからと振られてしまいます。銀はるで唯一振られるのが新鮮で切なかったです。それでも諦めきれなかった雪兎はカナダに留学できる高校を受験します。べスリーが帰国する日にそれを打ち明けようとするのですが、雪の影響で結果が配達されるのが遅れます。妹の雪月たちに協力してもらい、なんとか空港にたどりつきます。偶然にもフライトも雪の影響で遅れていたため、なんとかべスリーに会うことができました。べスリーに留学しようとしていたことを話します。高校からの封筒を開けるわけですが、結果は不合格でした。残念だとは思いましたが、この頑張っても必ずしも救われない感じが個人的に気に入ってます。そういうわけで高校生活をべスリーと過ごすのは無理かと思われましたが、なんとべスリーも日本への留学を受けていたのでした。そうしてべスリーの方から留学してきて、日本でのべスリーとの生活が再び始まるのです。
・学園編
高校生活が始まり、べスリーが留学してくるのですが、他のルートと違ってホームステイ先はももちゃん先生の家ではありません。雪兎の住む新見家なのです。こうして愛し合うもの同士の一つ屋根の下の生活が始まります。おはようやおやすみなど、一緒に暮らしてべスリーと挨拶するなど生活に充実感があります。また、お風呂に入ろうとしたら先にべスリーが入っていて覗いちゃったというラッキーで助平なイベントもあります。
学園編では当然いちゃいちゃしていたわけでデートでゲームセンター、瞰望山、カラオケ、プールなどにいったり、一緒にジャンボストロベリーパフェを食べたりしました。あと唐揚げを手作りして食べさせてくれるシーンが好きです。
当然えっちなこともするわけですが、雪月ちゃんに見られそうになったり、両親に見つからないように頑張ったりします。そしてえっちに関して、べスリーは倫理観がけっこうしっかりしていまして、妊娠しないようにピルを飲むことになりました。そしてピルを買うために雪兎はアルバイトをしてお金を貯めます。これぞ青春って感じのやつです。そしてピルを買うまでバイトで溜まった疲れをべスリーに口で癒やしてもらったりもします。
そして雪兎たちは学校では放送部に所属しており、コンクールの応募作品として「幌路雪まつりドキュメンタリー」を制作することになりました。雪まつりで雪像をつくりながらその過程を作品にします。べスリーの方も留学のレポート「SNOW FESTIVAL」のテーマとして雪まつりについて書くことができるのでこのテーマは一石二鳥でありました。
何だかんだあって申請に通り、実際に雪像を作ることになりました。べスリーがデザインして、雪兎たち放送部の面々と道桜大生と協力して雪像アートをつくるわけです。しかし公開までわずかというときに、気温が例年より高かったせいで他のところが作っていた雪像が崩れてしまいます。そのせいで雪まつり委員会が複数の雪像の制作を中止するよう呼びかけ、不幸にも雪兎たちの雪像にもその呼びかけが下ります。なんとか状況が回復し中止が外されるのを願いながら、委員会に抗議しにいったりします。しかしけっきょく雪像は温度が高かったために一部溶けて崩れてしまいました。今までの頑張りとか思い出が作れなかったことの悔しさから涙を流します。完全に失敗に終わってしまいます。
しかしここで雪兎があるアイデアを思いつくのです。地面に雪が積もっておりまして、これを使って足で地面に絵をかけるのではないかと。早速べスリー達と道大生と協力して瞰望山に雪の結晶の地上絵を作りました。雪像作り自体は失敗しましたが、自分たちの活動の足跡を残す事ができました。べスリーはこのアートを作り終えた後、こういっております。「疲れたけど、心は暖かい」と。べスリーのこのような感じの言葉には、悲しくないけど何だか嬉しくってジーンとさせる力があります。
・アフター編 inトロント
べスリーのアフターはトロント編と幌路編があります。神かよ。
今度は雪兎が留学してカナダのトロントに向かいます。
トロントでの生活はべスリーありきでしたが、周りにも魅力的な人がいて賑やかしてくれました。そんな大学時代の同僚を紹介したいと思います。
まずはエミル。南アフリカ出身。雪兎のルームメイトで、陽気で感情表現豊かで馬鹿やってるが、いいと思ったことははっきり言える気のいいやつである。
二人目はリリアン。べスリーのルームメイト。気が強いというか思ったことをはっきり言うタイプで結構人を傷つけることもあるが、それで救われることもあるっていう感じ。
三人目はジェイク。元祖ツンデレ。酔った勢いでべスリーとリリアンにヌードデッサンのモデルをやってやる言ってナンパしてリリアンに追い返される。孤独で寂しそうな印象で、根は弱いが強がりで自意識をこじらせてしまった性格である。きつく当たられても温厚な雪兎のおかげで仲良くなって、仲良くなってみると案外いいやつである。親が色々あったらしい。
主にこの五人で大学生活を送るわけです。
一緒に雪で遊んでかまくらを作ったり、ディベートコンテストと絵画のコンペで協力しあって賞金を山分けしたり、試験勉強を一緒に頑張ったり…そして無事に合格して大学を卒業します。あの帽子を空に投げるのが好きです。
・アフター編 in幌路
二人は幌路に帰って来て同棲しながら働き始めます。べスリーは英語教室の講師をしながら絵を描くことを続けます。当面の間は配偶者ビザを取るためにお金を貯めていました。絵を書くために、べスリーは樹の精ハマドリュアスになりきってみたり、熟睡してしまわないために床で寝てみたり、この頃からべスリーは独創性を発揮し始めます。
そして雪兎の協力によって、(予定の管理や広告方法など)によってべスリーはついには人気を集め、個展を開くまでに至ります。絵描きとして十分やっていけるようになったので、英語講師をやめることになりました。べスリー自身は絵を書くことが第一ではありましたが、英語講師をすることを十分楽しんでおり、子どもたちとの別れを心の底から惜しんでいました。このときの、子供をあやしているべスリーがなんか新鮮で良かったです。
イースターというキリストのお祝いにあやかってべスリーがある遊びを始めます。紙に書かれたヒントを元にイースターエッグを見つけろと言うのです。そのヒントに従って瞰望山に行って雪を掘ってみると簡単にイースターエッグが見つかりました。べスリーに割ってみてと言われて言う通りにすると中から指輪が出てきました。以前雪兎はべスリーに指輪を渡しましたが、そのお返しというかお揃いのものを持ってもらおうと考えたわけです。同じ指輪は見つからず同じブランドのものでしたが嬉しかったです。雪月と雛多に協力してもらってこのサプライズをやるわけですが、ユーモアがあっていいなと思いました。
それからしばらくして二人は式を挙げます。雪兎の両親やワンルームメンバー、べスリーの家族やエミル、リリアン、ジェイクといった大学時代の仲間。そんな幅広い色んな国の人達から祝福を受けます。そして国際色が強いため、雪兎とべスリーは互いに謝辞を訳しあうという少し変わったはじめての共同作業をしておりました。この訳しあうところを見ていると何というか暖かい気持ちになりました。二人は目の前の人達に感謝の言葉を告げていきます。そして最後、べスリーは子供の頃亡くなっった天国の母親に、産んでくれてありがとう、愛してくれてありがとうとそう告げるのです。もうここで抑えきれず自然に涙を流してしまいました。ほんと最後まで最高でした。ありがとう。
そしてまたEDが良かったんですよ。結婚式でみんなの似顔絵を書いたと言っていたんですけど、その似顔絵がべスリーのこれまでの半生を物語ってるわけでして、お母さんが亡くなって落ち込んでるべスリーとか、雪兎に出会って明るくなるとことか最高でした。最後ウエディングドレスを身にまとって子供が産まれるところも最高でした。
考察
「雪はね、小さなちりやほこりなの。それが、空の上まで巻き上げられると、雨と出会って結晶になるの」
「結晶どうしがぶつかり合って、一緒になって、だんだん大きくなっていく…それが、雪なの」
べスリーの母親、エリシャさんの言葉です。彼女は絵描きでした。冬の雪まつりの絵なんかを描いてはまだ幼かったべスリーを喜ばせました。母の影響を受けてか、べスリーは絵を描くのが好きになっていました。そして冬も好きになっていました。けれど春が嫌いになりました。春先にお母さんが亡くなってしまったからです。彼女はふさぎ込んでしまいましたが、そんな中父の転勤が決まり、日本にやってきます。慣れない場所で、見慣れない人たち、言葉もよくわからない環境でべスリーは生活を始めます。その上、父のパイロットとうう仕事の都合から家でも一人になることが少なくありませんでした。
そんな中で、雪兎に出会います。椛に出会います。雪月にも雛多にも瑞ねぇにも、ももちゃん先生にも。こうしてべスリーはひとりぼっちじゃなくなりました。
父の仕事の都合からカナダに帰らなければいけなくなりました。出会いがあれば同じ数だけ別れがあるのです。雪兎とべスリー二人は空港でさよならをしました。しかし再び出会います。べスリーが幌路に留学してきたからです。そして再び別れがやってきます。しかし今度は雪兎がカナダの大学に留学して再会を果たすのです。彼女たちは、場所はどこであれ、一緒にいることを望みます。生活する上での第一条件が周りの環境じゃなくて人なんだと思い至りました。大学生の頃、雪兎はカナダで就職しようとします。べスリーのことを思ってです。べスリーは、雪兎ならカナダでもやっていけると言いながらも、日本に戻ろうと提案してきます。お金が稼げるからとか他にも理由はあったのでしょうけど、一番の理由は幌路にいる人たちではないでしょうか。べスリーにとって日本はワンルームメンバーしかり親しい人がたくさんいるっていうこともあるでしょうし、それは雪兎にとっても同じことです。カナダには大学で一緒にいたメンバーがいますが、卒業したらみんなバラバラになってしまいます。だからべスリーは、そうして親しい人がいなくなったカナダで働くことになるだろう雪兎を慮ったのだと思います。その点べスリーなら日本でも友達がいっぱいいますし。
彼女にとって一番大切なのは名誉とか成功じゃなくて、人との関係の中にあるのではないかと思っております。彼女の理想とする生活空間は、幌路とかアルバータとかそういう単純な場所ではなくて、大切な人たちに囲まれた環境なのではないでしょうか。EDに出ていたように人に囲まれた環境なのだと思います。
そしてべスリーは親しくなった人たちを本当に愛おしく思っているんだなと思います。例えば、英語教室の子どもたちとの別れを名残惜しそうにしていたり、べスリーは雪兎だけを愛して生きているわけではありません。もちろん雪兎が一番でしょうけど。彼女の隣に雪兎がいて、さらにその周りに彼女の大切な人達が輪になって広がっているようなイメージです。
「人の絆とは不思議なものです」
「この会場にいる方々は、みんな、私たちと関わりのある方…絆によって結ばれている人たちです」
「私とユキトは、みなさまとの絆に助けられながら、ここまでやってきました」
「これはけして大げさではなく…ここにいる人たち、誰か一人がいなくても、今の私たちはなかったと、そう思います」
「みなさまに出会えたこと…絆を交わしたこと…そして…何よりも大切な人に出会えたこと…そのことを、今、心から感謝しています」
結婚式でのべスリーの言葉です。謝辞だから言った言葉ではありますが、それでも実際、べスリーにとって周りの人たちっていうのはかけがえない存在なのだと思います。
雪兎と出会って一つの結晶になって、それから椛に、雪月、雛多、瑞ねぇにももちゃん先生、まりあに、雪兎の両親と出会ってどんどん大きくなっていった。そしてリリアンに、ジェイクに、エミルに出会って、べスリーの人生という結晶は出来上がっていったのです。彼らのうち、誰が欠けても今までの人生は歩めませんし、彼らがいたからこそ人生が色づいたものになったのでしょう。色んなときに助けてくれるワンルームメンバーも、はっきりものを言うリリアンも、お調子者のエミルも、ひねくれ者のジェイクも、みんながいたからこの道を歩いてこれたのです。その足跡を振り返って見れば、人との結びつきがあります。きっと最初は小さかったでしょうが、今では大きな結びつきです。人との結びつきを思い返せば、そんな人たちに久しぶりにあってみれば、なぜだか暖かい気持ちになるでしょう。べスリーにとっての雪の結晶とは、このような人との結びつきなのではないでしょうか。