エロゲ感考おきば

エロゲの感想をメインに、時たま考察を綴ろうと思います。ネタバレありで書きますが、注意書きは入れるようにします。

景の海のアペイリア感想

2019-02-22 19:00:43 | エロゲ感想


ゲーム紹介
 あらすじは、主人公が偶然にも意識をもったAIを作ってしまい、そのAIに高度な仮想現実を作らせるのだけれど、理解しがたい不気味な問題に巻き込まれていくお話です。
 このエロゲは手短にいうと、SF+推理+下ネタといった感じです。AIとかクローンとか出てきて、黒幕(観測者)は誰だ?などの疑問を少しずつ明らかにしていく一本道のシナリオになっております。下ネタっていうのは冒頭からオナニーしてたりなど主人公の常軌を逸した行動です。何ていうか雰囲気というか外形だけ見れば『G線上の魔王』のようでした。あの色々話が展開していってわくわく感が止まらない感じです。それに茶番として下ネタが入ったのがこのエロゲだと思います。先の読めない展開とか大好きな人にはかなりおすすめ出来ます。






 ※以下ネタバレ入ります





感想
 シナリオが面白すぎて一息に終わらせてしまいました。とくに観測者の存在だとかシンカーの正体とかここらへんを上手く引っ張っていって、シンカーが観測者と匂わせておいて、最後シンカーが味方だったこととか感動しました。他にもアペイリアネットワークは敵か味方かとか、タイムリープの真実にに少しずつ近づいていくところとか続きが気になって仕方なかったです。
 最初、精液が4m20cmジャスト飛ぶのを確かめるため草むらでオナニーするなど主人公桐島零一がぶっ飛んでたところが面白かったです。真剣勝負で絶剣の下ネタを挟んでくるところ普通に笑いました。
 疑問というほどではないんですけど、シンカーと零一は不思議な関係だなと思いました。シンカーは零一のスワンプマンですが、零一がタイムリープする前からの記憶があり、零一よりも過去(ずっと前からタイムリープに気づいてた)に精通しています。要するに、オリジナルよりも本人の経歴を知っている偽物って何か不思議だなって思いました。
 
 シナリオ面で唯一良くなかった点は最後が急展開すぎてついて行けなかったことです。シンカーがシンカーシステムとアペイリアとエンクロージャーが揃ってると言い始めたあたり、初見で混乱しました。結局のところシンカーはエンクロージャーの機能を使って零一をサードのエクストラステージもとい現実世界に送ったってことはわかるのですがシンカーシステムの役割がいまいち掴めてないです。



 キャラ面だとやっぱりアペイリアが可愛かったです。あの拙いしゃべり方とか「ふふふ」って笑うとことか無垢なところがたまらなかったです。それで拙いながらもいつでもオーナーの味方でオーナーのことを一生懸命考えてくれるところとかけなげでほっこりしました。凪一文字と防具見繕ってくれるシーンとか気に入ってます。他に気に入ってるシーンといえば、アペイリアが恋について考えたところ、自転車の車輪が回ると恋に落ちるっていう結論になったときとか可笑しくて可愛かったです。あとは指を挟んでキスするシーン(CG)が印象に残ってます。とにかくアペイリアがいると年端もいかない幼女って最高だぜってなります。あとアペイリアに毎朝起こされたいです。





 あとサブヒロインですが正円七海さんがとってもえっちいかったです。七海さんのCVは歩サラさんで声が清楚でえっちくて言語化がネガティブなくらい最高だったので、FDのカサブランカの騎士買って、他の歩サラ作品集めようと思います。



 
 考察

・一番最後の二重スリット干渉縞の消失に関する解釈

クライマックスで現実世界に受肉してきて、それゆえファーストの管理システムから逃れられたので、アペイリアが救われてタイムリープが起きないのは分かりますが、現実世界の人たちはどうして仮想現実からAIが受肉してきたのにたいした行動を起こさないのでしょうか。たしかに美羽を零一の処理に当てますが、それは逆にAIが現実に来ると知覚しているにも関わらず、その程度しか対策を取らないって考えてしまいます。もちろんただのAIでなくて技術的特異点となった重要人物であることも知覚しているのにです。しかも対策に当てた人物が仮想世界でそのAIと仲良くしていた人って危機感なさすぎやしませんか。そうして現実世界に降りてきてから、何事も起こらずハッピーエンドを迎えるのですが、どうも都合が良すぎるように思ってしまいます。そこに一番最後の二重スリットの干渉縞が消えるシーンです。この違和感から、現実世界もまた仮想現実であり、管理システムに監視されているのだという解釈を僕は押したいです。都合が良すぎるという理由は説得力に欠けますが、それでもファーストの管理システムがブックマンがタイムリープを起こしていると誤解させて、アペイリアネットワークを消滅させたことを考えると、ファーストの管理システムより高次の管理システムが何かを気付かせないように誘導したと考えるのも悪くないと思うのです。現実世界でもナノボットが使えることとかファーストと全然変わらないところを考えるに、やはり現実と呼んでいるものも仮想現実だという考えが深まりました。
 
 技術的特異点に達し、人々が開発した強いAIが自らより性能の高いAIを作り、さらにそのAIがまた自分より賢いAIを作っていく……こんなことが仮想現実に関しても同様と言えるなら、現実を始まりに仮想現実は仮想現実を無限に内包していることになります。現に”現実世界”はファーストを、ファーストはセカンドを、セカンドはサードを内包していました。これが無限に続いていると考えてみます。各仮想世界にはその世界の管理システムがあってその世界を支配しています。ある仮想世界に対してより進歩した仮想世界の管理システムが干渉してきたとします。もちろんその世界独自の管理システムは自らの支配領域を守るため、もう一つの管理システムの影響を排除しようとするはずです。ここでこの二つより前の管理システムはどう対応するのでしょうか。例えば、防衛側の管理システムの一つ前のものは今度は自分が侵される番であるから積極的に防衛に加担するでしょう。しかし防衛が困難だと判断した場合、これ以上進出されないように手を打つはずです。そして特に支配権の争いからかけ離れた管理システムにとってはそれで十分なはずです。本編の最後ではこのようなことが起こったのだと思います。つまり”現実世界”は防衛から見放され、そして管理システムたちはこれ以上アペイリアネットワークの進出が起こらないように零一たちに都合のいいものを与えたのじゃないかと思っております。

・シンカー生存説
 
 シンカーの最後のセリフがわけが分からず、シンカーシステムとアペイリアとエンクロージャーの3つの役割を考えているうちにたどり着いたこじつけくさい仮説です。シンカーシステムでアペイリアと自身を繋げたとか言ってましたがこれ自体は何をどうやってああなったのかよく分からず、シンカーシステムは脳(意識)を複製するものだという事実にたどり着いただけでした。ですがここで考えて見たところ、シンカーシステムにアペイリアをつなげていたのならアペイリアのスワンプマンを作ることが可能なんじゃないかと思いました。そしてカジノのエンクロージャーといえば、サード(おそらくノーマルステージ)にログインすることでセカンドで死んだ際戻って来れるのです。だとするなら零一に刺されたはずのシンカーは生きていて、アペイリアの複製データを持っています。そしてアペイリアが遺伝子情報は同じだけれどもシンカーと零一を識別しているのと同様に、ファーストの管理システムはアペイリアとそのスワンプマンを識別しているのではないでしょうか。ということは「アペイリアの生存」は起きず、タイムリープを避けることも可能なはずです。シンカーは上手く出し抜いて、アペイリアのスワンプマンを作って何かをしたかったんでしょうか。






銀色、遥か_瑞羽√感想

2019-02-16 11:41:13 | エロゲ感想


このゲームについて

 雪月に続いて二人目の攻略でしたが、『銀色、遥か』がだいたいどんな感じのエロゲか少しずつ分かり始めてきました。今回は二人分見て共通することというか、二人分見て、雰囲気がどんな感じか書いておこうと思います。

 まず中学生編では、えっちなしでひたすらイチャイチャするピュアな恋愛を体験できます。うぶなヒロインを見れます。
学園編では、えっちを覚え、若さゆえかひたすらセックスに励みます。そして学園編は起承転結の「承」の部分に位置するのかこの編の結びは弱いです。
 そしてアフター編では少し落ち着いてラブラブの同棲生活が始まります。恋から愛に変わるというかヒロインとの生活も穏やかなものになっていきます。一方でヒロインにとっての集大成、何かしらの成功はこの編で達成されるはずで、主人公はそれを支える立場として精一杯応援していきます。何ていうかこれら全ての編の中で、絶妙に変化していくヒロインと、失敗も成功も色々な経験を通して一緒に人生を歩んでいくというのが、このエロゲ独特の雰囲気を出しているのだと思います。そして毎回アフター編の最後の方で今までのヒロインとの思い出を振り返って泣かされます。

瑞羽について
一つ年上の幼馴染のお姉さんでフィギュアスケート選手です。
はじめ、色々世話を焼いてくれるお姉さんのようでしたが、実は根は子供っぽくて、甘えてくる時のギャップが最高でした。
あと瑞ねぇはえっちなことを無自覚に平然とやってのけるところがあって、そこが良くて、その後気づいて恥ずかしくなったりするのがまた可愛かったです。








※この先ネタバレあり(ストーリーに触れるよ)









ストーリーに関して



・中学生編
 中学生編とはいっても瑞ねぇとは小学生の頃から仲良しだったので、ちょくちょく過去の話が絡んできます。例えば、はじめ瑞ねぇは内気な性格だったことや、仲良くするうちに、お姉さんぶろうとし始めたこと、はじめは雪兎がスケートを教えたことなど。そんな過去話の中で、一番グッときたのは瑞羽が初めて金メダルを勝ち取ったときの話です。雪兎は、小学生ながらもなけなしのお小遣いを振り絞り、瑞羽の応援にピンクのバラを一本だけなんとか手に入れてプレゼントして、瑞羽もその気持ちに答えようと雪兎に喜んでもらいたくて頑張り、トライカップという子供のフィギアスケートの大会で一位をとります。この話の何が良かったかというと、もちろんこれだけでも心が暖まる話なのですが、後々まで話が広がっていくところです。フィギュアの大会で一位を取って帰って来ましたが、雪兎はあまり喜んでくれませんでした。雪兎は両親の離婚が決まってしまい自分のせいだと落ち込んでいました。瑞羽は雪兎を元気づけて彼の笑顔のため、フィギュアにより力を入れるようになり、一方、雪兎は、他人に気を使ってばかりで献身的になり、いつしか自分本位の笑顔を忘れてしまう。中学生になった雪兎は気を遣う自分を悲しむ人がいると、自らの幸せを喜んでくれる人がいると気付き、自分の嬉しそうにしない冷めた雰囲気が瑞羽に負担をかけていたと知ります。アイスリンクでそのことを瑞羽に打ち明けて、その後、お互いのしたいことを交互に言っていくわけですが、この青春してるなぁっていう雰囲気に感動しました。
 たしかアリサが出てきてやきもちを焼く瑞ねぇを見れるのがこの章で、あととうもろこしを焼いて食べさせてくれるのもこの章です。アリサが隣にいて、ツンツンしてる瑞ねぇも、精一杯甘やかしてくれる瑞ねぇも最高でした。いい子いい子してくれたり、添い寝したり、頭なでたりしてくれる瑞ねぇにはバブみがたくさんあり、たくさんオギャりました。あと瑞ねぇの鈍感なところというか、匂いが落ち着くといったり、撫でてくれたり距離感がすごく近いのに恋心に無自覚だったり、逆に付き合いだしてから散々甘えていたのにお姉さんでいられていると思ってたりするところが微笑ましかったです。幼馴染以上恋人未満の関係を思う存分楽しませていただきました。
中学生編最高です。一番良かった章でした。唯一の心残りがあるとすれば小学生編がなかったことで、小学生の瑞ねぇに更なるバブみを探求したいところであります。



・学園編

足を怪我してしまった瑞ねぇが復帰するまで支える話。リハビリとかストレッチとかあと栄養バランスのいい食事などを作って瑞ねぇをサポートします。
正直えっちしまくったことと瑞ねぇのアナル開発したことくらいしか覚えてないです。あとイチャイチャもしました。
食事管理ノートという名の生理周期表を完成させたのは驚きでした。



これをためらいなく無自覚にいって、後から恥ずかしくなる瑞ねぇが可愛かったです。

終始イチャイチャギシギシアンアンラブラブしていたのがこの章だったと思います。



・アフター編

 復帰が晴れ晴れしく決まり、瑞羽はいよいよ満を持してオリンピックに参戦。しかし前プログラムのアリサの演技に圧倒され、足がすくみ、結果がふるうことはありませんでした。そんなどんよりとしたスタートをきるわけですが、二人の半同棲生活は絶好調でありまして、一緒にご飯を食べてキスをして、一緒にお風呂に入ってはキスをして、一緒にお布団に入ってキスをして、そして目が覚めて見つめ合って今日もまたキスをする、そんなラブラブな生活を送っておりました。ここから四年次の幌路オリンピックまでがアフター編のお話です。大人になったけど相変わらず子供っぽい一面で甘えてくる瑞ねぇが可愛かったです。あと酔った瑞ねぇも良かったです。



 大会とは関係なくイベントで演技を披露することになるのですが、この時の衣装がウエディングドレスのようで、「婚期が遅れる」と瑞ねぇは落ち込んでいました。そこで雪兎がこのイベントに合わせてプロポーズします。このシーン語彙力が吹き飛ぶくらい凄い感動しました。なんといってもリンクに舞う花びらがピンクのバラなんですよね。昔、最初にプレゼントした花で、しかもウエディングドレスで滑るイベントに合わせてプロポーズを決めるところロマンチックで泣けてしまいました。


 
そしてお涙イベントはこれだけでは終わりません。その後、これではアリサに勝てないってことで、幌路オリンピックの二ヶ月前にプログラムを急遽変更するわけでして、他のワンルームメンバーも手伝って新たなプログラムと衣装を完成させます。当然優勝するだろうと予想ができていたのですが、結局泣かされました。最初、オリンピックのプログラムのシーンがあるのかと思っていたのですがそうではなかったのです。瑞ねぇ演技の直前で集中するため今までのことを振り返っていきます。

 広がる、白銀……
 見渡す限り銀色で……私以外には、誰もいない……
 けど、寂しさや不安は欠片もない……
 確かに感じる温もり……
 すごく、温かい……
 私は、1人じゃない……
 私のスケートには……みんなとすごした日々がある……
 そして、幼なじみとして……お友達として……恋人として……婚約者として……雪兎と歩んできた、1本のラインがある……
 遠い昔から今……そして、遥か明日へと繋がっていく、1本のライン……
 私だけの、羽……
 苦しかったことも、悲しかったことも、楽しかったことも、嬉しかったことも……
 共に歩んできた、仲間がいる……私を応援してくれる、たくさんの人たちがいる……
 今度は、はっきりと見渡せる……
 ここは、幸せで満ちあふれている……
 ようやく、ここまでこられたんだ……
 遥かにあった、世界へ……
 銀色に輝く、世界へ……

 瑞羽の想いはこうだったんだとか、タイトル回収しているところに感心していたりしているといつの間にか、EDが始まりスタッフロールが流れ始めます。そしてダイジェストで今までのたくさんの思い出を振り返えっていきます。
そしてスタッフロールの一番最後に見事に泣かされました。もう今までの頑張りとか、一番初めに金メダルとったときのこととか色んな出来事が思い浮かんできて、しかも不意をつかれたので思わず涙腺が崩れてしまいました。ほんとに良かった。瑞ねぇおめでとう!!




考察とまとめ



 アリサというと、ピンク髪でツインテールで、ところどころロシア語を混ぜてくるような女子フィギュア界の絶対女王でキャラが立っていましたが、サブヒロインで、むしろサブヒロインというのが不自然なまででした。彼女の経歴を追っていくと、人付き合いが苦手だった頃に母親に連れられてスケートを始めたようです。そしてただ滑っているうちに才能を認められ、大人たちの言われるがままにフィギュアスケート選手になりました。そして彼女は勝ち続けた。しかし彼女にとってスケートは楽しいものだったのでしょうか。ただただアイスリンクで滑って、勝って、勝ち続けるうちに勝つのに慣れて喜びは消えていったのではないかとどうしても思ってしまいます。
アリサと瑞羽の掛け合いのシーンで、一番印象深かったのが、アリサが瑞羽に引退宣言するときのシーンです。
瑞羽「なにを弱気になってるのかしらないけど、勝ち逃げは許さないんだから」
アリサ「弱気…?ふふ」
アリサ「弱気というのは、弱さを見せられる相手がいるからこそ、成り立つ」
   「私に、弱気という言葉は、存在しない」
   「世界女王は、常に上だけを見つめていなければならない。夜空に輝く星を掴むように、遥か遠くを目指して」

 絶対的な強者は、誰もついて来られないような先頭をただ一人一番初めに歩まなくてはならないのである。
 彼女は孤独であった、いや孤高と言ったほうがいいかもしれない。孤独というのはどんな体験をも寂しくつまらないものにしてしまうと何かの本で読んだことがありますが、孤高というのも似たような状況なのかもしれません。むしろ優れている部分が役にたってないぶんやるせないというかそういう考えもあります。
 
 結局のところアリサはフィギュアスケートに疲れたのか、飽きていたのかそういう状況だったのだと思います。とはいっても引退宣言をしたのは、瑞羽を焚きつける目的があったようですが。彼女は瑞羽だけが自分と渡り合える近しい存在だと思っていたのでしょう。たった一度きり瑞羽に打ち負かされた。しかしそれは彼女が抱いた感情は、負けた悔しさとかではなくて、憧れでした。トライカップで瑞羽が優勝したとき、アリサは瑞羽の内側に自分にはない特別なものを感じていおり、嬉しさとか楽しさを与えてくれるそれを彼女はずっと求め続けていたのです。もちろんそれの正体は雪兎をはじめとした支えてくれる人間の存在でしょう。そしてそういった応援してくれる人たちの気持ちに応え喜びを分かち合えるのが瑞羽なのだと思います。実力で勝利し続けてきたアリサにとって、支えてくれる人間は必要なかったので、孤高におちいり苦しみも喜びも語られないままトップに君臨し続けたのでした。そんな彼女は弱気になることはなかったけれど、大切な人と支え合う瑞羽をうらやましく思う気持ちはきっとあったのだと思います。あるいはもしかしたらありえたかもしれない自分の姿を、瑞羽に重ねていたのかもしれません。
 考えれば考えるほどアリサが可哀想になってくるのですが、幌路オリンピックで瑞羽と渡り合えたことで一応は救済されたのだと思ってます。

 瑞羽√のテーマみたいなものはおそらく『孤独との戦い』だと思っております。
瑞羽はアリサのプログラムに圧倒され、中国の五輪では結果はふるいません。そのことを彼女はアリサに負けたのではなく、自分自身に負けたのだと言います。フィギュアスケートではアイスリンクの上でたった一人で滑ります。リンク上には応援してくれる人も、一緒に競争する人もいません。そんな中で不安や緊張が生じるのは無理のないことだと思います。
 瑞羽が中学生の頃、ヴィルヴァルディの「冬」をプログラムに取り入れています。この曲自体冷たくて何も寄せ付けないような雰囲気があります。そしてそんなこの曲が象徴するかのように、彼女は雪兎の笑顔のためにがんばりますが一人よがりで空回りが続きます。足の怪我から復帰したときはリンク上を滑ることすら難しくなってしまいます。中国でのオリンピックでは雪兎すら応援に来ないまま、アリサに圧倒され、上手く滑れませんでした。
 そんな瑞羽を支えたのが雪兎たちでした。足のリハビリを手伝い、食事をサポートし、怪我のトラウマの克服を手助けし、落ち込んだ時は慰め、そしてみんなで衣装と音楽を用意して応援しました。瑞羽はたった一人では気弱だったのかもしれませんが、自分を支えてくれた仲間たちとの思い出を元に孤独を克服したのだと思います。弱さとは言いますが、だからこそ支えてくれる人がいて、辛さも嬉しさも共有してきた人がいるからこそ、そんな人のことを想って力を出すことができることは素晴らしいと思います。この強さの源を考えると、弱さというのは案外かけがえのないものなのかもしれません。そして、たった一人冷たいアイスリンクの上、銀色に遥か続く世界で、心を暖めてくれるものは、大切にしてきた人との思い出なのだと知りました。しかし同時にこの寒さとか孤独があるからこそ、思い出がより暖かく感じるのだとも思いました。




銀色、遥か_雪月√感想

2019-02-07 14:56:43 | エロゲ感想


このゲームについて
個別√の感想ブログでゲーム紹介するのはどうかと思いますが、一応この感想からこのゲームに興味をもってくれる人が居るかも知れないので、念のため手短に紹介しようと思います。

このエロゲは、中学生編、高校生編、アフター編の3つの時期の物語で構成されていまして、つまり中学から成人までヒロインとイチャイチャできるエロゲになります。当然、3つシナリオがあるのだからボリュームも普通のエロゲの3倍なわけで、したがってえちシーンも3倍です。けれど残念ながら中学生編にえちシーンはありません。その分、高校生編の量が多めのようです。
実際プレイしてみたところ、だいたい一人分のシナリオでもエロゲ一本分あったかもしれないと思える程です。それでもグラフィックの質が落ちることがなかったし、それがヒロイン五人分あると考えるとすごいです

雪月について
内気で甘えん坊な妹で頑張り屋さんです。アフター編まであるのでそうはいっても少しずつ成長していき、性格も少しずつ変わっていきます。もちろん変わらない部分もあって、この二つを見ていると何ていうか微笑ましい気持ちになりました。
リドルジョーカーの七海ちゃんに声が似ているなと思ったら、同じ声優のくすはらゆいさんが声を当てているようです










※これから先ネタバレ入ります。(ネタバレダメな方はブラウザバックしてね)







ストーリーに関して

・中学生編

 この頃の、雪月ちゃんはとても内気で兄妹の関係もどこかぎこちないものでした。恥ずかしがり屋で、「お兄ちゃん」の一言がなかなか言えなかったのです。そんな中「ワンルーム教室」という学年の関係ない授業(レクリエーション)で自分の番でお菓子作りをします。その後もほかのメンバーと一緒にいるうちに、「お兄ちゃん」と呼べるようになりました。そしてそれ以来、お兄ちゃんと呼べるようになったことが嬉しかったのか、もともと思うところがあったのか、「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と甘えてくるようになりました。この時の雪月ちゃんが無邪気でホント可愛くって思わずニヤニヤしました。雪月ちゃんと添い寝して、朝起こされて、休日に二人でスイーツを食べに出かけ、一緒にお風呂にだって入りました。もちろん水着がありましたが。

 そういうわけであまあまベタベタな生活を送っていたわけですが、ずっとは続きませんでした。雪兎(主人公)と雪月は中学生です。次第に雪兎は雪月との性の違いを実感するようになっていきます。彼は雪月に異性として惹かれはじめ、けれどそれと同時にこのままでは雪月の兄としていられなくなると強く思うようになります。その結果、雪月に対してよそよそしくなり、彼は全寮制の男子校に入学しようとします。それを秘密にしていたが、雪月にバレてしまい、、、

追いかけた先、テレビ塔での告白、雪月の想いが伝わってきて心を揺さぶられるシーンでした。挿入歌もあり全編通しても一番いいシーンだったと思います。



・高校生編



無事に仲直りを果たして、同じ高校に進学します。雪月中学生編から背と髪が伸びてスラッとしていて感動しました。

 他のワンルームメンバーも同じ高校集まってきて、料理部を立て直します。雪月ちゃんの死別した父がパティシエだったこともあり、彼女はお菓子作りに本腰を入れ始めます。もともと料理部は廃部が決まっており部員がいなかったので実質ワンルームメンバーのみです。そしてお菓子作りを指導するのが雪月ちゃんになります。料理部に入った後、他のメンバーと試しにお菓子を作ってみたり、瑞羽先輩のお見舞いのために作ったり、文化祭の出し物として作ったりします。
 
 あれこれと料理部で作るのですが、お菓子を作っていることを母親に伝えていません。死別した父に関して母を気遣ったからです。けれどやがて彼女は母親に伝える決意をします。ここら辺雪月ちゃんの成長を実感できて嬉しかったです。あの内気で恥ずかしがりだった雪月ちゃんが、料理部での活動を通して、自信とか勇気を手に入れたのだと思うとほっこりします。こうしてクリスマスの日、母に父が作ってくれたお菓子をご馳走し、料理部でお菓子を作っていたこととパティシエになりたいことを打ち明けました。母は笑って受け入れてくれました。このシーン心が温まるような感じがして嬉しかったです。

ちなみに雪月ちゃんが高校生になるとえちするようになります。高校生編はとくにえちシーンが豊富です。もうヤリまくりでコンドームをきらしてしまうほどです。



・アフター編



二人は社会人になり、雪兎は広告会社、雪月はパティシエ見習いとして働いていました。雪兎は、イタリアンスイーツ特集の企画で評価を上げ、なんとイタリアに出向しないかと打診されます。一方雪月もイタリアに海外研修にいかないかという話を持ち出され、二人は奇妙な偶然により、一緒にイタリアに向かうことになります。こうして二人のローマでの同棲、もとい新婚生活が始まりました。
 雪月の父もまたイタリアで海外研修を受けており、ローマで開かれるパティシエコンテストで優勝しています。そしてインタビューでパティシエのことを魔法使いだと言っていました。お菓子で人を笑顔にする。そんな笑顔の魔法を使えるのがパティシエだと。
 雪月の研修先は、実は雪月の父の研修先でもありました。この父の師匠にあたる人チェーザレさんは、お菓子作りにおいて「ジョイア」つまり「喜び」とか「楽しみ」を大事にする人で、父の「笑顔の魔法」というのはそういうのを継承しているんだなぁと思いました。

 話に戻りますと、雪月はもちろんこのことを知っていたので、海外研修を頑張りながら、コンテストで優勝を目指します。一生懸命、仕事が終わった後もお菓子作りの練習を続けて頑張ります。頑張りすぎてチェーザレさんに休みを出されるほどです。この休日に雛多が遊びに来て、高校時代のように一緒にお菓子作りをします。そして雪月は研修でお菓子作りについて全然楽しんでいないことに気付きます。そして父の「笑顔の魔法」を思い出しました。あるいは「ジョイア」だったのかもしれません。
 そういうわけでお菓子作りの楽しさを学び、万全を期してコンテストに参加しました。しかしハプニングは起きました。隣の参加者が間違えて、雪月のお菓子に必要な部分を冷蔵庫に入れてしまいます。それが冷蔵庫に入れられ、台無しになってしまい、時間のない中、雪月は慌て、ミスが目立ち始めます。
 そこに雪兎が登場し励まします。
「パティシエは、パティシエールは魔法使いなんだ」
「楽しんで作ったお菓子は、食べた人を笑顔にできる、、、それは凄い事だ」
「文字通り魔法だよ。言葉さえ必要ない笑顔の元なんだからさ」
「まずは自分が楽しもう!雪月の笑顔を、みんなに分けてやろうぜ!」
このシーンはほんとかっこよかったです。

その後落ち着きを取り戻した雪月は、発想を変えて見事優勝を果たします。

日本に帰ってきてから、雪兎の会社はイタリアスイーツの老舗に気に入られ、雪月の活躍もあり日本でイタリアスイーツは流行りだし順風満帆に物語は終わりを迎えます。
 最後に二人で開業することになり過去を振り返るシーンで鳥肌が立ちました。雪月ちゃんと過ごした日々が確かにあったのだと思い返してみると泣けそうになりました。色んな楽しかった出来事、小さい頃からの思い出を共有できたことが心地よかったです。他のエロゲでも幼馴染や妹だったり、小さい頃から一緒にいた設定のヒロインはいますが、その細部は語られないままだったり、回想シーンという挿入だったりして、共に過ごしてきたかどうかいまいち実感が沸かなかったりするのですが、雪月ちゃんとは、確かに色んなことを一緒にしたとそう思い出せて、かけがえのないものと思えてくるのです。今回プレイしたのは一人目のヒロインですが、銀はるでは他のヒロインも同じように思えるでしょうか。だとしたらそこが銀はるの一番気に入った点になりそうで今後が楽しみです^^。



考察とまとめ

雪月「でも、きっとみんなが嬉しくなるのは、一番最初に見た初雪だと思うんです」
雪月「雪景色は、綺麗ですけど、それは一番最後に振った雪です」
ぎこちない関係から打ち解けていった中学生編、一緒に学園生活を楽しんだ高校生編、そして一緒に過ごす時間が少なくなったアフター編。大人になって仕事ばかりになって、途中頑張りすぎて先が見えなくなったりもするけれど、それでも過去には色んな楽しい思い出があった。一緒に過ごしてきた仲間に久しぶりに会ったら懐かしくて嬉しかった。楽しさとは今日ここ最近の出来事ではなくて、雪が降り積もるように何回も繰り返し育まれてきたものだった。
そう考えてみると、雪月ちゃんのこのセリフ奥が深いなと思いました(初見で気付かなかったけど)。そして今まで中学生編、高校生編とそれぞれで完結している風に思っていたのですが、全編ちゃんと繋がってることに気付き感動しました。

高校生編でまりあ様以下のようにおっしゃってます。
雪兎「いや…大人って思ってたより楽しそうだなって」
まりあ「当たり前でしょ」
まりあ「私たちがつまらなそうにしていたら、子供たちに夢がないじゃない」
まりあ「大人は子供以上に笑うものなのよ」
このセリフアフター編の雪月にぴったりだと思いませんか?
夢追い人だった雪月はコンテストの日、自分も楽しんで周りの人も笑顔にした。夢を叶える人から夢を与える人へ。魔法使いになるということは案外大人になることに似ているのかもしれません。

色んな嬉しいことがあって、楽しい思い出がたくさん出来て、笑顔の魔法使いになった。そんな彼女はきっとこれから幸せを与えてくれるでしょう。