「死にたい」ではなく、「消えたい」。
過酷な被虐経験により、特定他者への愛着、一般他者への信頼、そして、他者の期待の充足による、他者を鏡とした自己承認等々、これらによる社会性をはく奪され続けた人々の苦悩はあまりに重い。
生物として生きていても、社会的に死んでいる、この状態に人間が陥る要因は、被虐経験だけではない。本書に収められた苦悩の数々から、わたしたちは、その怖ろしい深淵をのぞきこむことができる。
精神科医である著者は、虐待された人たちが「死にたい」ではなく「消えたい」という表現で「自殺への欲求」を語ることに気付いた。そこには、前提となる「生きたい」がないのだ。彼らがどのように育ち、生き延びて、どんな苦しみを背負っているのかを、丁寧にたどる。そして、立ち直っていった経緯を明らかにする中で、人間の存在の不思議さと、幸せの意味に迫る。
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