桜井亜美,2003,クロム・ハート,幻冬舎.(8.21.24)
本当のあたしなんて、何の価値もない―。家でも学校でも自分を殺して優等生を演じる十七歳の憧子。自分とは対照的に奔放なクラスメート宙へ想いを寄せていたが、宙が親子ほど歳の離れた女とホテルに入るのを目撃してしまう…。憧子はどんなに傷ついても錆びない心=クロム・ハートを手にすることができるのか!?文庫書き下ろし最新小説。
桜井作品のなかでもとびっきり秀逸な作品。
そりゃ、自己嫌悪にさいなまれるわなと納得する、主人公の憧子の狭小、卑俗な感情と、卑劣な振る舞い。
それに振り回されて心身を傷つけられる人びと。
場面がめまぐるしく展開し、ノンストップでスリリングなストーリーが疾走する。
近年ヒットした小説群がみな凡庸に思えてしまう、そんなスゴい作品だ。
桜井亜美,2000,LOVE ASH,幻冬舎.(8.21.24)
幼い頃、両親に捨てられた大学生・響は、暗い部屋に閉じこもり、疎外感に苦悩している。インターネット上で知り合った人妻・ミルクとのセックスに癒しを求めるが、彼女を一人の人間として受け止めることはできない。ある日、行方不明になっていた恋人マシュリと再会した響は、自らの隠れた才能に気付かされる…。文庫書き下ろし小説。
本作品の主人公は、男子大学生。
美形でピュアな主人公、響の人物造形がすばらしい。
懐かしさと切なさと、その両方を味わわせてくれる佳作。