見出し画像

本と音楽とねこと

思考のフロンティア 社会

市野川容孝,2006,思考のフロンティア 社会,岩波書店.(7.8.2021)

 本書では、政党政治における「社会的なるもの」の衰滅を起点として、議論が展開されている。
 マーガレット・サッチャーは、1987年、Woman's Own誌のインタビューにて、「社会など存在しない」と断言した。この威勢の良い宣言は、自己成就する予言のごとく、イギリスのみならず、アメリカ合衆国、日本等で現実化した。
 市野川さんが指摘するとおり、日本では、1940年ごろ、一度、「社会」は消失している。当時あったのは、厚生、国家、天皇、臣民、たったこれだけであった。
 「社会」を復権できるとすれば、それは、「租税国家」を基盤とし、ロールズの「無知のヴェール」を根拠として、分配的正義を実現していくことによるほかないであろう。
 わたしも、この立論に全面的に賛同する。

今日の社会科学にとって重要な問いは、「社会とは何か」「それはいかにして可能か」という抽象的な問いではない。ある歴史性をもって誕生し、この問い自身が不可視にしてしまう「社会的」という概念を問題化することである。本書では、この概念の形成過程を辿り直し、福祉国家の現在を照射することから、「社会的なもの」の再編を試みる。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「本」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事