岸田秀さんの『ものぐさ精神分析』シリーズは、高校生のときに夢中になって読んだ。その何巻目かの本の帯に「快刀乱麻を断つごとく」とあったのを記憶しているが、当時、そのスピード感あふれるスリリングな筆致と、国家をも精神分析の対象とする独創的な発想とに魅了されたものだ。
その岸田さん、これは最後の著作だそうで、これは読まないわけにはいかない。
さすがに歳をとられたせいか、かつての畳みかけるような筆致はかげをひそめてはいるが、唯幻論のおおもととなった個人史が詳細に書かれていて、たいへん興味深かった。
岸田唯幻論の入門書としておおいにお勧めしたい。
一九七七年に『ものぐさ精神分析』として出版されて以来、熱狂的な支持と一部の反対・批判にもさらされてきた「唯幻論」。この独創的な理論はどのような道筋をたどって生まれたのか。「なぜセックスしない男女関係こそ“清らか”と考えていたのか」「なぜ日本兵の死体の写真を見ると、ひどいショックを受けるのか」著者のあくまで個人的な疑問点から構築されたのが「性的唯幻論」であり「史的唯幻論」だった。そこには、著者が子供時代に経験した母親からの過度な期待と、それにともなう強迫観念が澱のように横たわっていた―。著者が「人生最後の本」として唯幻論の一部始終を総括した本。
目次
第1章 性的唯幻論と史的唯幻論
第2章 わたしの略歴
第3章 偽りの理想的母親像
第4章 強迫観念から生まれた性的唯幻論
第5章 現実感覚の不全
第6章 でっちあげられた「天孫降臨神話」
第7章 善意の加害行為
第8章 消えた我が家
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