宇沢弘文,2013,経済学は人びとを幸福にできるか,東洋経済新報社.(6.7.24)
学生時代に読んだ、宇沢先生の『自動車の社会的費用』には、大いに啓発された。
その後も、先生の社会的共通資本の議論には学ぶところが大であった。
社会的共通資本の考えを取り込んだ、ライフスタイルについての研究論文を書いたこともある。
本書は、講演録、エッセイ、書評の寄せ集めであるが、宇沢経済学の輪郭がおぼろげながら把握できる内容となっている。
「認知的不協和の理論」で知られるレオン・フェスティンガーは、宇沢先生の畏友であるが、彼が、自らの理論がベトコンの拷問に活用されていることを知り、スタンフォード大を辞し、家族とも離ればなれとなった話をはじめとして、ベトナム戦争で傷つき、人生を狂わされた人びとの話がこころにしみ入る。
2003年刊の底本『経済学と人間の心』(四六版上製)の新装版。
著者は市場メカニズムや効率性の重視に偏った考え方を批判し、人間の尊厳や自由を大切にした経済社会の構築を訴えてきました。
実際、2000年代後半のリーマン・ショックや世界経済危機を経て、「人間が中心の経済」という思想はますます輝きを増しています。同時に、幸福な経済社会を作るうえで、経済学がどのような役割を果たせるかという議論が巻き起こっています。
新装版では底本の構成をガラリと変え、未公開の講演録2本を追加しました。さらにジャーナリストの池上彰氏が「『人間のための経済学』を追究する学者・宇沢弘文」と題して、解説を加えています。
ノーベル経済学賞候補と言われた世界的な知の巨人・宇沢弘文氏が、温かい言葉でその思想を語った、珠玉のエッセイ集です。
「人間のための経済学」を追究する学者・宇沢弘文--新装版に寄せて
ジャーナリスト・東京工業大学教授 池上彰
第1部 市場原理主義の末路
第2部 右傾化する日本への危惧
第3部 60年代アメリカ--激動する社会と研究者仲間たち
第4部 学びの場の再生
第5部 地球環境問題への視座