「銀河鉄道の夜」と「千と千尋の神隠し」のストーリーが、どう「超高齢社会の乗り越え方」につながるのか、よくわからなかったが、エイジズムへの批判には共鳴した。
本書の読みどころは、介護保険の功罪について、制度成立以前の「住民参加型在宅福祉サービス」が、制度成立以降の介護NPOの活動に変質していく過程を振り返りながら、検証しているくだりにある。
介護保険サービス利用対象者の絞り込み(要支援判定の高齢者の制度からの切り捨て)、介護報酬の操作によるホームヘルプサービスの利用抑制は、「脱施設」、「可能な限り住みなれた自宅と地域での生活を」という、介護保険創設時の理念を否定するものだ。介護保険において、現物給付だけではなく、現金給付による介護NPOの(ホームヘルプサービス)活用を提案している点については、慧眼だと思う。
「銀河鉄道の夜」に導かれて超高齢社会の悲観論を超える。いま、出口の見えない社会を生きてゆくための正しい選択肢はひとつではなく、無数にある。考え方を方向転換すべき時代の中で、介護福祉の近未来像を提示する力作。
目次
序 「銀河鉄道の夜」と私たち―超高齢社会の行方
1 日本の介護福祉は成功か失敗か
介護保険のパラドクス―成功なのに失敗?
介護を超える“介護”はどこにあるか
グローバル資本主義の中の非営利―その意外な可能性
2 災害と福祉そして非営利の復元力
日本の非営利、アメリカの非営利
災害時における社会福祉法人やNPOの役割は何か
3 日本の超高齢社会はどこへ向かうか
日本の社会保障を不安定にしているもの
介護保険と非営利はどこへ向かうか
超高齢社会の乗り越え方―エイジズムにどう対抗するか
結
「千と千尋の神隠し」はどんな解を見つけたか?
最新の画像もっと見る
最近の「本」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事