先日、長野から帰る時はもう日が暮れてからだった。
ナビゲーション通りに走っていくが、一体どこをどう通っているのか車一台も走っていない農道を通らされたりで少々不安になる。
試しに車のライトを消すと辺りは一寸の闇という状況の中、次第に雨が降って来た。
闇の中を疑心暗鬼で進んでいくと、車はやっとまともな一般道へ差し掛かったが、そこから降ったり昇ったりする山道が続く。
カーブを幾つか曲がったところで、峠の途中のちょっとした脇のスペースにライトグリーンの車が一台とまっていた。
しかもその車のすぐ後ろに、これまたライトグリーンのテントが密やかに設営されていた。
はて?何故こんな場所で?
峠を通り過ぎる一瞬だったが、車のハンドルを握っている相棒も疑問が生じる。
「なぜ、こんな所でしかも悪天候なのにテントを張る必要があるのか?」
「車が有るのなら適切なテント場所で設営し、もしこの峠に目的があるのならば次の日にでも車で来ればいいではないか」
「仮にこの峠で天体観測にしては木が生い茂っていて見づらい場所であるし、いや夜行生物の観測か?」
「そんなんじゃなく都会から真の闇を求めに来たか、一服変わった峠マニアか、それとも...。」
色々考えたが、納得のいく答えは出なかった。
ただ単にそこは、悪天候な上に真っ暗闇で、直ぐにでも通過してしまいたい寂寥とした峠に過ぎないのだ。
標高を落とすと霧が出てきて、結局そのテント事情も有耶無耶に霞んでいった。
そして峠を越え、長いワインディングロードを降り切るとやっと街の明かりが見え、少し心が弛緩するんであった。
峠と言えば、三浦綾子さんの『塩狩峠』を読んだ。
かなり古い作品であったが、そう言えば前に『泥流地帯』も読んでいた事を思い出した。
どちらも生と死について考えさせる。
それと、真保裕一の『奇跡の人』、高村薫の『マークスの山』、その他数冊。
中でも『マークスの山』は面白かった。
最初は冒険モノかと手に取ったのだが、これはバリバリ刑事モノで現実的な描写が良かった。
他の作品も是非読んでみたいと思った。
秋の夜は長いからね。
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