安全保障関連法が19日未明、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決され、成立した。民主党など野党5党は18日、安倍内閣不信任決議案の提出などで採決に抵抗したが、自民、公明両党は否決して押し切った。自衛隊の海外での武力行使に道を開く法案の内容が憲法違反と指摘される中、この日も全国で法案反対のデモが行われた。
同法採決のための参院本会議は19日午前0時すぎに開かれ、同2時に採決が始まった。
同法を審議してきた17日の参院特別委員会で採決が混乱し、野党側は無効だと指摘したが、鴻池祥肇(よしただ)委員長は本会議の冒頭、「採決の結果、原案通り可決すべきものと決定した」と報告した。その後、各党が同法に賛成、反対の立場から討論。民主の福山哲郎氏は「昨日の暴力的な強行採決は無効だ。法案が違憲かどうかは明白で、集団的自衛権の行使は戦争に参加することだ」と主張。一方、自民の石井準一氏は「限定的な集団的自衛権の行使を可能にすることで日米同盟がより強固になり、戦争を未然に防ぎ、我が国の安全を確実なものにする」と反論した。各党の討論後、採決が行われ自民、公明両党などが賛成し、可決、成立した。
安保関連法の採決を阻もうと、野党は抵抗を続けた。民主は17日夜から18日午後にかけ、参院に中谷元・防衛相の問責決議案などを相次いで提出した。決議案はいずれも与党などの反対多数で否決された。また、民主党、維新の党、共産党、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちの5党は18日、内閣不信任決議案を衆院に共同提案したが、否決された。
安保関連法は、改正武力攻撃事態法、改正周辺事態法(重要影響事態法に名称変更)など10本を一括した「平和安全法制整備法」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる恒久法「国際平和支援法」の2本立て。「日本の平和と安全」に関するものと「世界の平和と安全」に関係するものにわかれる。
「日本の平和と安全」については、改正武力攻撃事態法に集団的自衛権の行使要件として「存立危機事態」を新設した。日本が直接、武力攻撃を受けていなくても、日本と密接な関係にある他国が武力攻撃されて日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態で、他に適当な手段がない場合に限り、自衛隊が武力行使できるようにする。
また、朝鮮半島有事を念頭に自衛隊が米軍を後方支援するための「周辺事態法」は「重要影響事態法」に変わる。「日本周辺」という事実上の地理的制限をなくし、世界中に自衛隊を派遣できるようにした。後方支援の対象は、米軍以外の外国軍にも広げる。
「世界の平和と安全」では国際平和支援法で、国際社会の平和と安全などの目的を掲げて戦争している他国軍を、いつでも自衛隊が後方支援できるようにする。この際、国会の事前承認が例外なく義務づけられる。これまでは自衛隊派遣のたびに国会で特別措置法を作ってきた。
国連平和維持活動(PKO)協力法も改正。PKOで実施できる業務を「駆けつけ警護」などへ拡大。自らの防衛のためだけに認められている武器使用の基準も緩める。
安保関連法は、安倍内閣が5月15日に国会に提出。衆院特別委で約116時間の審議を経て、7月16日に衆院を通過。参院特別委では約100時間審議された。
安倍首相は19日未明、同法成立を受け、首相官邸で記者団に「必要な法的基盤が整備された。今後も積極的な平和外交を推進し、万が一への備えに万全を期していきたい」と述べた。
朝日新聞社 <ヤフーニュースより転記>
立憲主義が崩壊した日。 平和主義が終わる?。