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日本の憲法 Vol.30 公務員の政治活動禁止は憲法21条に違反しないか?(猿払事件)

2017年10月09日 | Weblog


北海道猿払村で郵政事務官をしていたX氏は、衆議院選挙に際し労働組合の北海道猿払地区協議会の決定に従って、日本社会党の候補者の選挙用ポスターを自ら掲示したり、掲示を依頼して配布したとして、国家公務員法102条1項および人事院規則14-7第6項13号に違反するとして起訴された事件である。

第1審の旭川地方裁判所では、「非管理者である現業公務員でその職務内容が機械的労務の提供に止まるものが勤務時間外に国の施設を利用することなく、かつ職務を利用して、若しくはその公正を害する意図なしで人事院規則14-7、6項13号の行為を行う場合、その弊害は著しく小さいものと考えられる」として、この事件の被告人の所為に、国家公務員法の処罰規定が適用されるのは憲法21条及び31条に違反するとした違憲判決を示し、無罪とした。(旭川地判昭和43年3月25日下刑集10巻3号293頁)

検察側は控訴したが、控訴審でも地裁判決が支持されたため(札幌高判昭和44年6月24日判例時報560号30項)、検察側から上告した。

最高裁は、①立法目的の正当性、②立法目的と規制手段との間の合理的関連性、③禁止によって得られる利益と失われる利益との均衡の3点から検討された。
①「行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼の確保」という立法目的は正当である。
②この目的と「政治的行為」の禁止との間には「合理的な関連性」がある。
③その「禁止によって得られる利益」>「失われる利益」=憲法21条に反せず合憲とした。

判決:破棄自判 被告人は有罪(罰金5,000円) (最大判昭和49年11月6日刑集28巻9号393頁)

☆この猿払判決で長い間、公務員の政治活動が全面禁止ととらえられていたが、国家公務員法違反事件判決(最判平成24年12月7日刑集66巻12号1722頁)で、「公務員の政治的中立性」から「公務員の職務の中立性」に目があてられ、時代の流れとともに憲法に少しずつ沿う形に改められてきている。この事件は後日記載します。



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