エンジョイ・ライフ 『人生楽ありゃ、苦もあるさ!』

「なすべきことをなせ、何があろうとも・・・・・」(トルストイ)

日本の憲法 Vol.23 参議院の緊急集会

2017年09月30日 | Weblog


衆議院が解散されると、参議院は同時に閉会となる。そのために国に緊急事態が起こり国会の議決を要する場合が起きた時、内閣は参議院の緊急集会を開催し対応することができる。

憲法54条2項「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会になる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる」

衆議院の総選挙後み開催される特別国会の召集を待つ余裕がない場合を、「緊急の必要があるとき」ととらえることができる。

また、同上3項には、この緊急集会でとられた措置は臨時のものであって、次の国会開会後10日以内に衆議院の同意を求めなければならないとされ、衆議院の同意がない場合は、将来にむかってその効力を失うと規定している。
そしてこの「同意がない場合」とは、①衆議院が積極的に同意を拒否した場合、②同意がされないまま10日の期間が経過した場合の両者が含まれると解される。

☆衆議院解散中、北朝鮮問題等で緊急集会の召集がないことを祈る日々です。

日本の憲法 Vol.22 衆議院の解散は違憲審査の対象となるか?

2017年09月29日 | Weblog


前号の判例(苫米地事件)の上告審において、衆議院の解散は違憲審査の対象となるかが争点として争われた。(最大判昭和35年6月8日民集14巻7号1206頁)

判決は、「衆議院の解散は違憲審査の対象とならない」と判示し、原告側の上告棄却で原告の敗訴が確定した。

判決文において
「現実に行われた衆議院の解散が、その依処する憲法の条章について適用を誤った故に、法律上無効であるかどうか、これを行うにつき憲法上必要とせられる内閣の助言と承認に瑕疵があったが故に無効であるかどうかのごときことは裁判所の審査権に服しない」
「かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである」
「衆議院の解散は、・・・その国法上の意義は重大であるのみならず、・・・その政治上の意義もまた極めて重大である。すなわち衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であって、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきことは既に前段説示するところによってあきらかである」

☆果たして今回の憲法第7条による衆議院の解散は、主権者たる国民がどうとらえて判断していくのか関心をもって注目をして参りたいと思います。

日本の憲法 Vol.21 判決【 憲法7条のみの衆議院の解散は合憲 】

2017年09月28日 | Weblog


今日9月28日衆議院が「日本国憲法7条により解散」されたが、憲法7条のみの解散が合憲か違憲かを判示した判例があるのでここで書いてみます。

判例(東京高判昭和29年9月22日行裁例集5巻9号2128頁)より
①解散権の所在並びに②解散権行使の要件を下記の通り判示し、憲法7条のみによる解散を合憲とした。

①衆議院を解散し得るものは、主権を有する総体としての国民の外にはあり得ないはずである。憲法7条は、天皇が内閣の助言と承認とによって『国民の為に』為す国事に関する行為の中に『衆議院を解散すること』を挙げているが、その趣旨は憲法1条によって国民の総意に基づき日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であるとされている天皇に、・・・天皇をして政治上の責任を負う内閣の助言と承認の下にこれを行使せしめんとするにあると解する。

②憲法69条は、憲法7条と対立する規定でもなければ、所定の場合に限り解散ができるとする趣旨の規定でもない。解散は変遷する事態を政治的に判断してなされるべきもので、・・・その解散権の行使は法規により一義的に拘束するには不適当な事柄である。その解散が妥当であったか否かの如きは固より裁判所の判断の対象となるものではないとして、衆議院で内閣の不信任決議案の可決も信任決議案の否決もないのに本件解散が行われたかといって、本件解散が憲法に違反するものとはいえない。



日本の憲法 Vol.20 衆議院解散権の根拠

2017年09月27日 | Weblog


憲法7条第3項には、「衆議院を解散すること」を天皇に国事行為として規定しているが、天皇は形式的・儀礼的に外部に向かって解散を宣旨するにすぎないのであって、解散を実質的に決定するのは内閣である。ただし天皇は、国政に関する機能を有せずまた議院内閣制がとられている以上、他の国家機関が解散権を行使することは考え得れないことである。しかし、その憲法上の根拠には下記の3説がある。

第1節:憲法7条第3項により天皇が解散権を有するとしつつ、天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認は、内閣の解散権についての実質的決定権を含むとする説。

第2説:内閣による天皇の国事行為に対する助言と承認は、形式的・儀礼的に対する助言と承認であり、内閣の実質的解散権の根拠は他の憲法規定に求めなければならないとし、内閣の解散についての実質的決定権の憲法上の根拠は、憲法69条以外にないと解し、解散権の行使は69条に限定されるとする説。

第3説:憲法7条解釈については、第2説と同様の立場に立ちながら、解散を69条の場合に限定することは不適当であるとして、議院内閣制、権力分立制、さらには69条の趣旨などを総合的に考慮して内閣の実質的解散権を根拠づける説。

☆第1節が、通説的見解であり能動的解散である。また第2説、第3説は、受動的解散というが、特に第3説が有力に主張されている。

日本の憲法 Vol.19 森川キャサリーン事件

2017年09月25日 | Weblog


VOL.18のマクリーン事件判決で示された通り、外国人の入国の自由が保障されないことから、憲法上の権利としては、在留の権利も保障されないと解される。ただ、在日外国人については、入国の自由自体がそもそも問題にならないことから、在留の権利も当然認められると解される。ここでさらに問題となるのは、再入国の自由の問題であり、これを示されたのが森川キャサリーン事件訴訟である。
☆事件☆
米国人の森川キャサリーンは、日本人と結婚して約9年間日本に居住していた。過去に3度海外渡航のための再入国の許可を得ていたが、1982年に韓国に旅行する計画をたて再入国の許可申請をしたところ、法務大臣が指紋押捺拒否を理由としてこれを不許可とした。
そのためキャサリーンは、この不許可処分取消と国家賠償を求めて裁判を起こした事件である。

☆争点☆
①憲法で外国人に海外旅行の自由は保障されないのか。
②憲法で外国人は再入国の自由は保障されないのか。

☆判決☆(最判平成4年11月16日民集166号575頁)
①「外国人には、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない。」、「在留外国人の海外旅行の自由は、日本国民のそれと本質的に異なるものであり、憲法22条2項の規定が、このような両者の間の差異を超えて、特に在留外国人の海外旅行の自由まで保障したものと解する根拠はないから、在留外国人の海外旅行の自由は、憲法上保障されていないものといわなければならない。」
②「国際慣習法上、国家は外国人の入国を自由に規制することができるので、再入国に関しても当然に権利として保障されているわけではない。」

★学説★
学説では、我が国に生活の本拠をもつ、いわゆる定住外国人の再入国については、新規入国と同一視することはできず、法務大臣の再入国申請に対する裁量の範囲は狭いものになるとする説が有力とされている。
また、条約上の権利(国際人権B規約12条4項)である「自国に戻る権利」には「定住国」も含まれる解釈、見解が有力視されている。

日本の憲法 Vol.18 マクリーン事件

2017年09月22日 | Weblog


アメリカ人のロナルド・マクリーン氏は、昭和44年5月10日在留期間1年間として日本に入国し、英語教師として雇用され働いていた。その1年後に在留期間更新を法務大臣に申請したが、在留期間中にベトナム反戦や日米安保条約反対等のデモや集会に参加していたことや無届で転職をしたことなどを理由に在留更新は不許可となった。
そこで、マクリーン氏はこの処分を不服として提訴した事件。

1審は、「相当広範な裁量権を有する」としながら、「日本国憲法の国際協調主義および基本的人権保障の理念に鑑み・・・、最良の範囲を逸脱する違法の処分である」として、法務大臣の処分取消の判決。
そこで国は控訴した。

控訴審では、「在留許可更新を認めるに足る相当の理由があるときにこれを許可すれば足り、その際の判断は法務大臣の『自由な裁量』に任されており、在留期間中の政治活動を消極的資料とすることも許される」と判示して1審の判決を覆した。
この控訴審判決を不服としてマクリーン氏は上告をした。

最高裁は、上告を棄却し控訴審を支持し確定する。(最大判昭和53年10月4日民集32巻7号1223頁)
「憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり・・・憲法上、外国人は我が国に入国する自由を保障されているものではない。・・・、在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもない。・・・、更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広範なものとする趣旨である。」
「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきものであり、政治活動の自由についても、我が国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除きその影響が及ぶ。」と判示している。

日本の憲法 Vol.17 三菱樹脂事件

2017年09月21日 | Weblog


昭和38年3月に東北大学法学部を卒業後、三菱樹脂株式会社に就職したXは、入社試験時に学生運動歴を秘して虚偽の報告を行ったとして、3ヶ月の使用期間後の本採用を拒否された。原告Xは、雇用契約上の地位確認と賃金支払いを求めて出訴した事件。
1審では、解雇権濫用として被告側敗訴の判決。
被告側が控訴したが、控訴棄却判決を受けたため、被告側が上告する。
争点としては、
①基本権保障と私的自治の関係はどうあるべきか。
②憲法の私人間での適用はあるのか。
③雇用の自由は思想調査を許容するものか。
④本件契約の性質は。
判旨
①憲法19条、14条の各規定は、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。これらの規定の定める個人の自由や平等は、国や公共団体の統治行動に対する関係においてこそ、侵されることのない権利として保障されるべき性質のものであり、憲法上の基本権保障規定をそのまま私人相互間の関係についても適用ないしは類推適用すべきものではない。
②私的自治に対する一般的制限である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し、基本的な自由や平等の利益を保護しその適切な調整を図る方途を示した。
③企業者が、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項について申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない。法律に別段の定めがない限り、企業者の法的に許された行為と示した。
④企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用期間中の勤務状況や不採用該当事実を知るに至った場合、留保解約権の行使ができる。
判決
破棄差戻(最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)
昭和51年3月11日和解する。

日本の憲法 Vol.16 八幡製鉄政治献金事件

2017年09月20日 | Weblog


憲法上の権利である「人権」は法人も含まれるか否か判示した裁判です。

昭和35年当時八幡製鉄(現日本製鉄)の株主Xは、同社が自由民主党に政治献金として寄付をした350万円につき、取締役Y他に賠償責任を追及する代表訴訟を提起した事件である。
1審では、この請求を認めて原告側の勝訴。
控訴審では、1審をくつがえされX側の敗訴。
そのためX側が上告をした。

争点は、①会社に許される社会的活動か否か。②政党の憲法上の地位は如何。③政治献金は許される社会的活動の範囲内か否か。④会社は政治行為をなす自由を有するのか。

判旨
①「会社の当然になしうる行為である。」
②「憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なのである。」
③「会社による政治献金の寄付は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められる限りにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げないのである。」
そして④で、
「憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。」

上記のように判示し、原告側の上告を棄却し、原告の敗訴が確定した。(最大判昭和45年6月24日民集24巻6号625頁)

この裁判をきっかけとして着々と政治資金規正法等が整備されていくのである。

日本の憲法 Vol.15 人権【三つの属性と個人の尊厳】

2017年09月19日 | Weblog


人権には、①固有性、②不可侵性、③普遍性の三つの属性がある。
①固有性:人権は、憲法や天皇から与えられるものではなく、人間であることのみに基づいて当然に認められている権利であることを人権の固有性という。
②不可侵性:人権観念が憲法上実定化されることにより、国家の行政権だけでなく違憲審査制度を通して立法権によっても侵害することのできない権利であると考えられるようになったことを人権の不可侵性という。
③普遍性:人権は、人種、性別、国籍などの区別とは無関係に保障されるべき権利であることを人権の普遍性という。

憲法13条「すべての国民は、個人として尊重される」
人権観念の中核には、一人ひとりの個人がその社会的地位や能力とは無関係に人間であるが故に尊い存在であり、尊重されるべきであるという「個人の尊厳」の理念が存在する。
この13条の行動規範は、①自己決定・人格的自立の尊重と②他者の尊厳性の承認の二つである。

日本の憲法 Vol.14 新三要件が憲法9条を守れるか

2017年09月18日 | Weblog


集団的自衛権
外国から武力攻撃を受けた国家と密接な関係にある国家が、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、共同して実力をもってこれを阻止する権利をいう。
国際連合憲章51条【自衛権】前段
「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国債の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」と規定し、独立主権国家の権利として集団的自衛権を認めている。

日本においても過去の政府答弁で「集団的自衛権は憲法上認められていないと解釈している」と答弁してる。
しかし2015年9月19日に成立した「平和安全法制」において、集団的自衛権を可能とした法律が制定され、憲法9条を蔑ろにした戦争可能国家へ変貌したとか等の猛反発が国内に巻き起こりました。

それでは成立した「平和安全法制」とは?
一部改正を束ねた「平和安全法制整備法」と新設された「国際平和支援法」から成り立っている。
「平和安全法制整備法」の主要事項には、1、自衛隊法の改正、2周辺事態安全確保法の改正、3、船舶検査活動法の改正、4、国際平和協力法の改正、5、事態対処法制の改正、6、国家安全保障会議設置法の改正などから成り、この中の5、「事態対処法制の改正」において、この法の目的に「存立危機事態」への対処等を追加したことで集団的自衛権を可能としたとしている。

しかし安倍総理大臣も、「新三要件が憲法上の明確な歯止めとなっていて、国際的に見ても他に例のない極めて厳しい基準である。」、「その時々の内閣が恣意的に解釈できるものではない。」と答弁している通り、新三要件が憲法9条をなんとか守っていると考える。
新三要件
1、わが国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。
2、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと。
3、必要最小限の実力行使にとどまるべきこと。