2017年7月1日 香港が1997年に中国に返還され20年経った。香港という社会の自由度が下がり、そのことが香港の人々の中国離れを加速している。一国2制度のはずが、国歌法の適用が全人代常務委員会で決定された(2017年9月可決 10月実施)。そして、これ(一国二制度)の例外とするように香港の立法会(親中国派が多数)で香港基本法を改正する。
香港人の香港離れを象徴するのが、李嘉誠主席率いる長江グループの動き。中国・香港の資産売却を進めて欧米でM&Aを加速する「脱中国」戦略を加速している。
香港での普通選挙の実施(18歳以上として2007年に当初導入予定)は、2014年8月全人代が2017年の香港行政長官選挙からの直接選挙と、親中国派しか出馬できない枠組みを示したため、実施に移れず民主派は「真の普通選挙」を求めて反発 雨傘運動に発展したことから頓挫している。この時の学生リーダーが後述する資格をはく奪された議員でもあるが、2017年8月、香港高等高裁は当時の学生リーダー3人に違法集会の罪で禁固刑の実刑判決を言い渡している。市民運動参加者をみせしめのように厳罰にすることは、やはり市民運動や香港独立を唱える動きを抑え込む動きに見える。香港において「思想の自由」「表現の自由」が抑圧されている。
2014年9月末からの民主派による雨傘運動と、14年11月からの上海香港の両取引所での相互取引開始とは重なるかのようだった。2016年11月15日には香港高等法院が、10月12日の就任宣誓に問題があったとして、中国からの独立を志向する香港本土派の2議員の資格を奪う判決を(全人代常務委員会の解釈発表を受けて)下す一方で、2016年12月には深圳と香港の両取引所間でも相互取引が始まった。(ただ外部から見てわからないのはこの若い二人の議員の態度である。宣誓での行動により、宣誓無効になることを考えなかったのかどうか。無効とされて、再宣誓するとしたのもよく理解できない。つまり何のために当選したのか? 立法会での活動に目的があるなら、粛々と宣誓するべきであった。宣誓する内容を問題にして辞任するつもりであれば、これも粛々と辞任するまでではないか? しかしせっかく当選したなら、立法院で長く頑張るべきではなかったか?)
その間には、中国共産党に批判的な書籍を扱う書店店主が、中国本土で失踪し、身柄を拘束されていた事実が明るみに出た(2015年10月から2016年3月)。関係者には中国本土に親族がおり、迷惑がかかることを恐れて、その口は重い。だがこれは、香港を中国公安当局が取り締まる明確な意思を示すものである。問題はこのとき関係者が香港で中国当局に拉致されたことである。これは一国二制度に対する違反になるとのこと。
こうしてみると、中国による香港への圧力は強まっており、西欧的な直接民主主義を志向する香港市民の気持ちは、憂鬱だ。そのことが、自分は香港人で中国人ではないという香港人が6割を超える現象に反映している。
他面 香港は通貨を米ドルにペッグ。金利も米国に連動させている。これは香港をアメリカの金融の動きに連動性の強い市場にしている。思想の自由を奪われながら、通貨は米ドルペッグ。金利は米国に連動。
株式相互取引も、本土から香港への資金流入が多い(2016年後半から2017年前半)。背景には中国本土のバブル抑制や資本流出規制がある。まず香港に上場しているのは、なじみのある中国本土系銘柄(H株)。香港株を売却するときは人民元への換金を義務付けられるので、資本流出規制の対象でないとのこと。同様の傾向は不動産にも表れている。中国本土でのバブル規制を逃れて香港へという流れがある。中国本土の資金としては、公に認められた逃避場として貴重だ。
2017/08/08(2017/06/06)