Entrance for Studies in Finance

アローラ氏の退任とアームの買収

アローラ氏の退任発表(2016年6月22日)

ソフトバンクのニケシュ・アローラ副社長(2015年から代表権をもつ取締役副社長として海外業務を仕切る)が退任した(2106年6月22日付け株主総会当日)。もともとアローラ氏を後継者に指名していた孫正義社長(2017年6月で60歳 1957年生まれ 在日韓国人3世 地元高校中退 カリフォルニア大學バークレーに入学 帰国後1981年にソフト卸売会社の日本ソフトバンク設立 2006英ボーダフォン日本法人買収 2013スプリント買収)が自らの社長退任を撤回したとも。この発表は株主総会当日午前9時でかなり異例。

2016年3月にアローラ氏をヘッドとする海外事業統括会社 国内は宮内謙氏をヘッドとする国内統括会社への編成とし、アローラにスプリントの再建も託したはずだったが。

アーム買収発表(2016年7月18日)

アローラ氏退任から1ケ月。孫社長は英半導体設計のアームHD(通信用回路設計の大手 回路設計図のライセンス 通信用半導体でシェア9割 2015年12月期の売上高9.7億ポンド1350億円 売上高営業利益率53% 連結純利益は3.4億ポンド470億円)の買収を明らかにした(7月18日)。買収額240億ポンド3.3兆円(アームの純資産は2500億円 買収額との差 いわゆるのれんが3兆円)。日本企業による買収として過去最大。市場は米携帯電話会社スプリント(2013年に216億ドル1.8兆円で買収)の経営再建がソフトバンクの経営課題としてみていただけに、あっけにとられた。ソフトバンクのかかえるのれんは2兆円から5兆円に拡大。減損リスクも拡大するとのこと。

買収資金 2016年3月時点で現預金2.5兆円 その後2016年6月 アリババ集団株売却(約1兆円) フィンランドノゲーム大手スーパーセル(7700億円 中国ノテンセントに売却)の売却 ガンホーオンラインエンターテイメントの保有株売却(730億円)などで2兆円 あわせて4.5兆円。したがって買収資金はある(いざとなれば借入を帳消しにできる含み益があると主張)。さらに みずほ銀行(2006年のボダフォン買収 2013年のスプリント買収でも協力)との間で ブリッジローン1兆円を契約(アーム買収後の有利子負債水準は12兆円 売上だkの1.3倍 他方アリババのヤフーの含み益は7.5兆円 保有非上場分を合わせれば有利子負債返済は可能)。

スプリントの再建を期待した米国市場。有利子負債軽減(16年3月期の利払い額は4400億円 平均支払金利は4%近いため 金利上昇によるリスクを懸念する意見あり)を期待した日本市場。そのいずれもが孫氏の決断に失望を表明した。

問題は買収による相乗効果(シナジー)が読み取りにくいこと。市場の反応は現在のところ冷たい。

Timeline

2014年 アローラ氏 グーグルから経営陣に加わる

 14 配車サービスのインドオラに出資 225億円

 14 Eコマースのインドスナップデイールに出資677億円

   スマホ経由でのタクシー配車サービスインド ANIテクノロジーズ 約230億円

   背景 TモバイルUS(親はドイツテレコム)買収構想の白紙化 

 15 オンライン融資仲介の米ソーファイに出資1200億円

 16 中国アリババ集団の株式を総額約1兆円で売却

 16 ゲーム大手のフィンランドのスーパーセルを中国テンセントに73億ドル(7700億円)で売却

孫氏側

   アリババ集団 中国のEC最大手 2014年米国で上場

 13 米スプリント買収 スプリント再建に集中(13/6末 旧ネクステルの通信網を閉鎖 通信網の一本化)

   米ユーストリーム(ネットでのライブ動画配信サービス)

1995 米IT見本市コムデックスの運営部門を約800億円で買収

   米ヤフーに2億円(5%)出資 その後も追加出資(2011ねんまでに大半を売却)

1996年1月 米ヤフーとの共同出資により日本でヤフー設立

1996 テレビ朝日株の約21%を約417億円で豪ニューズ社と取得(97年に売却)

2000年 中国アリババ集団に約20億円出資(1999年創業)


2001年9月 ブロードバンドYahoo!BB 提供開始 → 高速ネット接続サービスの投資負担重い

      2002年3月期以降4期連続の連結営業赤字

2004年7月 固定通信の日本テレコム買収3400億円 固定通信に進出

      2006年3月期 ようやく黒字転換

2006年4月 ボーダフォン日本法人買収1兆7500億円 国内携帯電話に参入

      2007年3月期 携帯事業買収で営業利益膨らむ(寡占のため利益上げやすい構造)

2007/05  6月にも割賦販売の売掛債権を流動化(証券化)する方針。2006年秋に割賦販売方式導入。メーカーにはさきに支払う形になっていうr。

2007年5月 上位のNTT KDDIとは営業利益で差 4.4倍と1.3倍 時価総額で3.5倍 1.6倍

2008/01 学生の新規契約者対象に月額基本料の3年間無料化を発表(08/02-08/05)

2008 アリババ集団と日本で合弁会社設立

2008.7.11 iPhoneの国内販売をはじめ好評(世界共通仕様 ⇔ ドコモのiモード 携帯電話会社によるサービスや機能の押し付け、ガラパゴス)

2009/3 連結純現金収支黒字転換

2009 iPhoneが好調

2009.6 10ケ月ぶりに時価総額2兆円越え 25ケ月間携帯電話純増件数首位 2年ぶりに社債発行

2009.9 iPhone5を発売したKDDIとソフトバンクが支持される一方(データ通信料も伸びる) NTTドコモは顧客流出続く

2009・11 ソフトバンク株主は配当に不満 同社実施のアンケート調査結果 配当利回り0.2% ドコモは4% KDDIは2.6%  配当を不満とするものは76.4%(前年は76.6%) 

2009・10 3年5ケ月ぶりに時価総額でKDDI上回る iPhoneが爆発的に売れる

2010/02 米ユーストリームに出資 2000万ドル 13.7%

2010/02   新規契約の学生と家族を対象に基本料無料化(学生は最大37ケ月 家族は16ケ月) 都市を中心とするビジネスモデル 投資負担軽かった(10年3月期の設備投資 ドコモ5000億円台 KDDI4000億円弱に対し ソフトバンクは2000億円弱) しかしこれからはネットワーク 地方でも改善投資必要 11年3月期は4000億円規模の投資を予定

2010/5/28 iPadの発売開始

2010 ヤフーの好調 アイフォン効果で営業益稼ぐ(2010・03期 営業益でKDDIを抜く)

2010/03 通話品質改善のため1年後に基地局を倍増する(6万→12万)

2010/4-12 iPhone効果で営業利益でドコモとKDDIが減益となるなか増益かつ過去最高益。

2011/5  ソフトバンク格付け 現在はダブルBプラス 引上げ方向 携帯事業買収のための借り換え 借換え返済が実現すれば トリプルBマイナスへ

ドコモがiPhone発売を開始(2013年9月 ドコモは2008年以降 350万超の顧客が流出 スマートフォンで出遅れる失態) 2008年7月 ソフトバンクがiPhone発売開始 2011年KDDI iPhone発売に参入。

2012/01 ソフトバンク格上げ トリプルBマイナス→トリプルB

2012/04 2012/03期の年間配当金を40円と前期の8倍にすると発表 有利子負債の削減が進んだため今後は株主への利益配分増やす

2013  イー・アクセスを1800億円で買収(12/10買収決定)

2013/03 個人向け社債3000億円を発行

2013年3月期 8期連続の最高益達成。営業益7500億円規模 ドコモ(8371億円)になお及ばないがホンダ(5448億円)上回る データ通信料の多いスマホの伸びが収益支える。買収したスプリントの株価値下がりがソフトバンク株価を押し下げている面もある。

2013年4月 ガンホーを子会社化

2013年6月 個人向け社債4000億円を発行 5年物 金利1.74%

2013年7月 米携帯3位のスプリントネクステルの買収完了1兆8000億円(コスト削減進める LTE対応で他社に遅れる)

2013年7月 ソフトバンク 時価総額7兆4000億円に成長 海外への投資が表かされるように スプリントネクステル78% ユースクリーム19% ペイパル(合弁運営) アリババ集団36.7%(EC最大手) 人人34.1%(交流サイト) アリババの香港への上場報道がきかっけで成長期待高まる その後13年秋に香港上場を断念 香港の株主権の平等原則を問題視 → 2014年NYSEに上場へ(大株主のソフトバンクに含み益)

2013年9月 ドコモがようやくiPhone発売開始(NTTドコモを市場評価で圧倒) 国内ではこれまでのような利益成長は困難になった。

2013年4-9月期 携帯3社の中で純利益最高に ドコモ抜き首位に iPhone効果続く

2014年3月 ヤフーが国内携帯4位イー・アクセスを買収。1800億円。3240億円 ソフトバンクから。ヤフーにとり利益圧迫要因との疑問の声。

2014年3月期 純利益で初のドコモ超え4647億円 営業利益は1兆1000億で過去最高 データ通信料収入が伸びる+株式の評価益(ガンホーとウイルコム) 

2014年夏 ソフトバンク ロボ事業に参入へ(一部の店舗で接客に利用 Pepper)2015年2月 家庭用に売り出す。

2014年9月 iPhone 6/6+ 購入者対象に米国からのかけ放題サービス

2014年9月 アリババ上場による含み益は5兆円規模の見込み(上場前)。アリババ上場により8兆円の含み益を抱えることになった(上場後)。ソフトバンクの時価総額は9兆8500億円。時価総額で一時10兆円台を回復(9月半ば)。

2014年10月 アローラ氏(グーグルの上級副社長兼最高事業責任者)を招聘(取締役兼米ソフトバンクインターネットアンドメデアのCEOとして)

2015年1月 国内4通信会社を合併 ソフトバンクモバイル(2015年4月から 売上は単純合計で3兆5000億円)

2015年2月 米スプリント 10-12月期決算 苦境続く

2016年6月 同社保有のアリババ株の一部売却を発表(持ち分比率32.2%から28%に低下) 79億ドル 有利子負債返済(16年3月末で12兆円弱の有利子負債)と一般事業目的に使う

Case Study:ソフトバンク(2015年8月)

2016 06  28(2016 07 17)

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