2020年12月19日に英国ボリス・ジョンソン首相が英国で感染力が7割強くなった「変異株」が出現し、急速に英国内で拡大している声明が出されました。2021年1月19日には静岡県で市中感染と思われる変異株による症例が確認されました。
このころ、日本国内では「変異種」という表現で報道されていましたが、その後、変異株と統一されて報道されています。
これは、突然変異はすべての生物において、遺伝子の複製過程で一部読み違えや組み換えが発生し、遺伝情報が一部変化する現象です。このときに、新しい性質を持った子孫ができることがあります。この子孫のことを学術的には変異株と呼称するからなのです。
変異株は、変化した遺伝情報の影響を受けた一部の性質が変化しますが、もともとの生物としての種類は変化しません。つまり、同じ種類の複製バリエーションですので、ウイルスの名称は変わらないのです。しかし、極まれに近い種類の生物種の間で多くの遺伝子の組み換えが起きると、2つの生物種の特徴を併せ持った新しい生物が生まれることがあり、その場合には「変異種」と呼びます。そして、この場合には新型のウイルスが誕生することになるので、新しいウイルスの名前が付けられるます。
今回、新型コロナウイルスのスパイクタンパクに「N501Y」という変異が起こり、感染力が強くなりましたが、もともと持っていた新型コロナウイルスの基本的特性はほとんど引き継がれていますので、名前は新型コロナウイルスのままになります。そして、同じ種類の複製バリエーションですので、変異株と呼ばれているのです。
さて、最近、新型コロナウイルスの報道でよく耳にするのが「従来株」という呼び方です。「イギリス株」「南アフリカ株」「ブラジル株」に始まり、「インド株」など国名が付けられていますが、最初の変異前のウイルスに関しては「従来株」と呼ばれています。
ふつう、ウイルスの呼び方は、そのウイルスが最初に発見された地名にちなんで付けられるのが一般的になっていました。
たとえば、ノロウイルスの場合、米国オハイオ州ノーウォークで最初に確認されたから、エボラウイルスはコンゴ民主共和国のエボラ川上流で発見されたから、マールブルクウイルスはドイツマールブルクに発見されたため、などでした。
しかし、2015年に国際保健機構(WHO)が、「新たに発見された病気名に地域名を用いない」というガイドラインを定めたことで、新型コロナウイルスは「中国ウイルス」や「武漢ウイルス」とは呼ばれていないのです。ただ、「中国ウイルス」といい続けた米国ドナルド・トランプ前大統領を始め、台湾などでも一部の国や地域では今でも「武漢肺炎」「武漢ウィルス」と読んでいます。
なお、2021年4月ころ東京都を中心に増えていた「E484K」は、日本の東京・羽田空港での検疫によって新たに確認された変異ウイルスです。海外から持ち込まれたのではないかと考えられていますが、どこで発生したかは分かっていません。しかし、「日本株」や「東京株」という呼び方をしていないのは、ある意味、ご都合主義なのかもしれません。
最近は「N501Y」や「E484K」と数字とアルファベットで呼ばれることもあります。これはガイドラインに基づいてのことだと思えるのですが、そもそも、このアルファベットや数字が意味するのは、実際には変異型の名前ではなく、変異の結果として起こる、ウイルスの性質の変化の内容を表すもので、ウイルスの表面の突起部分にある「スパイクタンパク質」を構成している「アミノ酸配列」がどのように変わったかを表しています。
たとえば、「N501Y」は、スパイクタンパク質の501番目が従来のアミノ酸N(アスパラギン)から、アミノ酸Y(チロシン)に置き換わったことを意味します。そして、この変異株が最初に見つかったのが英国なのです。しかし、現在では、イギリス株には「B.1.1.7」という正式系統名称がつけられており、 南アフリカ株は「B.1.351」、ブラジル株は「P.1」、インド株は「B.1.617」などとなっていますが、系統としては複雑になっています。
よって、わかりやすい(?)呼び方がされているのではないかと思います。ただ、国の名前で呼ぶことがいいのかどうかというと、個人的には疑問はありますし、インド政府は国名を付けた呼び方をやめるようにSNS各社などに要請しています。
ニュースなどで報道されているように、変異株は従来株よりも感染しやすくなっていることから、私たち一人ひとりに必要なことは、これまでと変わらず、基本的な感染対策の徹底です。
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