そうきましたか
いいですよ
それならそれで
では考える時間を与えましょう
いずれにしても
迎える結果は決まっているのですが
そうはいっても
考える時間は必要でしょうから
逃げようのない運命が大波となって
私たちを呑み込もうとしている
抗う術はない
せめて離れ離れにならないよう
互いをしっかりと括りつけ
あとは身を任せるしかない
それまでは考えあぐねていいですよ
そして
一緒に心ゆくまで溺れましょう
見たくもないものまで見えてしまう
そんなことは頼んでもいない
どうして無遠慮なのだ
その理不尽さは何なのだ
はっきり言えばいいだろ
助けてくれと
優しく付き合ってやるほど暇じゃない
与えられるのを待つな
与えることを知れ
言ってやれるのはそれだけだ
あとは
慟哭に飛び込むか救いに飛び込むか
自分で選択しろ
そろそろ抜けられなくなったはずだ
しっかり突き刺さってるもんだから
抜こうものなら大量出血間違いなし
それはお互いさまで
忘れられないね
逃れられないね
時間を重ね合うしかない
死なないために
感触を重ね合うしかない
死なないために
死なない
死ねない
死にたい
タ ス ケ テ
迷わなくていい
そもそも選択肢はない
求めているものは目の前に
自分で呼び出しておいて
いまさら
迷わなくていい
そもそも
叫んだだろう?
泣いただろう?
ある一つを捨てるだけでいい
たった一つ
恐れを
恐れをだ
そもそも選択肢はない
迷わなくていい
いまさら
はい
では搬送しますよ
よろしいですか?
ふわっと浮く瞬間がある
その波に乗りたい
けれど機を逃す
いつも
波打ち際で
砂地に乗り上げたまま
青空の下で
沖へ漕ぎだしたいのに
陽に照らされ救われたいのに
次の波がいつ来るのか読めない
いつの間にか
ふわっと浮く瞬間が来た
その波に乗りたい
けれど機を逃す
青空の下で
沖へ漕ぎだしたい
陽に照らされ救われたい
ふと
となりに君がいた
そうか
君もいた
いつ来るのか読めない
次の波を待とう
一緒に
ー どうした?
心が消えた
いつの間にか消えていた
ー 何があった?
何もない
何もないから消えた
心が消えていた
ー これからどうする?
わからない
漠然とした悲しみが
灰となって残っているだけ
心が消えてしまったのを
遠くから眺めることしかできない
こんなにも突然に
そしてあっさりと
心が消えてしまうなんて
この先どうしたら
ー それでも焼け残ったものがあるはず
ー それを探し出せばいい
焼け野原にいる
裸足で立って
煤だらけの自分
まわりには誰もいない
この先もいないだろう
一緒に焼けてしまえばよかった
今さら思う
けれど
生き残りたかったようだ
こうしているのだから
辛い
足もとが熱い
痛い
そして
声が出ない
誰かがいなくても
歩きだすしかないようだ
焼けてしまう機会を失ったのだから
何もかもを諦めて
辛かろうが
熱かろうが
痛かろうが
歩きだすしかない