ハンドルロックはいつもかけるが、鍵穴を塞ぐシャッターキーはいつもかけない――それが、俺のヒップでホップな原チャリの駐車スタイルだった。
――朝。
バターをたっぷりぬった食パンを口から斜めにぶら下げつつ、あわてて家を飛び出した俺は、かわいいマイ原チャ「ZOOMER(白)」に、すわっとまたがる。そして、梅雨明け直後のもあっとした空気のなか、颯爽と公道を走り出す。ワケ知り顔で落ち着きはらって原チャを駆る俺は、以前信号無視でオマワリさんのお世話になった交差点にさしかかっても、まったく動じやしない。むしろ、胸を張り、アゴをクンと上向きにして走っていた。
――駐輪場。
鉄道会社が運営しているのか市が運営しているのか定かではないが、年々使用者が増加し、すでにここ数年来8時半を過ぎるともう他人のアシでいっぱいでまともに置けやしない。そこをムリヤリ――周りの原チャを一台ずつ丁寧かつすばやくポジショニングしながら――やっとのこと、奥の狭まった(自転車エリアと原チャエリアの間にある)俺のベストプレイスにマイ原チャを押し込む。
でもさ、原チャ泥棒さん。
綺麗な指してたんだね……知らなかったよ。
――夜。
帰ってきたら……俺のマイ原チャは消えていた――。あれ、今朝は俺のベストプレイスには置かなかったんだっけ? ――念のため、駐輪場の周りを2周ほどまわり、中を対角線上にコーナーから2度攻めてみる。だめだ。無い。無くなった。盗まれた。まじっすか。ああ、今日は……タクシーで帰ろ。
あの駐輪場は、常に駐輪率150%で、雨ざらしで、帰りには空き缶やらマンガ雑誌やら他人のゴミ箱にされていたりと、とにかく最悪な駐輪場だ。しかし、ひとつだけ良い点があった。それは、「常に人目があるので、盗まれる可能性が低い」ということだ。
でも、盗まれたのは……盗まれちまったのは……俺の不徳と、危機管理能力のなさにほかならない。すごい反省している。そして、もうすごい凹んでいる。ああ、時がいつか、二人をまた、初めて会ったあの日のように導くのなら――。
警察に被害届けは出したが、短い夏の終わりを告げる波の音しか聞こえない。
先日のデジカメの海没といい、もうこれ以上苦しみたくないよ。
背中にそっと「さよなら……」
――朝。
バターをたっぷりぬった食パンを口から斜めにぶら下げつつ、あわてて家を飛び出した俺は、かわいいマイ原チャ「ZOOMER(白)」に、すわっとまたがる。そして、梅雨明け直後のもあっとした空気のなか、颯爽と公道を走り出す。ワケ知り顔で落ち着きはらって原チャを駆る俺は、以前信号無視でオマワリさんのお世話になった交差点にさしかかっても、まったく動じやしない。むしろ、胸を張り、アゴをクンと上向きにして走っていた。
――駐輪場。
鉄道会社が運営しているのか市が運営しているのか定かではないが、年々使用者が増加し、すでにここ数年来8時半を過ぎるともう他人のアシでいっぱいでまともに置けやしない。そこをムリヤリ――周りの原チャを一台ずつ丁寧かつすばやくポジショニングしながら――やっとのこと、奥の狭まった(自転車エリアと原チャエリアの間にある)俺のベストプレイスにマイ原チャを押し込む。
でもさ、原チャ泥棒さん。
綺麗な指してたんだね……知らなかったよ。
――夜。
帰ってきたら……俺のマイ原チャは消えていた――。あれ、今朝は俺のベストプレイスには置かなかったんだっけ? ――念のため、駐輪場の周りを2周ほどまわり、中を対角線上にコーナーから2度攻めてみる。だめだ。無い。無くなった。盗まれた。まじっすか。ああ、今日は……タクシーで帰ろ。
あの駐輪場は、常に駐輪率150%で、雨ざらしで、帰りには空き缶やらマンガ雑誌やら他人のゴミ箱にされていたりと、とにかく最悪な駐輪場だ。しかし、ひとつだけ良い点があった。それは、「常に人目があるので、盗まれる可能性が低い」ということだ。
でも、盗まれたのは……盗まれちまったのは……俺の不徳と、危機管理能力のなさにほかならない。すごい反省している。そして、もうすごい凹んでいる。ああ、時がいつか、二人をまた、初めて会ったあの日のように導くのなら――。
警察に被害届けは出したが、短い夏の終わりを告げる波の音しか聞こえない。
先日のデジカメの海没といい、もうこれ以上苦しみたくないよ。
背中にそっと「さよなら……」