ビコーン!
その刹那――まるで「ウルトラクイズ」のボタンぶったたき音のごとく――軽快な電子音を奏でつつ、俺の“焼肉アンテナ”がかなぐり立つ。旨い旨いと泣き叫ぶ。そう、焼く時間はたった3秒でいい。トラベリング以下でいい。いや、もはや生だっていい。それくらい、新鮮でかつ、仕込みがちゃんとしている。旨い。旨すぎる……!
――その瞬間、俺の周りに大阪城が築城され、と同時に、俺の目、鼻、口から、まばゆいばかりに青白いレーザー光線が全方位に向けて照射される。大阪城は木端微塵となり、しかしかろうじて原型を留めたようだ……そして、気づくと俺は大阪城と一体化していた……。

うーまーいーぞぉぉおおおーーッ!
……それくらい、旨い焼肉を喰った。もちろん、大阪城ではなく……水道橋の京城という店で。ほんと~に旨かった。ただ、それだけ。
その後、以前イタい目に遭った代官山のイベントへ。あのとき誓った人生の到達点ともいうべき目標である「イタリアオヤジ」にはまだまだほど遠い今の俺に、よりにもよってこの空間でのリベンジはデンジャラスすぎる。実際、やたら元気で「マルコメ坊や」と「ジャイアン」を異種配合して巨大化させたような人までいたりして、とっても怖い。隅の方にある説教部屋みたいなところで、シーハービールを飲みながら、ひたすらブルブル震えていた。ほんと~に怖かった。ただ、それだけ。
さらにその後、渋谷の隠れバー「TANTRA」へ。何気ないオフィスビルを地下に潜ると、暗く……そして、妖艶に広がる、インドの性典「カーマスートラ」を具現化させたような、ぁゃιぃ空間。しかし、繰り広げられるトークは概してぁゃιさを帯びず、至ってまっとうなものであった。事実、俺が出口の無い小噺を披露していると、
「ええと、そのトークの行き着くとこって、結局どこッスか?」
と、眉毛をピクピクさせられながら言われてしまうこと三度(みたび)。嗚呼、ここで俺は、曹操がかの「赤壁の戦い」で詠んだ句を、ひとり思い出すのであった……。
酒に対し当に唄う人生 そもいくばくぞ
たとえば朝露のごとく去りにし日 甚だ多し
月明らかに星稀にして 鵜雀南に飛ぶ
樹を廻ること三度 枝のよるべきなし
ほら、この句にも三度(みたび)って出てくるでしょ? こんな調子ぶっこいた句を詠んだあと、奇跡ともいうべき東南の風は吹き、曹操軍百万は数万の呉軍に敗れ、ここに諸葛亮の「天下三分の計」への道程が築かれたのであります。
あ、やば……また、眉毛ピクピクさせちゃってるかも……。
その刹那――まるで「ウルトラクイズ」のボタンぶったたき音のごとく――軽快な電子音を奏でつつ、俺の“焼肉アンテナ”がかなぐり立つ。旨い旨いと泣き叫ぶ。そう、焼く時間はたった3秒でいい。トラベリング以下でいい。いや、もはや生だっていい。それくらい、新鮮でかつ、仕込みがちゃんとしている。旨い。旨すぎる……!
――その瞬間、俺の周りに大阪城が築城され、と同時に、俺の目、鼻、口から、まばゆいばかりに青白いレーザー光線が全方位に向けて照射される。大阪城は木端微塵となり、しかしかろうじて原型を留めたようだ……そして、気づくと俺は大阪城と一体化していた……。

うーまーいーぞぉぉおおおーーッ!
……それくらい、旨い焼肉を喰った。もちろん、大阪城ではなく……水道橋の京城という店で。ほんと~に旨かった。ただ、それだけ。
その後、以前イタい目に遭った代官山のイベントへ。あのとき誓った人生の到達点ともいうべき目標である「イタリアオヤジ」にはまだまだほど遠い今の俺に、よりにもよってこの空間でのリベンジはデンジャラスすぎる。実際、やたら元気で「マルコメ坊や」と「ジャイアン」を異種配合して巨大化させたような人までいたりして、とっても怖い。隅の方にある説教部屋みたいなところで、シーハービールを飲みながら、ひたすらブルブル震えていた。ほんと~に怖かった。ただ、それだけ。
さらにその後、渋谷の隠れバー「TANTRA」へ。何気ないオフィスビルを地下に潜ると、暗く……そして、妖艶に広がる、インドの性典「カーマスートラ」を具現化させたような、ぁゃιぃ空間。しかし、繰り広げられるトークは概してぁゃιさを帯びず、至ってまっとうなものであった。事実、俺が出口の無い小噺を披露していると、
「ええと、そのトークの行き着くとこって、結局どこッスか?」
と、眉毛をピクピクさせられながら言われてしまうこと三度(みたび)。嗚呼、ここで俺は、曹操がかの「赤壁の戦い」で詠んだ句を、ひとり思い出すのであった……。
酒に対し当に唄う人生 そもいくばくぞ
たとえば朝露のごとく去りにし日 甚だ多し
月明らかに星稀にして 鵜雀南に飛ぶ
樹を廻ること三度 枝のよるべきなし
ほら、この句にも三度(みたび)って出てくるでしょ? こんな調子ぶっこいた句を詠んだあと、奇跡ともいうべき東南の風は吹き、曹操軍百万は数万の呉軍に敗れ、ここに諸葛亮の「天下三分の計」への道程が築かれたのであります。
あ、やば……また、眉毛ピクピクさせちゃってるかも……。