親子丼+ミニうどんセット¥820
Contax Aria+Distagon 28mm/F2.8 MMJ(Fuji Superia X-Tra400)
壁際のカウンターに置かれた、ピカピカの薬缶から注いだ番茶には
二本の茶柱が立っているが、今日は宅急便の来る日……では無い。
丼の蓋を取ると、卵白が半分透明状態の親子丼(単品¥600)は
高知風の甘さが何処か、懐しい。
成る程、甘み=旨味の法則はあるものの、甘けりゃ良いと
言うのは少し、乱暴である。此方のダシのように旨味を感じ取れ
る微妙な塩梅と言うのが実は、難しいところなのだ。
今となっては残念ながら麺の味を味わうと言うには少し
無理のあるコシの無い高知うどんだが、この場合は
お澄まし代わりなので麺も白い色の具の一つだと考えれば
さして問題は無いでしょう。
左隣りの初老のご夫婦は二人で一皿に盛ったオデンを摘まみながら
蒸し寿司の仕上がりを待っていたようだ。
右側の御婦人は一人でうどんを静かに、静かに、愛おしむように食べている。
土曜日の昼時、そこには何十年も連綿と
繰り返されて来た風景が今日も続いている。
この店に来ると何時も、邦画の一場面に自分が入り込んで
いるような感覚を覚えるのは、所謂「昭和サイズ」に設えられた店の
大きさのせいであろうと、思うのである。
妄想に耽りながら、最後の沢庵を噛み、湯呑みの茶を飲み終え
いつの間にか満席近い入りになっている店内にガラガラと
引き戸を開けて入って 来た男性客が、席を探す気配を背中で
感じながら、勘定場に向かうのであった。
--shop data--
店名:十一屋(といちや)
所在:高知市はりまや町1-11-3(Yahoo!地図)
電話:088-882-4918
営業:11:00~16:00
定休:日祝祭
駐車:近隣有料P有り
※2017年・閉店