ゆーけいのツイッターまとめブログ

ツイッターまとめブログ

時間破産 その弐

2006年10月16日 23時51分26秒 | 時間破産
「えっ?これなんて言う紙切れ?」
「君は人間の癖に字も読もうとしないのかい?」

そこには「時間破産申告書」とあった。
「時間が無いことで自我が崩壊するおそれがあると認められる場合、それに因果する全ての原因から開放されるために行う申告」をするためのもので要は「自由になりたいですか。それじゃあ一筆書いてね」と言うものだ。
これを書くと「自由」になれる。ただし申告内容次第では認められない場合もあるかもしれないという。

「君はこれに一筆書く気はあるかい。」
返事をする前にペンを探した。
「じゃあこれを貸してあげる。」
「ありがとう。」
「…君の返事は決まったね。」
「ああ。あんな世界俺の住める所なんかじゃねーぜ。」

ただひとつ制約があって、7年ぐらいはもうひとつの世界パラレルワールドという世界の住人としていなければならないらしい。それ以外は何をやっても自由である。

「でもさ、君の言うパラレルワールドって言うのは…」
「大丈夫。君の住んでいる所と基本的には変わらない。」
「えぇぇちょっと待てよ。」
「でも君の好き勝手にしても誰も咎めたりはしないんだ。働かなくてもいい。でも君の方から進んでパラレルワールドのために働いてもいい。」
「なんだそりゃあ。俺は大体どっか仕事に就くとろくな事しか味わってない。だから働く気なんか全然ねーよ。でもちょっと待てよ。そこでは何もしなくても生きていけるのか?」
「大丈夫。君の居る世界みたいに「全てが金」「先立つ物金が必要」なんてことないよ。ただこの申告を行った人にはパラレルワールドが指定する居住区に住むんだ。そこならお金は一切いらない。おっと。その前に申告書を書いてくれなきゃ裁判所に出向けないよ。」
「…さ、裁判所?っていうかまるで自己破産しにいくみたいじゃねーか。」
「自己破産?」
「いやいやいいんだ。結構分厚いなぁ。履歴書をふやかしたような内容しか書けねーぞ。」
「書ける所まで書いてくれればいいんだ。後は僕がしっかりいいアドバイスをさせてもらうよ。」
「あーそうかい。それはありがたい。…ちょっと待ってくれ。そこにお金がかかるって言うなよ。」
「大丈夫。パラレルワールドの住人はそんなささいな所でお金儲けをしようなんて輩はいないよ。」
「そうかい。」
「これは申し遅れました。」
「まだ何かあるのかい。」
「今から君の弁護人を勤めることになるラービ族のカンタだ。」
「いゃあーこれはびっくりしたあんた俺の弁護人やってくれんの?はじめてだなぁ。しかもうさぎって。…そういったから言うんじゃないがさっきは悪かった。こっちこそ申し遅れていた。」
「君の名前はそのまま申告書に書いてくれればいいから。」
「そこは話させる所だろ。」

この申告書で重要という所は今までどういう「条件で」仕事をやって来た事にかかっているらしい。無論、日に8時間以上の労働をしていない期間が多いのではダメであるらしい。

「ちょっと待ってくれ。俺半年間働いていない時期が二回あるぞ。それじゃあ申告通らないんじゃないの。」
「そこは考え方なんだ。」
「どういう風に考えるんだよ。」
「働いてないということは普通「あの」世界の人間は「仕事を探す必要のある期間」と言うことになるんだ。だから「仕事を探す仕事」をしている事にすればいい。」
「めちゃくちゃだなぁ。」
「大丈夫さ。過去に何回も君のような人を見てきて「時間破産」を成立させてきたんだ。だから大丈夫なんだよ。」
「…なるほどねぇ。」
「だからただ怠けていましたって言わなきゃいいんだ。仕事ついても怠けていたら仕事やってないって言うのと一緒さ。」
「それはある。一理ある。それはそうと8時間丁度の場合って意味合い的には微妙なんじゃないの?」
「君は8時間労働の所で残業を一切した事が無いの?」
「ほぉーーなるほど。残業なんていくらでもあるわい。」
「基本的に定時で完全に帰れる人なんていないのさ。だから大丈夫。」

彼にレクチャーを受けながらどんどん申告書を書き進めていった。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。