私が小学生の頃から父の書道が始まった。
日曜日はきまって書道だ。机に向かい墨を
する。やがて部屋はかいた書で歩く隙間も
なくなる。
日曜日の書道はやがて教師の資格をとる
までになっていた。定年後はライフワークと
して、益々書道づけの生活になっていた。
そんな父に、ご近所の子供から書道を教え
て欲しいと相談があった。父は断っていた。
しかし、母は違った。「おとうさんに頼んで
あげる、とにかく家にいらっしゃい」
「おとうさん、〇〇ちゃんが来ましたよ…」
父と一緒に書道する子ができた。ご近所の
子供が一人習い事が始まれば、僕も私もと
なり断ることが出来ない。あっと言うまに書
道教室になっていた。
たまに私が家に帰ると、家の中は子供達で
一杯で、父も母も先生と呼ばれ忙しそうにし
ていた。
89歳の母に電話する。「晩年の父は書道の
先生で、子供達に囲まれ楽しそうだったね」
と話したら、「父は日曜日には書道していたし
料理も上手で、私にとって最高のおとうさん
だったわ。あなたは遊ぶだけで…、今から
何かなさい」と言われてしまった。
外は雨、散歩に行く気にはならない。さて、何
をしますか。JOHN COLTRANEを聞きなが
ら考える。