私の読書記録

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一の悲劇 / 法月綸太郎

2025年03月19日 | 読んだ小説
                    


主人公の男性は、6年前に人妻と不倫していたが、妻を愛している事を再認識し短期間で関係を断った。
しかし、その女性が自分を捨てた主人公に罰を与えるようにわざと家族と共に近くに引っ越してきて、
息子は6年前のあなたとの子供だと言った。 実際にその子供は、主人公と同じような身体的特徴を持っ
ていた。 そして主人公は、かつての不倫相手の女性から執拗に関係再開を迫られる。

そんな折、誘拐事件が起こり主人公の息子が誘拐されたが、それは犯人が主人公のかつての不倫相手の
女性の子供を誤認して誘拐したものだった。 子供を間違えた事に気付いていない犯人から主人公へ身代
金要求の電話があり警察に連絡する。 刑事らと主人公夫婦、誘拐された子供の両親らが固唾をのむ中、
主人公が6千万円の身代金を用立て犯人の指示に従い身代金の受け渡しに向かうが失敗し子供は殺害され
てしまう。 息子が死んだのはあなたのせいだと主人公に詰め寄るかつての不倫相手の女性。

そんな主人公の息子も夫婦の実子ではなく妻の死んだ妹の子供を養子として迎えたものだった。
主人公は、誘拐事件の犯人は、自分の息子の顔もよく知らない義妹の夫で、自分の子供を取り返そうとし
てのものだと考えたが、義妹の夫には、犯行時刻に推理作家の法月綸太郎とずっと一緒にいたという完璧
なアリバイがあった。 そんな中で義妹の夫が密室状態で何者かに殺害されてしまう。

義妹の夫が殺害されたのは主謀者である犯人の共犯か、何か事件の真相を知っているから口を封じられた
と考えるのが自然で、 探偵役の法月綸太郎は、犯人は子供を間違えて誘拐したのではなく、最初から不
倫相手の女性の子供を狙ったものだと推理する。

そうなると事件に関する容疑者としての登場人物が、両家族夫婦と義妹の夫と主人公の妻の義父の6人
で、主人公は当然別にして不倫相手の女性が自分の最愛の子供を殺害するはずがないし、主人公の義父
は、主人公とその隠し子に苦々しい思いはあるだろうが殺人を犯すほどの動機があるとは思えない。 
そうなると義妹の夫は既に殺害されているから残りは主人公の妻か不倫相手の女性の夫しかいなくなり、
義妹の夫と不倫相手の女性の夫が面識や接点などあるはずがないから、おのずと犯人は主人公の妻しか
いなくなる。

事件の細かな真相とか役割とかアリバイの事は置いといても、まだ終盤前の段階で犯人当てがこんな簡単
でいいのかな? 終盤、不倫相手の女性は主人公の息子を誘拐し、主人公と妻を呼び寄せ妻に過去の不倫
をぶちまけるが、妻はすでにその事を知っていたのだった。 主人公は、隙を見て突撃し息子を助けよう
として刺され、不倫相手の女性は、主人公といっしょに来ていた警察に誘拐と傷害で逮捕される。

最後、病院から退院し妻の実家に預けていた子供と共に帰宅したら妻の姿はなく何故か法月綸太郎が家に
いた。 そして、法月綸太郎から事件の真相並びに犯人を教えてもらい自分の妻が犯人で自殺を遂げた後
だと知る事になる。 妻の犯行動機は、最初に妊娠した子供を掛かりつけの産婦人科の看護師だった夫の
不倫相手の女性に、お腹の子供を流産させられ子供が産めない体になった事(と妻は思っている)に対す
る復讐で、すべては過去に主人公が蒔いた種が原因によるもので悲しい事件だけど内容は面白かった。

院長選挙 / 久坂部 羊

2025年03月14日 | 読んだ小説
                    

☆☆
「白い巨塔」ならぬ「面白い巨塔」のコミカル路線な内容なのは読み始めてすぐに分かった。
日本最高の国立大学病院で院長が急死するが、病死か自殺か事故死か他殺なのか謎に包まれていた。
そんな中で4人の副院長の中から次の院長が選ばれる選挙が行われる事になる。

病院内のすべての科の中で人体の要である心臓を扱う循環器内科が一番偉いと豪語する徳富教授。
手術の腕は超一流だが内科を毛嫌いしている尊大でセクハラおかまいなしの消化器外科の大小路教授。
院内各科の中で最多の収益を上げている事で強気で守銭奴の眼科の百目鬼教授。
悪い意味で年長者に対してもハッキリと物を言う院内改革派で一番若く気性の荒い整形外科の鴨下教授。
この非常に癖のあるアクの強い4人による次期院長選前の激しい攻防が繰り広げられる。

とにかくこの4人が己の利益の事だけを考え、人目も憚らずお互い激しくいがみ合い罵り合う。
普通に考えたら大きな病院ほど各科が密接に繋がり連携しているから医療体制が円滑に回るはずなのに、
こんな病院はないだろう。 この辺が本作のコミカル路線故のドタバタ劇なんだろうけど、下手にただ
騒いでやり合うだけではバカバカしくてちょっとシラける。

でも、作中での医者というのは子供の頃から抜群に勉強ができて周りからチヤホヤされ、まともな人格形
成がされないまま大人になり、医者になってからも若い内から看護師や患者からも先生と上げ奉られ甘や
かされてきた、礼儀も常識もわきまえないろくでもない人間ばっかり等の言葉には改めて納得できたが。

やがて死んだ院長の死因に不審を抱いた警察が動き出すが、院長の死に対する謎の部分もミステリー作品
として真相があまりにも普通過ぎて、こんなの別に全然必要なかったし、シリアスに描いたら「白い巨
塔」と被る部分もあるからコミカル路線も悪くはないが、ドタバタ劇じゃなくてもう少し笑いの部分で
違ったアプローチをしてほしかった。 そして結局、院長選挙は、いろいろ疚しい所のある4人の候補者
の辞退から別の人物に決定しかけたが、その人物が院長の殺人容疑で逮捕されてしまい、うやむやのまま
で終わってしまう。

CSI:マイアミ 水中の悪魔 / ドン・コルテス

2025年03月09日 | 読んだ小説
                    

☆☆
CSIシリーズのマイアミ編。
フロリダ湾にある小島で若い女性の水死体が発見される。 女性はレイプされたうえにサメ用の水中銃で
撃たれ、更に模造のイルカに噛まれた痕があった。 マイアミ・デイド郡警察CSIの主任は、まずは海洋生
物学者の所を訪れイルカの生態の調査から始める。

CSIチームが捜査に当たる中、第2の事件が発生し、海中に沈んだ車の中から女性の死体が発見され、
その女性にも同様の傷痕があり同じ犯人による連続殺人事件と思われた。 各方面から捜査を進めていく
中で、以前にビーチで友人らと遊んでいた女性が、海中で半魚人に襲われたという情報も入手する。

CSIの捜査により犯人は、水中に病的な執着を持ち、ラテックスに性的な興奮を覚え、海軍の海洋哺乳類
訓練計画を憎悪している人物だと推測し、動物解放同盟のメンバーの中に犯人がいるかもしれないとして
同盟メンバーの事情聴取を行う。 更に犯人は、マニアの間では有名な半魚人の映画に強く執着し傾倒し
ているであろう事も判明する。 そして、事件が起こった街は、半魚人の映画の舞台で撮影が行われた所
でもあり半魚人が街の観光スポットにもなっていた。

そして、CSIの科学捜査、聞き込みにより動物解放同盟の中にいる犯人を割り出し、CSIの主任は海洋生物
学者の研究所で犯人と対峙するが、博士を人質に取った犯人から銃をプールに捨てろと言われ指示に従
う。 しかし、プールの中で飼育されている訓練されたイルカに合図を送りプールに沈んだ銃を取って
来させるという愉快痛快な作戦で見事犯人を射殺する。 こんな目からウロコ的な大逆転劇を、たった1
ページだけでサラっと描いてるだけなのは、せっかくのクライマックスなのに勿体ない。  

前回読んだラスベガスCSI編とは作者が違い、今回のはチームメンバーの個性もそれなりに描かれていて
メンバーの名前が覚えられないなんて事はなかった。 前回のも今作も翻訳者は同じだから、前回のが
あんなに読みづらかったのは翻訳のせいではなく、元々の原作が読づらく面白くなかったのだろう。
しかし、CSIは科学捜査班なので、素人には理解できないような鑑識に於ける科学捜査の専門的な小難しい
内容も描かれているが、話にリアリティーを持たせるためにはしょうがない部分ではあるだろう。

CSI:科学捜査班 鮮血の絆 / マックス・アラン・コリンズ

2025年03月01日 | 読んだ小説
                    

☆☆☆
10年前にラスベガスで発生したキャストと呼ばれる犯人が起こした連続猟奇殺人事件。
しかし、事件は解決に至らずお蔵入りとなっていたが、10年後にキャストの手口に酷似した殺人事件が
再び発生する。 CSIのリーダーは、10年前にキャストを追っていたCSIの元ボスに連絡しCSIのメンバー
らと共に事件の捜査に当たる。

私は海外小説も割と多く読む方だから慣れていると思うのだが、今回の作品は人の名前、状況、展開が
非常に頭に入ってきづらくて、すぐに覚えられた人物がCSIのリーダーである主人公とCSIの元ボスの2人
だけで、その他のメンバーは、なかなか名前が覚えられなかった。 おそらく個性的なメンバーがいない
事が原因だろうと思うし、CSIのメンバー以外の登場人物らの名前も覚えづらくて読むのに結構苦労した。 
人の名前が覚えられないと必然的に物語の状況や展開も理解しづらくなる。 
早い話が、人の名前、状況、展開が理解しづらい=つまらない作品という事になるのだが。
作品そのものが面白くないのか翻訳が下手なのか・・・。

読んでいて理解したのは、犯人の独特で特徴的な手口と、どうやら今回の犯人は10年前のキャスト事件の
模倣犯らしい事。 10年前の事件には、重要な容疑者が3人いたという事。 そうこうしている内に本物の
キャストが復活してまた殺人を始めた事などなど。

終盤少し前辺りからやっと登場人物を何とか把握できるようになり、普通の警察サスペンス物として面白
くはなってきた。 CSIは事件現場の指紋照合でキャストの模倣犯を特定し犯人の家に向かうが、そこには
争った跡だけあり誰もいなかった。 本物のキャストが模倣犯を連れ去ったと考え、3人の容疑者の中で
捜査の結果本命と思われていた犯人の家に向かい、キャストに殺されかけていた模倣犯もキャストも無事
逮捕する事ができた。

しかし、最後に署内でのキャストへの尋問で、CSIの元ボスの相棒が、キャストの父親に息子の犯行を黙認
するかわりに金銭を要求していた事が明るみに出る。 かつていっしょにキャストを追っていた相棒の裏
切り行為にCSIの元ボスはショックを受け深く傷つくというエンディングで終わる。 そんなにページ数の
多い作品ではないが、中盤過ぎまで分かりづらくてつまらない作品だった。 でも、何で犯行現場でキャ
ストを射殺しなかったのか。 そうすれば相棒の裏切りが発覚する事もなかったのに。

楽園のカンヴァス / 原田マハ

2025年02月25日 | 読んだ小説
                    


画家ルソーの研究家としての経歴を隠して美術館の監視員として働いていた早川織絵に、ニューヨーク
近代美術館の学芸部長ティム・ブラウンから彼女が勤める美術館を通して、展覧会にルソーの「夢」を
貸し出す条件として織絵を指名してきた。 実は2人は、17年前にスイスに住む富豪コレクターに招聘
され、彼が所持するルソーの「夢」に酷似した作品が、真作が贋作か見極めた方に絵を譲ると言われ
対決、交流した事があった。

富豪が2人に課した使命は、7日間の内に手掛かりとなる謎の古書を毎日1章づつ読んで最後に絵画の真贋
を判断するというもので、その古書というのが何とも安っぽいルソーの自叙伝みたいな内容で肩透かしを
食らったが、その理由も後で明らかになる。 最初ティムは、織絵に対して自分の方が知識も鑑定力も上
だとマウントを取ろうとするが、織絵の知識、慧眼さに一目置くようになり、やがて織絵の美しさ、聡明
さにも強く惹かれ7日間という短い間だったが交流を通して恋心を深めていく。

そんなティムと織絵のそれぞれの背後には、今回真贋鑑定するルソーの「夢をみた」の絵の下にピカソの
絵が隠されているかもしれないと考え、何としてでも絵を手に入れようとする人物らが暗躍していた。 

そして、7日後にティムは絵が真作であると確信しながらも、織絵とお腹の子供の幸せのために贋作だと
述べ、織絵は絵から溢れ出る情熱を感じ取り真作だと述べる。 ティムは織絵の自身の美術業界での将来
とか自身のこれからの幸せとかより、ただ純粋にルソーを愛して止まない心からの思いに心を動かされ
自身の判定を覆し、この絵がルソーの最高傑作だと言い換える。 そして、富豪は2人の真贋判定の勝負
はティムの勝ちとした。 ティムは、「夢をみた」を自由にできる権利を得て自身の美術業界での将来が
どうなってもいいと覚悟を決め富豪の孫娘に絵を譲る。

ティムは、古書を書いたのが「夢」「夢をみた」のモデルになっている女性で、富豪の正体はルソーの
絵を世の中で一番最初に認めたモデルの女性の夫である事も見抜いていた。 だからさほど学があるわけ
でもない洗濯女が書いた文章だから安っぽく感じたのだろうと私は理解した。 しかし、富豪がルソーの
絵を守るために今回のような事を行ったのなら腑に落ちない。 ティムと織絵のどちらが勝ったとして
も、その背後にいる者の手にルソー絵が渡ってしまうのだろうから、いくら多少の確執があるとはいえ
最初から絵を守ろうとしていた孫娘にルソーの絵を渡せば済んだだけだと思うのだが・・・。

そして、ラストは17年ぶりに再会するティムと織絵。 私は17年前のあの後、ティムは織絵と結ばれて
織絵のお腹の子の父親になる未来が良かったけど。 もちろん再会した今からでも遅くはないと思うが、
17年の時を経てもルソーの絵を通して変わることなく心が通じ合っている2人が素敵だった。