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楽園のカンヴァス / 原田マハ

2025年02月25日 | 読んだ小説
                    


画家ルソーの研究家としての経歴を隠して美術館の監視員として働いていた早川織絵に、ニューヨーク
近代美術館の学芸部長ティム・ブラウンから彼女が勤める美術館を通して、展覧会にルソーの「夢」を
貸し出す条件として織絵を指名してきた。 実は2人は、17年前にスイスに住む富豪コレクターに招聘
され、彼が所持するルソーの「夢」に酷似した作品が、真作が贋作か見極めた方に絵を譲ると言われ
対決、交流した事があった。

富豪が2人に課した使命は、7日間の内に手掛かりとなる謎の古書を毎日1章づつ読んで最後に絵画の真贋
を判断するというもので、その古書というのが何とも安っぽいルソーの自叙伝みたいな内容で肩透かしを
食らったが、その理由も後で明らかになる。 最初ティムは、織絵に対して自分の方が知識も鑑定力も上
だとマウントを取ろうとするが、織絵の知識、慧眼さに一目置くようになり、やがて織絵の美しさ、聡明
さにも強く惹かれ7日間という短い間だったが交流を通して恋心を深めていく。

ティムと織絵のそれぞれの背後には、今回真贋鑑定するルソーの「夢をみた」の絵の下にピカソの絵が隠
されているかもしれないと考え、何としてでも絵を手に入れようとする人物らが暗躍していた。 

そして、7日後にティムは絵が真作であると確信しながらも、織絵とお腹の子供の幸せのために贋作だと
述べ、織絵は絵から溢れ出る情熱を感じ取り真作だと述べる。 ティムは織絵の自身の美術業界での将来
とか自身のこれからの幸せとかより、ただ純粋にルソーを愛して止まない心からの思いに心を動かされ
自身の判定を覆しこの絵がルソーの最高傑作だと言い換える。 そして、富豪は2人の真贋判定の勝負は
ティムの勝ちとした。 ティムは、「夢をみた」を自由にできる権利を得て自身の美術業界での将来がど
うなってもいいと覚悟を決め富豪の孫娘に絵を譲る。

ティムは、古書を書いたのが「夢」「夢をみた」のモデルになっている女性で、富豪の正体はルソーの
絵を世の中で一番最初に認めたモデルの女性の夫である事も見抜いていた。 だからさほど学があるわけ
でもない洗濯女が書いた文章だから安っぽく感じたのだろうと私は理解した。 しかし、富豪がルソーの
絵を守るために今回のような事を行ったのなら腑に落ちない。 ティムと織絵のどちらが勝ったとして
も、その背後にいる者の手にルソー絵が渡ってしまうのだろうから、最初から絵を守ろうとしていた孫娘
に渡せば済んだだけだと思うのだが・・・。

そして、ラストは17年ぶりに再会するティムと織絵。 私は17年前のあの後、ティムは織絵と結ばれて
織絵のお腹の子の父親になる未来が良かったけど。 もちろん再会した今からでも遅くはないと思うが。
17年の時を経てもルソーの絵を通して変わることなく心が通じ合っている2人が素敵だった。


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