★☆☆☆
南フランスのマルセイユ、港町カシスを舞台にした医学ミステリー。
まず物語の導入部が、フランスの精神医学の講演会の控室での食事会とか、講演場面から始まるが、
これがつまらなくて本当に小説での物語の導入部、序盤というのは非常に大事で、これがつまらないと
最初から読む気が失せてしまうから非常に残念。
その後に大学病院の解剖実習室で首なし死体が発見されるが、普通に考えてとんでもない大事件だと思う
のだが、そんなに大学病院内で大騒ぎになっているふうもなくて、主人公の日本人精神科医が地味に調査
を始めるだけというのが解せない。
それから主人公の周りで不可解な事がいくつか起こるが、大体大学の研究室の教授や助教授らが暴走して
脳の人体実験を行っているんだろうとは早い段階で想像がつくし、主人公と恋人の車の中での会話で、恋
人も一味の一人だという事も想像がついてしまいミステリーとしてはどうなんだろう。
序盤からずーっとつまらないままだったけど、終盤の主人公が脳研究施設に潜入した辺りからようやく面
白くなってきた。 そして、主人公の恋人が覚悟を決めた2人の最後のデートの悲しい結末。 更に恋人
が主人公に宛てた手紙で、自身が子供の頃の母娘と父親の悲しく辛い運命を吐露する所は心を揺さぶられ
るし、彼女が教授の下で行っていた狂気の人体実験に対して後悔どころか確固たる意義、信念を持ってい
た所に逆に崇高ささえ感じた。
でも、何で主人公は、教授らが人体実験を行うグループの仲間に入れてもらえなかったんだろうか。
多分、人体実験に参加させるには主人公の妙な正義感が教授らに危険視されていたのかもしれない。
それにしても収監された恋人を何年も待ち続ける事になった主人公は・・・。