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元ヤクザのサラリーマンが、裏社会と政界が繫がる闇に迫るサラリーマン・ハードボイルド小説。
一部上場企業の飲料メーカに宣伝部課長として勤める主人公は、2週間後にリストラによる自主退職が
決まっていた。 そんな時に20年前の入社時に便宜を図ってもらった当時の宣伝部長で現在の会長から
呼び出され、会長自身が偶然撮ったという人命救助のビデオを会社製品のCMに使えないかと打診される。
しかし、その映像を調べたらCG加工されたものだった。 その事を会長に話しCMの件はなしになったが、
その夜に会長が謎の自殺を遂げる。 主人公は、会長に入社時の恩義もあり会長の自殺と例のビデオの事
を調べていく。
調べを進めていくと裏社会の人間に突然待ち伏せされ襲われるが、とりあえず普通のサラリーマンだった
主人公だが、裏社会相手には、奴ら以上の非情な暴力で対抗するバイオレンス度が一気に表面化する。
しかし、何で主人公は、ずーっと高熱で体調が最悪なのを押してまで会長の自殺を調べるのか分からな
い。 ちゃんと風邪を治して2週間後に退職してからゆっくり調べても何も問題はないはずだ。
そして、主人公に胸キュンな思いを寄せ、主人公の体を気遣いながらサポートする部下の人妻女性だが、
そのキャラに読んでいるとこっちも胸キュンしてしまいハードボイルド小説の一服の清涼剤だ。
今回の事は、20年前に主人公と会長が出会うきっかけになった女優と会長との、その後の関係に端を発
していて、女優の父親は裏社会の人間という事で会長のスキャンダルを裏社会に握られており、女優の妹
(実は娘)も関係する例のCGビデオに、裏社会と政界の繫がりも含め複雑に絡んだものであった。
そして、会長は愛する女性と、その娘を守るために自ら命を絶ったのであるが、もっと以前に、もっと他
の解決方法がなかったのかな。
他に気になったのが、主人公は会長や同い年の経営企画部長と気心が知れている間柄なのかもしれない
が、社内で会長や上役にタメ口は、主人公の経歴や作中のキャラがどうであれ主人公の魅力と価値をか
えって落としてしまっているように思えたし、主人の正体をなくすほど泥酔する癖もただみっともない
だけだった。 最後に主人公は会長の事を、まれに見る高潔な男と言ったが、ヤクザの組長の娘と不倫
し、会社経営にも失敗した男が高潔な人物なのか疑問だった。