私の読書記録

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CSI:マイアミ 水中の悪魔 / ドン・コルテス

2025年03月09日 | 読んだ小説
                    

☆☆
CSIシリーズのマイアミ編。
フロリダ湾にある小島で若い女性の水死体が発見される。 女性はレイプされたうえにサメ用の水中銃で
撃たれ、更に模造のイルカに噛まれた痕があった。 マイアミ・デイド郡警察CSIの主任は、まずは海洋生
物学者の所を訪れイルカの生態の調査から始める。

CSIチームが捜査に当たる中、第2の事件が発生し、海中に沈んだ車の中から女性の死体が発見され、
その女性にも同様の傷痕があり同じ犯人による連続殺人事件と思われた。 各方面から捜査を進めていく
中で、以前にビーチで友人らと遊んでいた女性が、海中で半魚人に襲われたという情報も入手する。

CSIの捜査により犯人は、水中に病的な執着を持ち、ラテックスに性的な興奮を覚え、海軍の海洋哺乳類
訓練計画を憎悪している人物だと推測し、動物解放同盟のメンバーの中に犯人がいるかもしれないとして
同盟メンバーの事情聴取を行う。 更に犯人は、マニアの間では有名な半魚人の映画に強く執着し傾倒し
ているであろう事も判明する。 そして、事件が起こった街は、半魚人の映画の舞台で撮影が行われた所
でもあり半魚人が街の観光スポットにもなっていた。

そして、CSIの科学捜査、聞き込みにより動物解放同盟の中にいる犯人を割り出し、CSIの主任は海洋生物
学者の研究所で犯人と対峙するが、博士を人質に取った犯人から銃をプールに捨てろと言われ指示に従
う。 しかし、プールの中で飼育されている訓練されたイルカに合図を送りプールに沈んだ銃を取って
来させるという愉快痛快な作戦で見事犯人を射殺する。 こんな目からウロコ的な大逆転劇を、たった1
ページだけでサラっと描いてるだけなのは、せっかくのクライマックスなのに勿体ない。  

前回読んだラスベガスCSI編とは作者が違い、今回のはチームメンバーの個性もそれなりに描かれていて
メンバーの名前が覚えられないなんて事はなかった。 前回のも今作も翻訳者は同じだから、前回のが
あんなに読みづらかったのは翻訳のせいではなく、元々の原作が読づらく面白くなかったのだろう。
しかし、CSIは科学捜査班なので、素人には理解できないような鑑識に於ける科学捜査の専門的な小難しい
内容も描かれているが、話にリアリティーを持たせるためにはしょうがない部分ではあるだろう。

CSI:科学捜査班 鮮血の絆 / マックス・アラン・コリンズ

2025年03月01日 | 読んだ小説
                    

☆☆☆
10年前にラスベガスで発生したキャストと呼ばれる犯人が起こした連続猟奇殺人事件。
しかし、事件は解決に至らずお蔵入りとなっていたが、10年後にキャストの手口に酷似した殺人事件が
再び発生する。 CSIのリーダーは、10年前にキャストを追っていたCSIの元ボスに連絡しCSIのメンバー
らと共に事件の捜査に当たる。

私は海外小説も割と多く読む方だから慣れていると思うのだが、今回の作品は人の名前、状況、展開が
非常に頭に入ってきづらくて、すぐに覚えられた人物がCSIのリーダーである主人公とCSIの元ボスの2人
だけで、その他のメンバーは、なかなか名前が覚えられなかった。 おそらく個性的なメンバーがいない
事が原因だろうと思うし、CSIのメンバー以外の登場人物らの名前も覚えづらくて読むのに結構苦労した。 
人の名前が覚えられないと必然的に物語の状況や展開も理解しづらくなる。 
早い話が、人の名前、状況、展開が理解しづらい=つまらない作品という事になるのだが。
作品そのものが面白くないのか翻訳が下手なのか・・・。

読んでいて理解したのは、犯人の独特で特徴的な手口と、どうやら今回の犯人は10年前のキャスト事件の
模倣犯らしい事。 10年前の事件には、重要な容疑者が3人いたという事。 そうこうしている内に本物の
キャストが復活してまた殺人を始めた事などなど。

終盤少し前辺りからやっと登場人物を何とか把握できるようになり、普通の警察サスペンス物として面白
くはなってきた。 CSIは事件現場の指紋照合でキャストの模倣犯を特定し犯人の家に向かうが、そこには
争った跡だけあり誰もいなかった。 本物のキャストが模倣犯を連れ去ったと考え、3人の容疑者の中で
捜査の結果本命と思われていた犯人の家に向かい、キャストに殺されかけていた模倣犯もキャストも無事
逮捕する事ができた。

しかし、最後に署内でのキャストへの尋問で、CSIの元ボスの相棒が、キャストの父親に息子の犯行を黙認
するかわりに金銭を要求していた事が明るみに出る。 かつていっしょにキャストを追っていた相棒の裏
切り行為にCSIの元ボスはショックを受け深く傷つくというエンディングで終わる。 そんなにページ数の
多い作品ではないが、中盤過ぎまで分かりづらくてつまらない作品だった。 でも、何で犯行現場でキャ
ストを射殺しなかったのか。 そうすれば相棒の裏切りが発覚する事もなかったのに。

楽園のカンヴァス / 原田マハ

2025年02月25日 | 読んだ小説
                    


画家ルソーの研究家としての経歴を隠して美術館の監視員として働いていた早川織絵に、ニューヨーク
近代美術館の学芸部長ティム・ブラウンから彼女が勤める美術館を通して、展覧会にルソーの「夢」を
貸し出す条件として織絵を指名してきた。 実は2人は、17年前にスイスに住む富豪コレクターに招聘
され、彼が所持するルソーの「夢」に酷似した作品が、真作が贋作か見極めた方に絵を譲ると言われ
対決、交流した事があった。

富豪が2人に課した使命は、7日間の内に手掛かりとなる謎の古書を毎日1章づつ読んで最後に絵画の真贋
を判断するというもので、その古書というのが何とも安っぽいルソーの自叙伝みたいな内容で肩透かしを
食らったが、その理由も後で明らかになる。 最初ティムは、織絵に対して自分の方が知識も鑑定力も上
だとマウントを取ろうとするが、織絵の知識、慧眼さに一目置くようになり、やがて織絵の美しさ、聡明
さにも強く惹かれ7日間という短い間だったが交流を通して恋心を深めていく。

そんなティムと織絵のそれぞれの背後には、今回真贋鑑定するルソーの「夢をみた」の絵の下にピカソの
絵が隠されているかもしれないと考え、何としてでも絵を手に入れようとする人物らが暗躍していた。 

そして、7日後にティムは絵が真作であると確信しながらも、織絵とお腹の子供の幸せのために贋作だと
述べ、織絵は絵から溢れ出る情熱を感じ取り真作だと述べる。 ティムは織絵の自身の美術業界での将来
とか自身のこれからの幸せとかより、ただ純粋にルソーを愛して止まない心からの思いに心を動かされ
自身の判定を覆し、この絵がルソーの最高傑作だと言い換える。 そして、富豪は2人の真贋判定の勝負
はティムの勝ちとした。 ティムは、「夢をみた」を自由にできる権利を得て自身の美術業界での将来が
どうなってもいいと覚悟を決め富豪の孫娘に絵を譲る。

ティムは、古書を書いたのが「夢」「夢をみた」のモデルになっている女性で、富豪の正体はルソーの
絵を世の中で一番最初に認めたモデルの女性の夫である事も見抜いていた。 だからさほど学があるわけ
でもない洗濯女が書いた文章だから安っぽく感じたのだろうと私は理解した。 しかし、富豪がルソーの
絵を守るために今回のような事を行ったのなら腑に落ちない。 ティムと織絵のどちらが勝ったとして
も、その背後にいる者の手にルソー絵が渡ってしまうのだろうから、いくら多少の確執があるとはいえ
最初から絵を守ろうとしていた孫娘にルソーの絵を渡せば済んだだけだと思うのだが・・・。

そして、ラストは17年ぶりに再会するティムと織絵。 私は17年前のあの後、ティムは織絵と結ばれて
織絵のお腹の子の父親になる未来が良かったけど。 もちろん再会した今からでも遅くはないと思うが、
17年の時を経てもルソーの絵を通して変わることなく心が通じ合っている2人が素敵だった。

あなたは、誰かの大切な人 / 原田マハ

2025年02月19日 | 読んだ小説
                    

☆☆☆
どんなに無能でダメな人間でも、どんなに惨めでダメな人生でも、それでもきっと自分は誰かの大切な人
なんだと思いたい、思わせてくれと願いながら読み進めた短編集だったが・・・。

大切な人とは、家族だったり、友達だったり、同僚だったり。 
この作品の中でも、いろんな大切な人との心の関係が描かれているが、ちょっと浮世離れした人とか、
端から見たらオシャレでカッコイイ成功した人生を生きているような人とかの話が多くて、私としては
正直、もっと身近で普通の地に足が着いている人達の話を期待していたから、それほど感情移入できな
くて残念だった。

そんな中で「無用の人」の親子関係が、ほんの少しだけ心に引っかかった。 スーパーの野菜担当で昇進
もできずに長年黙々と働きながらもリストラされた父親。 妻からも、その存在を無用と云われた父親。 
でも、美を愛し娘の事を理解していた心豊かで優しい父親。 父親が生きていた間は一方通行のような
思いも、深い所での心の繫がりや愛情に多くの言葉は必要ないのかもしれないと思わせてくれる素敵な
いい話だった。 

私の父親も気が弱くて無能で生きている間は、家族みんなから疎ましがられていた無用の人だったが、
そんな父が死んでから、ずーっと父が、朝早くから真面目に一生懸命に働いてくれていたから我が家の
生活が成り立っていたという事を今更ながらに実感した。 こんな私は、当時は無用だと思っていた父の
足元にも及ばない愚かなダメ人間で、父は家族にとって大切な人だったんだと、やっと父の凄さ偉大さに
死んでから気付けたという次第で情けない息子だ。

当たり前のように与えられる物には、なかなか気づけず感謝できない。 でも、そんな当たり前のような
幸せを何も言わず黙って与え続けてくれる人が一番尊くて大切な人なんだ。(まるで太陽のように)
この作品には、そんな普通の暮らしの中の素朴で温かい心の繫がりの物語を期待していたのだが、
少しだけ私の思いとは違ったか。

学生街の殺人 / 東野圭吾

2025年02月16日 | 読んだ小説
                    

☆☆
寂れた学生街にある喫茶店の3階にあるビリヤード場で働く主人公の青年の周りで不可解な連続殺人事件
が起こる。 まずはビリヤードフロアを担当していた男性が自宅アパートで刺殺され、次は主人公の年上
恋人女性が自宅マンション6Fのエレベーター前で刺殺され、更に恋人女性がボランティアで毎週訪れて
いた児童施設の園長が、学生街に設置されたクリスマス・イルミネーションの前で刺殺される。
一連の事件は、この学生街に関係する者の犯行なのだろうか? そして、その犯行動機は?
主人公の青年は、殺害された恋人の妹と共に事件を調べていく。

話が進んでいく中で、コンピュータのAIテクノロジーが絡んでいる産業スパイである事が浮上してくる
が、ミステリー小説だから犯人は、主人公、殺害された人物以外の登場人物の中に必ずいるはずで、
ミステリーとしてはインパクトのある意外な人物が犯人というのが望ましいわけだが、最初に明らかに
なった犯人が作中での印象の薄い人物でショボイし、学生街とも特に関係がなくてガッカリだった。 

でも、それで事件の完全解決ではない事に主人公が気が付き、園長を殺害した犯人は別人で、2つの殺人
事件と園長の殺人事件は二重構造の事件だったわけだ。 そして、ミステリーの定石通りの案の定な犯人
を追求する為に、犯人が結婚式を挙げる教会へ向かうが、そんな最高に幸せな瞬間の時に、最悪な事を告
げに行くくらい犯人の事が許せないのなら(恋人と姉が殺害されるように仕掛けた人物なのだから許せな
くて当然)、中途半端な事を言ってないで最初から警察に犯人を引き渡せばいいのにと思う。 
それにしても女の友情なんて所詮こんなものなのかと読者に思わせてしまうのも残念な所だ。

元々、主人公の青年が、この事件の事を調べ出したのが、殺された恋人の自分が知らない秘密を知りた
かったからなのだが、そこまで思うほど恋人の事を愛していたとは文中からは最後までまったく伝わっ
てこなくて、主人公の行動の動機が希薄に思われ、それがこの作品の最大の弱点かもしれない。

本作は東野圭吾の初期作品であるらしいが、全体を通して暗くうら寂しい雰囲気が漂い、物語のテンポも
妙にモタモタした感があり無駄にページ数が多くて、その後の作者の映像化される事を意識した華やかな
エンターテイメント路線とは明らかに違った趣がある。