私の読書記録

ミステリー、サスペンス、アクション
ファンタジー、SF、恋愛、ハートフル
社会派、時代物、何でも読みます

ホテル・コンシェルジュ / 門井慶喜

2025年01月13日 | 読んだ小説
                    

☆☆☆
ホテルのコンシェルジュと、そのアシスタントをする事になったフロントの女性スタッフが、難題?を
解決していくドタバタコメディーの連作短編集だがマジでつまらない。

ホテルのエグゼグティブスイートに長期間滞在している名家の御曹司で大学生の男が、毎回厄介事を
コンシェルジュの男性に持ち込んでくるのだが、それがホテル内での事でコンシェルジュが上客の
ために格段のサービスをするのなら分かるが、コンシェルジュが問題を解決するのが、御曹司の伯母
の家での事、御曹司が飲みに行った店での事、御曹司のアルバイト先での事、御曹司の実家での事と
か・・・。 いくら上客でもコンシェルジュが、そんな事までするかなと読んでいてシラけてしまう。

そして、この御曹司がマンガみたいなキャラの世間知らずのお坊ちゃんで、大学を留年し頭の上がらな
い伯母に、1泊21万円の部屋の半年間に渡る長期の宿泊費を支払ってもらいながら、その部屋から大学
に通っている。 しかし、そのマンガみたいなキャラも、ドタバタコメディーもつまらなさ過ぎてまるで
笑えないし、まったく楽しくもないしょーもない作品だった。
私的には、ホテル内でのコンシェルジュの働きを描いた小説が読みたかった。

密航者 / ジェイムズ・S・マレイ、ダレン・ウェアマウス

2025年01月09日 | 読んだ小説
                    


異常な連続小児惨殺事件の陪審員を務めた主人公の大学の女性心理学科長。
評議の結果、容疑者は無罪放免となり陪審員らは、被害者児童家族から恨まれ、マスコミや世間からも猛
バッシングを受けていた。 特に、それらの矢面に自ら立った主人公は、精神的に疲弊し気分のリフレッ
シュのために子供達と結婚予定の恋人と共に大西洋を渡るニューヨークとイギリス間の豪華客船の旅に出
る。 しかし、出航直後から不穏な気配を感じ、ついにその船内で、あのサイコパスなシリアルキラーの
連続小児惨殺犯と同じ手口の連続殺人事件が起こる。

主人公は、あの連続殺人犯が船に乗っていると確信して船内警備員や恋人に訴えるが信じてもらえない。
そして、シリアルキラーの魔の手が主人公の双子の子供に迫ってくる。 主人公は船内で家族を守る事が
できるのか。 話は単純明快にスピーディーに、ストレートに展開していく。

話のテンポがいいから読み易くて面白いのだが、その分、主人公家族や犯人の人物が描き切れてなくて
深みが足らないし、連続小児惨殺事件の裁判の暴露本で主人公を辛辣にバッシングした著者で、主人公
の敵みたいな男を、序盤で簡単に殺して早々に退場させてしまうなんて、せっかくこんなに美味しい設定
の人物なのに、もっと上手く使わないなんてもったいない。

そして、ラストで犯人に浴びせた主人公の最後の一言には驚かされたが、それなら何で記者会見を開いて
私が無罪の票を投じたと嘘の発表をしたのか。 陪審員で知り合っただけの軽い友人を救うために、自身
ばかりか何よりも一番大切なはずの双子の子供や恋人を犠牲にしたのか。 この主人公が家族を犠牲にし
て危険に晒したり、裁判の暴露本の出版発表会に乗り込んで暴れたり、船内で犯人を捜すために理性を
欠いた行動を取ったりと、主人公の異常行動の方もかなり目立っていて、とても心理学の専門家とは思え
なかった。 

幻の女 / ウイリアム・アイリッシュ

2025年01月04日 | 読んだ小説
                    


80年以上前に書かれた名作サスペンスの新訳版らしい。
主人公の男は、離婚で揉めている妻と喧嘩をした後、街で出会った風変わりな帽子を被った女と酒を
飲み、食事をし、演劇を観て6時間ほどいっしょに過ごした後、家に帰ったら妻が殺害されていた。
警察に妻の殺人容疑で逮捕された主人公は、女と一緒にいたとアリバイを訴えるが、バーやレストランの
従業員、タクシーの運転手の誰もが、主人公は1人だけで同伴の女などいなかったと証言される。
そして、主人公自身も、その幻の女の容姿を何故かまったく憶えていなかった。

本作は、主人公の死刑執行までの5か月間をカウントダウンしていく形で描かれ、その間に主人公の無実を
立証しようと刑事、親友、不倫相手の女性が幻の女を捜すために奮闘する。

主人公と一緒にいたという女は、普通に考えたら幽霊か主人公の幻覚とかでなければ、バーやレストラン
の従業員らの証言が嘘なのだと思うが、彼らを買収して嘘の証言をさせて、尚且つ主人公の妻を殺害した
真犯人は、ミステリーのセオリーで云えば親友の男なんだろうなと思って読んでいた。
しかし、それにしても主人公が、6時間も一緒にいた女の容姿を憶えていないなんてあり得ないだろう。

さすが名作と呼ばれているだけあって面白かったが、真相は大体私の想像した通りで捻りが足りないし、
中盤の中だるみも少しあったりはしたが、一番の致命的なツッコミ所は、犯人である親友が、主人公と
幻の女が一緒にいた所を目撃している人物らを買収するために、レストランも劇場も終わっていて誰にも
訊けない深夜2時から4時までのたった2時間で、名前も住所も分からない目撃者の従業員やタクシー
運転手を捜し出して買収を成功させるなんてどう考えてもできるわけがない。 

そして、幻の女の正体もちょっとショボイものだったし、主人公が幻の女の容姿を、まったく憶えていな
かった事に対する理由の説明が何もなくて非常に不明瞭なままだ。

6時間後に君は死ぬ / 高野和明

2024年12月29日 | 読んだ小説
                    

☆☆
他人の未来が見えるという大学院生の山葉圭史が、各話に重要なキーマンの脇役として登場し、女性の
運命を予言したり、催眠術で少女の1日の記憶を消したり、女性の恋を占ったりと主人公に関わってくる
非現実的な連作短編集。 各内容的には、ミステリー、ファンタジー、ホラー、サスペンスとバラエ
ティーに富んでいるが、なんかと云うか絶対的に山葉圭史の存在が釈然としない。

「6時間後に君は死ぬ」は、突然に知らない男から「6時間後に君は死ぬ」なんて言われたら、その男が
気味が悪くて、女性なら一刻も早く男から離れたいと思うのが普通じゃないのか。

「時の魔法使い」は、心温まる良質のファンタジーだが、珠玉のというほどではないまぁまぁの出来だ。
でも、いい作品には違いないので、もっともっと細部を練り直して長編で読んでみたい。

「恋をしてはいけない日」は、こんな服を着替えるようにしていとも簡単に何度も男を替える女が、
どのような恋をしてもまったく心に響くわけがないし興味もない。

「ド-ルハウスのダンサー」は、プロのダンサーを目指す女性の苦悩と葛藤を描いているが、その女性の
一時期の人生は、20年以上前に山葉圭史の祖母に予言されていてドールハウスの人形で現されていたとい
う話で、これもいい作品なので内容を膨らませて長編にしてもいいかもしれない。

「3時間後に僕は死ぬ」は、山葉圭史が自身の死を予言するが、予言に関係している者が、どう意図的に
行動を変えようが、何があっても山葉圭史の予言は絶対に外れないという事が大前提で成り立っている
はずなのに、最後に予言が関係者の行動によって外れる。 普通なら予言の大惨事がハッピーエンドに
なって良かったなだけど素直には喜べない。 この掟破りの展開で逆に評価が上がったという読者もいる
だろうと思うけど、私的には自分の作品を自分で破壊してどうすんだという思いだ。

カシスの舞い / 帚木蓬生

2024年12月21日 | 読んだ小説
                    

☆☆☆
南フランスのマルセイユ、港町カシスを舞台にした医学ミステリー。
まず物語の導入部が、フランスの精神医学の講演会の控室での食事会とか、講演場面から始まるが、
これがつまらなくて本当に小説での物語の導入部、序盤というのは非常に大事で、これがつまらないと
最初から読む気が失せてしまうから非常に残念。

その後に大学病院の解剖実習室で首なし死体が発見されるが、普通に考えてとんでもない大事件だと思う
のだが、そんなに大学病院内で大騒ぎになっているふうもなくて、主人公の日本人精神科医が地味に調査
を始めるだけというのが解せない。

それから主人公の周りで不可解な事がいくつか起こるが、大体大学の研究室の教授や助教授らが暴走して
脳の人体実験を行っているんだろうとは早い段階で想像がつくし、主人公と恋人の車の中での会話で、恋
人も一味の一人だという事も想像がついてしまいミステリーとしてはどうなんだろう。

序盤からずーっとつまらないままだったけど、終盤の主人公が脳研究施設に潜入した辺りからようやく面
白くなってきた。 そして、主人公の恋人が覚悟を決めた2人の最後のデートの悲しい結末。 更に恋人
が主人公に宛てた手紙で、自身が子供の頃の母娘と父親の悲しく辛い運命を吐露する所は心を揺さぶられ
るし、彼女が教授の下で行っていた狂気の人体実験に対して後悔どころか確固たる意義、信念を持ってい
た所に逆に崇高ささえ感じた。

でも、何で主人公は、教授らが人体実験を行うグループの仲間に入れてもらえなかったんだろうか。
多分、人体実験に参加させるには主人公の妙な正義感が教授らに危険視されていたのかもしれない。
それにしても収監された恋人を何年も待ち続ける事になった主人公は・・・。