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中堅食品会社の経理課に勤める32歳で年収400万の真面目で気弱な独身男性が宝くじで2億円を当てる。
この「宝くじが当たったら」というタイトルだけで庶民の心を擽られ思わず本を手に取ってしまった。
しかし、この主人公は頭が悪くて、当たった翌日に宝くじを買った売り場に確認に行き、売り場の周りに
いた人達に高額当選者だという事が知れてしまう。 更にすぐに当選金の換金のために、会社の仕事で、
しょっちゅう訪れている顔馴染の銀行へ行ってしまい、更に更に当選を伝えた母親が、嬉しくて親戚一同
や隣近所にも話してしまい顔も名前も知らない遠い親戚が現れ出す。
そうこうしている内に、慈善団体から寄付を求める電話が頻繁に掛かってくるようになり、ネットで2億
円当選者として顔も名前も勤め先も身バレしてしまい、主人公は、会社の名前がネットに出た事で自ら会
社にも当選を報告しなければならなくなり社長からも叱責される。
開き直った主人公は、2億円当選した事をフェイスブックで公表し、慈善団体に3千万円寄付し、両親や
親戚の海外旅行代と実家の大規模リフォーム代と妹の結婚費用を出し、会社の同僚や学生時代からの友人
それぞれ100人程に飲食代数百万円奢り、それほど親しくない会社の同僚の結婚式にも呼ばれるようにな
り、それぞれ30万円ほど包み、学生時代からの友人や会社の同僚らが自由に集うセミナー兼イベントを
何度も行い、その費用を全額負担し、更に投資で騙され4000万円を持ち逃げされ、トドメは親友に2度も
裏切られ負債を背負い、結局これらすべてで2億円を使い切ってしまい会社もクビになる。
別に自分や実家のためにお金を散財するのならいいけど、主人公ではなく主人公の持つお金に敬意を示す
だけの連中に何度もタダで飲み食いさせるのはまったく信じられない。 オマケにリフォーム中の家も放
火されてしまう。 結局、いろいろあって家族にも会社にも友人にも迷惑をかけただけで誰からも本気で
感謝などされていない。
よく宝くじで億の金が当たったら、親兄弟にも場合によっては配偶者にも知らせてはいけないと云われて
いるのに、この主人公は、本当にお人好しでバカの極みなんだろうと思う。
最後は、お金での結びつきではない本当の愛を手に入れる事ができてめでたしで終わるのはいいけど、
私は読んでいて無駄で無意味な金ばかりを使った主人公に只々不快、不愉快でしかなかったし、内容は
人の不幸話で面白いのだけど、こんなに胸クソ悪い小説も久しぶりかもしれない。