【もう肉も卵も牛乳もいらない!】6p 本書に寄せて より
米国公衆衛生局の前局長C・エヴァレット・クープによると、米国人のほぼ70%は食事に関係する病気で命を落としている。
米国人の二人に一人は、こぞって心臓病でこの世を去る。米国人の三分の一はガンを発症し、四人に一人はそれで亡くなる。
研究に次ぐ研究で、食事法と健康との切っても切れない関係が証明されている。
健康で長い生涯を望むなら、もうこうした事実に頬かむりすることはできない。
しかしこれらの数字は、二つのごく単純な行動によってがらりと変えることができる。
動物性食品を控えることと、有機栽培の野菜や果物を選ぶことである。
ロマ・リンダ大学の研究では、ヴェジタリアンの男性グループは、肉を食べる比較対象グループよりも平均して七年も長生きしている。
ドイツやフィンランドでの各種研究でも、動物性食品をまったく食べない人々――つまりヴィーガン――は、そうでない人々よりも二五年間も寿命が長いことが証明されている。
私も数年前にヴィーガンになった。
暮らしは明らかに良くなり、おそらく寿命も伸びていることだろう。
私のような人間にもこうした変化の必要がわかるのなら、誰にだってわかるはずだ。
なにしろ私は、四代続いた農場主、牧場主、そして家畜肥育場経営者なのだから。
私は肉牛を育て、防虫剤や除草剤を穀物畑に撒き、最上の肉を食べていた。
しかし今では、世界中を旅して人々に説き続けている――食事に含むべき動物性食品の適量はゼロです、と。
私は一代で、畜産農家からヴィーガンへ、そして国際ヴィーガニズム・ユニオンの会長へと転身した。
私が生まれたのは第二次世界大戦中、モンタナの田舎町の小さな有機酪農場だった。
当時、子育てとは庭で働かせることで、これが土いじりや農業への愛着を私に植え付けた。私は農家以外の仕事にあこがれた事がない。
大学では「化学がもたらすより良い暮らし」を学んだ。
農業の学位を取ると、小さな有機農場を一大アグリビジネスに育て上げるのだという決意を胸に実家に戻った。
二、三年もすると、数千エーカー(1エーカーは約4425平方メートル)の穀物農場、数千頭の牛、そして大勢の使用人を抱える身になっていた。
まるで、夢が叶ったようだった。
唯一の問題は、農場周辺の環境が様変わりしつつあったことだった。
鳥は死に、木々は枯れ、土は変質していった。
牛に数千ドル分も買い入れた化成製品が、農場に大きな悪影響を与えていたのだ。
私はそうした変化を見ながらも、これも最先端の農法を試す代償と割り切った。
そして一九七九年、脊髄の腫瘍のため、私は下半身不随になった。
もう一度歩けるようになる見込みは100万分の1もなかった。
恐怖には、来し方を振り返り、まったく新しい角度で生涯最大の間違いに気づかせてくれる力がある。
病院のベッドで一晩じゅう天井を眺めながら翌日の手術を待つ私の脳裏に、それまで顧みなかったさまざまなことが去来した。
私は家族伝来の農場を殺していた。化学物質で土を、鳥たちを、木々を殺していた。
自分が何より愛していたものを殺していたことから、もう目をそむけるわけにはいかなかった。
退院できたのは、神の恩寵だった。
一九七九年一二月からというもの、私の人生は一変した。
レイテェル・カールスンの『沈黙の春』を読み、彼女が語っていた物事のすべてが自分の農場にあることに気づき、自ら撒いた化学物質が世界に何をしていたのかを悟った。
現代的な新農法からの撤退は想像していたよりもずっと難しく、一九八三年にはついに音を上げ、負債弁済のために農場の大半を売った。
しかし、農法を変えるという誓いは、決して破らなかった。
今日の世界人口は、私が生まれたときの二倍に達している。
七五,五歳という米国人の平均余命まで生きれば、私は世界人口がさらに倍になるのを目にするだろう。
自分の生涯に世界人口が四倍になると思うと、目がくらみそうになる。
私たちは、自らを支える資源を失いつつある。
地球に宿る寄生虫のように振るまい、宿主のことなどまるでお構いなし。
自分自身についても、人類や地球の将来についても、ほとんど何も考えていない。
私たちは人類史でもっともわずかな清水、表土、木々しか持っていない。
米国は世界の主要穀物地帯と思われている。
しかし米国式農法は、この惑星や将来をおよそ顧慮していない。
1カロリーの穀物を生産するのに、化成製品や農機具を駆使して16カロリーのエネルギーを費やしているのだ。
同じく、1カロリーの肉を生産するのに、70カロリーのエネルギーを使っている。
今日の肉類を中心とした国民食を支えるためにエネルギー集約型の無機農法を続けていれば大変なことになると知るのに、高度な科学的知識は要らないはずだ。
本書を読むことは、自らの人生を質・量(寿命)ともに伸ばすための、必要不可欠な第一歩だ。
地球の将来は、私たちの日々の判断次第なのである。
動物性食品ではなく有機作物を買う消費者は、すべての地球の将来のために一票を投じている。
それがワシントンを動かす行動であり、この行動の源は教育と目覚めである。
食料供給システムの危険な現状を広く知らしめることが、私の究極の目標である。
本書に収められた知識は、私がはるか昔に病床で誓った決意に欠くことができない。
ヴィーガンのライフスタイルは健康的なだけでなく、無害で知的である。
自分や周囲の人々に大きな愛を与えよ、そうすれば、この上ない処方箋を得ることだろう。
一九九七年一月 米国人道協会「良識ある食事キャンペーン」ディレクター
ハワード・ライマン
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もう肉も卵も牛乳もいらない! 完全菜食主義「ヴィーガニズム」のすすめ
マーカス,エリック(著者),酒井泰介(訳者)書籍
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