Kate Liu – Quarterfinal Round Recital 2022 Van Cliburn International Piano Competition
2022-06-09 22:01:54
Kate Liu さんが、今年のヴァン・クライバーン
国際ピアノコンペティションに参加していた。
辻井伸行さんが優勝したコンペティションだが、
今年は、388人が応募して、
そのうちの 30人が本選に進んだということだ。
最初の Preliminary Round から
準々決勝ラウンドに進んだのは 18人。
そのうちの 12人が準決勝ラウンドに進める。
Kate Liu さんは、Preliminary Round を
シューベルトと、Stephen Hough が作曲した課題曲と、
プロコフィエフで無事に突破した。
準々決勝は、40分間で好きな曲を演奏するというルールで、
Kate Liu さんが演奏したのは、
ベートーヴェンの晩年のピアノソナタ第31番 変ロ長調と、
フランクのプレリュード、コラールとフーガ ロ短調。
どちらも、Kate Liu さんらしい、独特の解釈で
深く深く音楽に入り込もうとする演奏で、
特に、ベートーヴェンは楽しめた。
冒頭から、51歳のベートーヴェンが、
部屋で一人で弾いている、というような印象で
その世界に引き込まれた。
第3楽章、嘆きの歌が、ほとんどとまりそうになりながらも
なんとか進んでゆき、そして、
希望を感じさせるフーガが始まるところは
素晴らしかった。
この構造が繰り返されるところは、
第9交響曲を思わせる。
一方、フランクの曲は、初めて聴いたが、
有名なヴァイオリンソナタの2年間に
発表された曲で、少し似た雰囲気を
感じさせるとても美しい曲だ。
フランクらしい荘重で悲劇的な、そして
最後の最後で希望へとつながる音楽が
よく表現されていたと思う。
あえて、ドイツとフランスの二人の作曲家の
同じような構造の曲を並べることで
それぞれの味わいを対照させつつも、
全体としては、現在の閉塞的な闇の世界の中で
なんとか希望の光を探る、ということを
表現しているようにも感じられた。
しかし、残念ながら、
次の準決勝ラウンドに進むことはできなかった。
もともと、独特な演奏スタイルが、あまり競技会向けでは無く
賛否が分かれやすいというのもあると思う。
他のコンテスタントが、技や感性を見せ合うのに対して、
彼女はひたすら自分の音楽、彼女のところに降りてくる「音楽」
を表現しようとする。
そこが良いのではあるが、
美人投票である競技会では、やはり
不利に働くだろう。
それに、今回は、演奏自体も、
少し音楽的なまとまりを欠いたかもしれない。
特に、フランクは、ベートーヴェンと同じく、瞑想的なプレリュードと、
祈りのこもったコラールは素晴らしかったが、
フーガは、録音のせいかもしれないし、曲のせいかもしれないが、
ピアノの響きがちょっと濁って、平板な感じになったところがあった。
残りのラウンドでの演奏が聴けなかったのはとても残念だが、
またいつか、シューマンなどが聴けることを願っている。
コアなファンは多いようなので、
YouTube で、どんなアイデアで、何を感じながら弾いているか、
などの語りとあわせて演奏してくれると嬉しいなぁ・・・
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