NHKの「逆転人生」で、3度目の正直で
プロ棋士になった今泉さんが取り上げられていた。
瀬川さんの陰に隠れていたが、
NHK杯戦で話題の藤井さんに勝ったことで、
一躍、脚光を浴びた。
正直、プロに入られたときには、
ほとんど注目していなかったのだが、
改めてドラマ仕立てで紹介されると、
壮絶な人生ではある。
1度目の編入に失敗した後、
介護施設で働き、そこに
自分の居場所があると実感できたことで、
自信がついて、メンタルが強化されて、
2度目につながった、というのは
わかりやすくて、印象的だったが、
そういうものなのだろう。
* * *
既に何度も書いていることだが、
棋士の世界は、ある意味、
世界全体の縮図のようなところがある。
これは、はこだて未来大の松原仁さんなども
よく言っていることだが、特に、
AI と社会の関係について、示唆に富んでいる。
勝負の世界は、勝ち負けがはっきりして、
序列がきっちりとついている。
レーティングも計算できるので、
スコアリングが完全に行われている社会だ。
その中で、AI を使いこなして強くなる、
藤井さんや、豊島さんなどのグループと、
そうではなさそうな、今泉さんのような
グループとでは、格差がどんどん拡大していると思う。
中流はどんどん下流に落ちてゆき、
一部だけが踏みとどまっている。
タイトルを取って、将棋を指すだけで
生きて行けるのは、、ほんとうに
ごく一部だけだ。
そして、それが、
「実力」によるものだから
どうしようもない、という
「実力制社会」
それでも、今泉さんは、
プロ棋士として将棋が指せるだけで
幸せそうではあったが・・・
* * *
将棋界ではなく、普通の社会でも、
日常の行動(購買行動、SNS 行動、支払い行動など)がデータとして
収集され、個人のスコアリングが行われる時代になっている。
社会の「実力制化」が進んでいる。
それは、「フェアである」という意味では
良いことなのだが、しかし、実力が、
本人の努力以外の、遺伝的な要因や環境で
かなり決まってしまい、
それが IT や AI でブースとされるとすると、
GAFA 本にもあるように、ごく一部の資本家と、
大量の農奴の時代がやってくるのは、
必然のように思われる。
問題は、トップクラスの才能がある人以外が
幸せになれるのか?ということだ。
これまでの日本は、そこそこの人でも、
そこそこに幸せな場所がたくさんあった。
これからもそうなのかもしれないが、
それが壊れてゆくのだったら、
多くの人にはかなり辛い。
それを、「実力だからしかたない」とするのか、
それとも、社会保証のような枠組みを新しくして
なんとか緩和してゆくのか。
どちらに進んでゆくのだろう?
国民総幸福最大化、という意味では、
行きすぎた実力制は、良く無いように
思われるのだが・・・
というようなことまで、
考えさせられた。
* * *
補足1:それにしても、「バリバラ」あたりからの
NHK の攻めの姿勢は、なかなかすごいものがある。
「ねほりん・ぱほりん」とか、この番組とか。
補足2:番組中に3人くらいの棋士のインタビューが
使われていたが、その中で、菅井さんの受け答えが、
なんというか、落ち着いた貫禄に満ちていて、
いかにも実力者、という感じがした。
真似してみたいが、できそうにない。
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