(さきほど、退位礼正殿の儀が終わり、
今は空白の時間なのだろうか?)
平成を懐かしみ、(日本には)戦争の無かった時代として
賛美する言葉が多く流れているし、
それは確かにものすごく素晴らしいことだったと思うのだが、
昭和と平成をちょうど同じくらいずつ生きた身からすると、
平成は、日本停滞の時代という印象も否めない。
昭和に作り上げたシステムを、
技術の進歩、時代の変化にあわせて
うまく更新、変換することができず、
そのままなんとか使い続けてきた 30年間だった
と言えるのではないだろうか?
もちろん、昭和の高度経済成長は、
明らかに出来過ぎで、そのバブルが
弾けた分は割り引かないといけないのだが、
しかし、それにしても・・・なのである。
NHK の「平成スクープドキュメント」の最終回は、
インターネットがテーマで、
Yahoo! Japan 創業者の井上雅博さんと、
P2P ファイル交換ソフト Winny の開発者の
金子勇さんを取り上げていた。
Yahoo! Japan は、様々なサービスを創出し、
米国 Yahoo! が消えた後も
日本のインターネットのバックボーンとなる
ポータルとして生き延びてきた。
Winny は、現在のブロックチェーンにもつながる
新しいインターネットの基盤にも成り得るシステムの芽
だったのではないか、ということだ。
NHK らしい着眼で、おもしろく見たが、
しかし、これは逆に、日本の IT 文化の歩みの遅さ、
限界を示していると言えるのかもしれない。
今後の日本を考えたときに、
IT から AI、あるいは、DI(Data Intelligence)へと
社会の情報技術基盤が高速に変化しつつある中で、
日本社会はさらに遅れを取り、国として、中国はもちろん、
アジア諸国にも抜かれてゆくのではないか、
というのが最も心配なことだ。
社会の神経系とも言えるIT 技術は、
産業・生産性の根幹であり、国としてどのようなインフラを
構築・整備するかは、非常に重要なことだが、
未だに、その戦略や方策は見えてこない。
データ流通・利活用のインフラ整備が遅れれば、
それは、つまり、道路や交通法規、商売のルールが
整備されない国と同じことであり、
国としての生産性は上がらず、
高齢化ともあいまって、安全、安心、健康などの
基本的な社会サービスが低下し、
多くの人にとって暮らしにくい社会になってゆくのは
自然な成り行きだ。
AI 人材育成に加えて、様々な分野に
AI を導入できる人材が次々と生まれる必要がある。
さらに、技術革新に乗り遅れなかったとしても、
GAFA 本などに煽情的に描かれているように、
AI 化により、資本の集中はさらに加速し、
このままでは、ごく少数のエリート層と、
多数の農奴が暮らす社会になる、という予想もある。
トップ人材をどう育成するかに加えて、
普通の人の暮らし、QoLをどう維持するのか、
も大変重要な課題だが、それに向けた方策は
さらに難しい。
アメリカのような資本任せは、
チャンスと社会のエネルギーも大きいが、
格差が大きく生じる。
中国のような、国家主導のやり方は、
効率は良いとしても、全体主義的過ぎる。
その間に、何か中道があるのだろうか?
* * *
日本が、情報技術の分野でここまで後れを取っている
原因がどこにあるのかは、正直よくわからない。
農耕社会の文化として、
保守性や年功序列が強いことや、
リスクを取ることを恐れる風土、
もまた、その理由の一つなのかもしれない。
井上さんも、金子さんも、奇しくも
若くして亡くなられている。
井上さんはレースでの事故ということだが、
金子さんはストレスからくる体調悪化
だったのかもしれない。
日本において、突き抜けた人材が生きるのは
ストレスの大きいものだった、ということを
示しているようにも思われる。
元号は変わるが、そうした、
日本的心性に深く根付いた価値観や、
それに基づく社会システム全体を
大きく変えることも含めて、
日本は変わることができるのか?
令和は、明治維新と同じくらい深刻に、
それが問われる時代になるように思われる。
ありがとう平成、そして、
おめでとう令和。
* * *
追記1:
"Winny" で検索すると、
池田信夫さんの記事が出てきた。
2013年に金子さんが亡くなられたときに、
書かれたもので、Winny の重要性を指摘している。
著作権意識、プライバシー・個人情報保護意識、
などが強いのもまた、日本の課題なのかもしれない。
とはいえ、資本の圧倒的な力の前に、そうしたものが
崩れてゆくのもまた、嫌なのではあるが・・・
* * *
追記2:
デジタル化への対応による明暗が分かれた例として、
ちょうど面白い記事があった。
ゼンリンと昭文社の地図ビジネスでの浮沈
を扱ったものだが、デジタル化投資の
重要性をよく示しているだろう。
もちろん、投資したからうまくゆくものではなく、
リスクがつきまとう。そのリスクを取るかどうか、
取ろうとする人がどれだけいるか、が
組織や社会の勝敗を分けてしまうのだ。
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