アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン主演。
第一次世界大戦から第二次世界大戦後にかけての
英国の執事の物語。
かたくなに、品格と秩序を守り、
自分の「ビジネス」だけを考えて生きる。
その人生の、誇りと悔恨。
なんとも切ない、良い映画だった。
スティーブンスの誇りはどこにあるのか?
もちろん、主人のいいつけをきいて、
屋敷を完璧に維持することにある。
日々の、多岐にわたる仕事を、一つ一つ完璧にこなすことにある。
その点において、彼は理想的な執事だ。
それでは、彼の悔恨はどこにあるのか?
仕事とだけ向き合い、日常の、目の前にある仕事に「逃避」し、
「自分の人生」と向き合うことをしなかったこと。
老いてゆく父のプライドを傷つけ、その死を見とれず、
自分を愛してくれた人に報うことができず、
自分もその中にある世界の情勢に目をつぶった結果として、
主人にも(ある意味)裏切られる。
執事の家に生まれた人間が、
執事として職務に忠実に生きて、何が悪いのか?
桜の木は、何があっても桜の木として生きているのに。
ここに人間として生きることの困難さ、哀しみがある。
映画は、ある時代の一人の執事に着目することで、
そうした普遍的な哀しみを
重層的に描き出すことに成功した。
その視線は、たとえば、ナチスにおいてユダヤ人を虐殺した人々もまた、
(スティーブンスのように)職務に忠実な人たちだった、
というところにまで達しているように思う。
そして、そこに抒情的なイメージが加わる。
限りなく美しく切ない、桟橋のシーン・・・
あそこに行って、あのベンチに座ってみたい。
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