Bruckner: 7. Sinfonie ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Christoph Eschenbach
2022-09-18 00:10:23
チェリビダッケ+MPO の演奏のような精神性、
つまり、宇宙的、彼岸的な感じは少ないのだが、
堂々と落ち着いた、しかし、
とても繊細で、分解能が高い演奏で、
ブルックナーが編み上げた細かい音の網の目でできた
対位法の大伽藍が細部まで透けて見えるような、
素晴らしい音楽だ。
このオケは、放送交響楽団だけあって、
YouTube 配信も熱心で、たくさん動画があるが、
録音も含めてかなり良い演奏が多い。
2014年から2019年の間に首席指揮者を務めた
コロンビア出身のアンドレス・オロスコ=エストラーダ
の薫陶の成果なのだろうか?
追記:
ちょっと気が向いたので、
楽曲の構造とそれぞれの感想を書いてみた。
上の動画の時間へのリンクもつけているが、
残念ながら、別のタブが
開いてしまうようだ。
楽曲の構造は、音楽の友社
「作曲家別名曲解説ライブラリー・ブルックナー」
の中の、根岸一美さんによる
交響曲第7番の解説を
参考にさせていただいた。
第1楽章
第1主題 息の長い美しいメロディー
アルプスの山々をイメージさせる
まだ朝日が出る前の薄いピンク色に染まる情景から
一気に陽が昇りくっきりとした雄大な姿を輝かせる感じへと発展して最初のピークをつくるが
そのあとまた静謐な空気へと戻る
第2主題 緑の裾野に広がるのどかな村々の風景を
ゆっくりと俯瞰するような優しいメロディー。鳥も鳴いている
視線がゆっくりと上昇してゆき山々を背景とした青空が見える
やがて人々の生活が始まる予兆が奏でられた後、
反行形から第二のピークへと至る
第3主題 第2主題で描かれた村で
暮らしている人々や生き物の動きをイメージさせる、
ちょっとおどけたメロディー。
怒鳴り声や威厳のあるファンファーレも響くが、
また静かな暮らしへと戻ってゆき、
ホルンによって提示部がしめくくられる
主題の展開部
まず、第1主題が軽く反行形で現れ、
それに第3主題的なフルートが絡む
さらに、短調になった第2主題が反行形で現れる
静かな夕べの時間から、夜へと向かう空気が感じられる
第3主題が少しもの悲しく、重苦しい感じで現れて、
夜の空気がさらに鮮明になる
主題の再現部
第1主題が反行形で荘厳な、恐ろしいような姿で演奏された後
短調に移調された第1主題が装飾を伴って提示される
夜の森、あるいは、彼岸からの音を感じさせるひそやかなパートが入った後
第2主題がやはり簡素化されて静かに再現され、
反行形も交えながら進行してゆき
第1ヴァイオリンの旋回するような旋律とともに
高みへと昇ってゆき、この楽章全体のピークを形作る
第3主題が再現されて、もうひとつのピークを作ったあと
時間が引き延ばされてスローモーションになってゆく
ティンパニ―の低音が支える中、
第一主題が、遠い思い出のように
ゆっくりと回想されて再現部を終結させてコーダへと続いてゆく
この部分は再現部の終結であると同時にコーダへの序奏でもある
コーダ
第1主題とその反行形が同時に、荘厳に回帰し、
華々しく、輝かしく楽章をしめくくる
31小節のコーダが演奏される
第2楽章
A-B-A'-B'-A'' の5部形式
第1主題 第1楽章の第1主題の変奏のようにも感じられる開始から、
祈りの3和音がゆっくりと深く深く響く。
葬送の音楽が静かに続くが、やがて、美しい天国の風景へと転じて
第1のピークが形作られる
第2主題 あの世からの音楽としか聴こえない第2主題が
優雅に、ダンスのステップを踏むように始まる。
華やかな昔を想うような、セピア色の音楽で、聴くたびに涙が出てしまう。
死者の回想のように、楽しみと、悔恨と、様々な感情が描かれてゆく
第1主題が装飾を伴い、荘重さを増して再現して展開してゆくが、
途中から、大きな盛り上がりをみせて、とても美しいプラトーを形成する
3和音が様々に変奏されて繰り返し繰り返し捧げられ、華々しく終わる。
彼岸からの第2主題が変奏を伴って美しく回帰する。
ある種の諦念をもって締めくくられたあと、
第1主題がもう一度、さらに大きく回帰する。
旋回するようなヴァイオリンが3和音を奏でる管楽器に絡みつき
音楽は旋回しながら上へ上へと昇ってゆき、天の高原、プラトーが再び現れる
ティンパニ、シンバル、トライアングルが打ち鳴らされ、
この曲全体の白眉ともいえるピークが形作られる
ピークにつづく、これも非常に美しいコラールは部分は、
作曲中に亡くなったワーグナーにささげられた葬送の音楽と言われている
この世とあの世とをつなぎ、あの世へと旅立つ魂を送る細い道が現れ、
ワグナーチューバの音によって静かに満たされる
第3楽章
スケルツォ-トリオ-スケルツォの3部形式
スケルツォのテーマも最初に大きな飛躍を伴う音型で
裁きの日を告げるように、いきなり大きな盛り上がりを形作る
その後は穏やかな進行になり、反行形も現れて、
一旦は陽気な形へと変わってゆくのだが、
再び冒頭の形が再現され、2つ目の大きなピークが形作られる
上に跳ねる管楽器の音型と、下降する弦楽器の音型が組み合わされて、
ブルックナーらしい荘厳さが生み出される
一転して、トリオはコラール風の静かな音楽で始まる。
小さな盛り上がりはあるものの、
挟み込まれるフレーズも含めて、終始、とても美しく、優しい
第1楽章の第3主題を連想させるフルートの音型が重なる
身近い移行フレーズを通って、スケルツォへと回帰する
スケルツォが再現される。
特に大きな変奏はなく、
かなり忠実な再現になっている
第4楽章
第1主題 遠くから何かがやってくるような疾走感のある
第1主題が短く提示され、
第2主題 すぐにコラール風の第2主題へと受け継がれてゆく。
穏やかでのどかな感じの音楽が続くのだが、
やがてなにやら怪しい雰囲気も生じ始めて・・・
第3主題 第1主題の変奏のような
激烈な第3主題を奏でる管楽器の音が響き渡るが、
すぐにまた第1主題が回帰して、展開部に入り、
穏やかな雰囲気へと変わってゆく。
この後は、反行形を織り交ぜためまぐるしい展開が少し続く
再現部
まず第3主題が先に再現されて、拡大され、
大きなピークを作った後、全休止を挟んで、
第2主題が静かに再現される
さらに、ちょっと無理っぽい感じのつなぎを経て
第1主題も現れる。このあたりは
少し混乱しているような気もするのだが、
とにかく、最後に向けて、
疾走を続けながら盛り上がってゆく
コーダ
ティンパニ―が打ち鳴らされ、
全曲を締めくくるコーダが始まる
第1楽章の第1主題も現れて、
華やかに全曲が締めくくられる
改めてしっかり聴きなおすと、
ちょっとアンサンブルがバラけているところもあるし、
特に、一番最後は、演奏が乱れて、
着地にちょっと失敗している感じもするが、
全体としてはとても良い演奏だと思う。
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