三浦八段-GPS戦の対局が
昨日行われた。
ここまでコンピュータからみて
2勝1敗1分け。
人間が引き分けるか、負けるかが
三浦八段に託された。
三浦八段は現役将棋プロ160名強の
トップに立つA級棋士10名の一人で、
A級在位も12期(12年)。
昨年の成績は7勝2敗で10名のうちの2位。
名実ともにトッププロの一人として
認められている存在だ。
対戦相手のGPS将棋は、
東大の教員と学生有志による
ゲームプログラミングセミナーで開発している
将棋プログラム。
2009年、2012年の
世界コンピュータ将棋選手権で優勝しており、
こちらも、名実ともに最強ソフトの一つとして
認められている存在だ。
しかも、今回は、東京大学教養学部の全面協力により
660台強の iMac などをネットワークでつないだ
クラスタをハードウェアとして利用していて、
分業しながら1秒間に2億手以上を読むという。
しかも、GPS将棋の特徴の一つは、
全ての手を同じように読むのではなく、
有望な手をある程度絞り込んでより深く読む、
という人間に近い思考方式になっていること。
人間とコンピュータの戦いにおける
2度目の頂上対決にふさわしい対戦カードだった。
(1度目は、2007年に渡辺竜王とBonanzaが対戦。
渡辺竜王が勝利している)
将棋のほうは、先手の三浦八段が得意とする
矢倉の脇システムに進んだ。
お互い駒組みを終えて様子をうかがっていたとき、
GPS将棋が機敏に仕掛ける。
プロの間ではほとんど指されていない仕掛けだったが、
それがとりあえず通って、互角のまま局面が進む。
三浦八段は自分が良くなると思っていたようだが、
思ったほど良くはならなかったようだ。
その後、三浦八段の指し手が、
入玉を意識しすぎてちょっとちぐはぐになった感じもあり、
GPSのうまい攻めにあって、
あっさりと寄せられてしまった。
102手までで後手のGPS将棋の完勝。
人間対コンピュータの団体戦も
コンピュータの3勝1敗1分けと、
コンピュータの勝ちとなり、
結果は多くのメディアで報道された。
矢倉は、もともと、攻めるほうが攻めきれるか、
受けるほうは、相手の攻めを呼び込んでから
逆襲できるか、というタイプの将棋の作りなので、
結果が一方的になったのは仕方のない面もあるが、
それにしても、GPSの隙のなさや鮮やかな指し回しが
光った一局だった。
途中の読み筋もすべて公開されているので、
GPSが何をどう考えて指していたかがわかる。
素晴らしい・・・
局後の記者会見でも、
開発者の代表として話をした
金子さんの落ち着いた科学者的な
話し方が印象的だった。
* * *
昨日の1局を見る限りでは、
それなりのハードウェアを使われると、
正面からの戦いでコンピュータに勝てる人間は
もういないような気がしてきた。
プロ棋士の棋譜を使って、
盤面評価関数や、有望な手の選択を
学習しているという話だったので、
プロを超えることは難しいように思っていたのだが、
圧倒的な読みや詰み発見の力もあるのだから、
鬼に金棒ということだったようだ。
来年の電王戦がどうなるかは協議中だそうだが、
時間が経てばたつほど、コンピュータは速くなって
ソフトは強くなるのだから、
もう、タイトルホルダーを全員出して、
一気に決着をつけるほうがよいと思う。
少なくとも、渡辺竜王のブログを見ると、
竜王は出てくる覚悟がありそうな感じだ。
渡辺竜王と最強ソフトの2日制7番勝負
が理想だと思うが、興業的には厳しいだろうか・・・
それで「人間対コンピュータ」に
決着がついてしまえば、その後は、
コンピュータ側にレギュレーションをかける、
というようなことになるのかもしれない。
たとえば、同じエネルギーで戦うなど?
そうすれば、今度は、
プログラマ対棋士という
人間同士の戦いになる。
* * *
人間同士の戦いという意味での
将棋観戦の魅力は変わらない、と思ったが、
考えてみると、事前研究にソフトウェアを使えるので、
人間同志の将棋もかなり変わってきてしまう可能性はある。
研究派の棋士が有利になりそうだ。
なんだかなぁ・・・
* * *
全5局を振り返る会見やPVもあったが、
その中では、船江五段の次のような言葉が印象に残った。
「ソフトは自分を映す鏡だ。
自分の良いところも、悪いところもよくわかる」
若いというのは素晴らしいなぁ、
などと思いながら聞いていた。
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