8,9番のカップリングの CD を見つけたので聴いてみた。
1987-88年のリューベック大聖堂でのライブ。
8番は曲自体の聴きこみが足らなくて、
楽曲の全体構造を把握できていないので、
9番についてだけ。
チェリビダッケのブルックナーが重厚で荘厳とすれば、
ここでのヴァントの演奏は、もっとずっと柔らかい印象。
なぜだか、荘厳というよりは、懐かしい音楽。
ブルックナーが埋め込んだメロディーを
ひとつひとつ丁寧に、納得ゆく形で提示してくれる。
フレーズとフレーズのつなぎ方やクライマックスへの
持って行き方がとても丁寧で、乗ってゆきやすい。
音楽の平仄がすごく自然。自分の感覚とあっている。
チェリビダッケの演奏が「乗り」を拒絶、
超越したところにあるとすれば、
この演奏はその点においては普通に近く、親しみやすい。
もちろん、乗りの良さだけに堕してはいない。
そして、勝手な思い込みだが、奏者のひとりひとりが、
ブルックナーの音楽を本当に愛しく感じている様子が
ひしひしと伝わってくるのだ。
3楽章の最後のフレーズの美しく儚いこと・・・
何度聴いても背筋がぞくぞくして、涙が出てくる。
南部ドイツ(豪放、おおざっぱ)と北部ドイツ(緻密)の
メンタリティの違いもあるのかも・・・
ヴァント自身は、この録音があまり気に入らなかったようで、
後に同じ曲を別の場所で再録音しているらしいのだが、
個人的には結構気に入った。
たしかに、残響はものすごく、
特に低域がもごもごとこもってしまっているのは問題だ。
しかし、残響に打ち勝つという意味もあるのだろうが、
金管は強めかつコンパクトに吹いていて、迫力も十分。
にもかかわらず、残響のせいか響きが柔らかく、本当に浸れる・・・
全休止での余韻も大変に趣がある。
他の録音もぜひ聴いてみたい。
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