またまた今ごろですけど、昨年読んだり聴いたりして、よかった本を挙げてみます。
さいごまで読めた本が少ないのですが、少しでも読んでいるといい本に、物語に、作家に、出会えるものですね。
1.「パチンコ」ミン・ジン・リー
日本で生きたコリアン一家の物語。故郷を離れ、戦時を生きた女性の一生ものとして引き込まれるものがあった。
2.「みんなが手話で話した島」ノーラ・エレン・グロース
ノンフィクション。耳が聞こえない人が多ければ、いわゆる“障害者”はいなくなる、という世界が現実にあったことが衝撃的。
3.「騎士団長殺し」村上春樹(朗読:高橋一生)
妻に離婚を言い渡された男が、実態を持った“イデア”や“メタファー”と出会う、ふしぎな物語。謎の絵画「騎士団長殺し」は、ありありと目に浮かぶ描写で印象が強い。
4.「ある男」平野啓一郎(朗読:小島史裕)
事故で亡くなった夫は別人になりすましていた、という話。これは小説だけど、出自にわだかまりを持つ人の多さに思い当たり愕然とした。
5.「まとまらない言葉を生きる」荒井裕樹
少数派のするどい言葉が胸を打つ。折りにふれ読み返したい一冊。
6.「ノー・カントリー・フォー・オールド・メン」コーマック・マッカーシー
危険な大金を見つけて運命が狂ってしまった男と、それを追う殺人鬼という構図。感情をほとんど書かないで壮絶な場面を鮮やかに描く。
7.「黄色い家」川上未映子(朗読:大内櫻子)
寄る辺ない女性たちが犯罪に手を染めていく。利用されているようでいて利用する立場になっていた、という皮肉が痛切。
8.「みかんとひよどり」近藤史恵
ジビエ料理人と猟師の男たちの物語。野生動物を殺して食べるという意味について深く考えさせられた。
9.「ここはとても速い川」井戸川射子
児童養護施設で暮らす少年の視点で語られる小説。頼りないけど強い意志を持った、子どもの視点が徹底しているところがすごい。
10.「レンブラントの帽子」バーナード・マラマッド
美術学校の教師ふたりの感情の行き違いを描く。可笑しくも哀しい、けれどあたたかい物語だった。
***
以上10冊あげてみました。うち5冊は、読書会の課題本になったものですね。やっぱり最後まで読むので上位に入りました。
画像はこんなかんじです。
あ、あと映画「ドライブ・マイ・カー」の関連本として、チェーホフの「ワーニャ伯父さん・三姉妹」を。ワーニャ伯父さんだけ読みました。虚しい人生を送ってきたと気づいてしまった中年の悲哀を描いていると知って、目頭が熱くなりましたね。