こんど引っ越しをするときには
海辺の小さな家を選んでみよう
妻と二人だけだから荷物は最小限にしよう
けれども 兎とリラの木は 連れて行こう
早朝 最初に顔をあわせるのは兎のラビだ
ぼくがおきると そばにきてエサをねだる
性格のおとなしい白と灰色の毛並みの兎だ
話しかけながら 軽くおでこをなでてやる
兎は 8年前に 娘のるみなが買ってきた
娘たちが巣立った後も 部屋で飼っている
共通の話題の主人公だから 家族の中心だ
兎のラビは 妻には とくになついている
兎とすごす部屋の前庭に リラの木がある
春になると 可憐な赤紫の花が咲きそろう
調布から神戸に さらに木更津から幕張へ
引っ越しのたびにも連れてきた唯一の木だ
リラの木は30年ほど前に植木市で買った
調布の家に 苗木を植えた思い出の木だ
リラの木を見ると 青春の日々を思いだす
移り住んだ場所の 周囲の情景も思いだす
こんど引っ越しをするときにも
兎とリラの木は 連れて行こう
兎のラビとも 毎朝 顔をあわせるだろう
リラの木も 春には 花を咲かせるだろう