おどるなつこ 「あしおとがきこえる?」

タップダンサー・振付家おどるなつこの日常から浮かびあがることばを束縛せず書きとめています。2005年開設。

未来と給料

2020-03-25 | あしもとからの思索
農家さんに野菜を買いに行ったら、午前にも関わらず品薄。なぜかと聞いたら「給料日だからね!」という。給料日には農家さんの屋外販売所も売上が違うそうだ。

そんな話から我が家の昼食では、世の中は25日が給料日なんだね?と給料の話になった。そう、うちには給料の概念がない。ので、よくわからないのだが、給料を払っている経営側でも、ギリギリなところもあるのではないだろうか。私は30年近く前に8ヶ月だけお給料をいただいたことがあるが、お給料って、なんの収益もあげられない若者を育てるだけの出費だったことと思い...頭を下げる。

コピペなんて言葉のない時代の八丁堀の印刷屋では、原稿に赤字があれば「なっちゃん、これ紙焼きやさんに」と声がかかり、てくてく歩いてメモを届け、指定の時間に再びてくてく"活字の紙焼き"を貰いに行く。机に戻ったら、必要な一文字を、カッターで紙の表面だけ薄く切り取り、他の文字と綺麗に並ぶようにノリで原稿に貼るのだ。と、この話、ハタチのムスメに大ウケされた。アナログすぎて信じられないと!そうだよね。28年前の話だよ。

今もなおアナログな、舞踊・音楽・演劇など実演者業界は、そもそもひたすら初期投資して、まやかしのチケットバックに苦い笑顔を向けながら、ひとつづつ仕事の実績を何年も重ねてやっと、気持ちよく丁寧に働きあえるギャラを臆せず提示できるようになっていく。それでも、ギャラの支払いは出演完了後なので、信頼関係だけを頼りにそれまでの経費は肩代わりするのが通常だ。だから二足の草鞋をはいて他の堅実な収入で生計を保ちながら兼業されている方も多いし、兼業せずとも、私なら、出演・振付・ワークショップ、というように、仕事の窓口をいくつかもっている。

この生業には何の保証もなかったけれど、その綱渡りを応援し見守られ、なんとか落ちずに済んできた。けれど今回のコロナ禍、本業一本の輩には手も足も出ない。この状況でも可能な仕事を仲間に振って、なんとか互いに死なないよう、助け合うよりない。3月まるまる、4月も既存の仕事はできないだろう。つまり最低でも2ヶ月給料のない状況になるアーティストがたくさんいる。

バブル期、パソコンの普及とともに印刷業界の倒産が相次ぎ、プリントは家庭のものになった。
新型コロナの影響で、アナログな実演家たちはみな廃業せざるを得ないのだろうか。それともこれは世界平和の始まりか。28年後、この状況はどう語られるのだろう?



仕事を干されたような長い春休み。けれど、これまでも綱渡りだったので、あまり焦りもない。
ちょうど、1年間チームで運営費を肩代わりしてきた事業の助成金が入りそうだ。これも粘り強く説明し続けてくれた仲間のおかげ。大丈夫!メッセンジャーのみんなとはしばらく会えないとしても、流れはとめないでいられる。
オリ・パラが延期ということは、平等で平和な楽しい社会へむけてのチャレンジに、あと1年の時間的猶予をもらえたとも考えられる。

桜が満開だ。花でもみよう。




最新の画像もっと見る